星森ゆきも（ほしもり ゆきも）
ういらぶ。ー初々しい恋のおはなしー
第05巻評価：★★☆（5点）
総合評価：★★☆（5点）
こじらせイケメン凛と残念系美少女の優羽は、相変わらずラブラブ・・・。
だけど、今度は優羽に恋敵が登場！？
美少女だけど自信レスな優羽とは全く正反対の かわいくて積極的な実花が、凛にぐいぐい迫ってきて・・・。
簡潔完結感想文
- 嫉妬編開始。まさか1巻以上に亘って嫉妬でこじれた関係の描写が続くとは…。
- 球技大会。その場面のためには不自然な権力も、不適当な学校侵入も厭わない。
- 過ち が起きたら お灸をすえるが、起こるまで沈黙する探偵型おかん・蛍太。
ゴミだのクズだの罵倒する対象よりも ずっと最下層にいるヒーロー、の 5巻。
読み返せば読み返すほど、ヒーロー・凛（りん）のクズっぷりが目につきます。
この世で一番 大好きな人を罵倒すること10年。
その想いが奇跡的に叶い、口では大事にする守りたいと思っている相手を
今回も奈落の底に落とすのがヒーローの凛という男である。
残念ながら、彼を描けば描くほど凛の人間性の小ささ や幼稚性が露呈し、
作品的にも袋小路に迷い込んでいる気がする。
凛の心と言動が裏腹な二面性を残しつつ、恋愛を継続させていくのは至難の業。
こんなに長編に向かないヒーローも珍しい。
そんな ありのままの彼を好きだというのがヒロインの優羽（ゆう）。
彼らは出会った時の小学2年生のままのメンタリティで恋愛をする高校2年生たち。
ある意味では最初から完成している唯一無二の恋愛が描けているが、
まともな登場人物がバカを見る世界が構築されていて、読者も ついていけない。
作品自体の限界が見え隠れする中で、人気があるから連載の延長が続く。
早くも長編化作品の負のスパイラルに陥っているように見える。
連載の継続で、ページの使い方だけは贅沢になっていく。
ヒロインの嫉妬を描くターンが、こんなに長くなるとは思わなかったです…。
本書の中でも一、二を争う黒い感情が渦巻く『5巻』。
だが、それもこれも凛の自作自演というのが情けないところ。
最初から、優羽を窮地に陥れてから助けて株を上げていたヒーロー様ですが、
今回も彼女を試すために、自分を好いてくれている新キャラ・実花（みか）の作戦に乗じて、
優羽を苦しめることを思いつく。
自分が悦楽に浸れるのなら、恋人を悲しい気持ちにしても問題はないらしい。
こんな凛の姿を無邪気と思うか、子供っぽいと思うかは読者の受け取り方次第。
この2つの言葉は相手の好き嫌いで変わる言葉の裏と表の関係にある。
ここで大事なのは、凛にあるのが優羽を困らせて喜ぶというドＳの内面性ではなく、
優羽がヤキモチを焼く状況を作って、愛されている俺を確かめようとする精神である。
何と言う自己愛。
そして凛は こういうことを知っても優羽が「笑って俺を受け入れてくれる」と想定していたことも気持ち悪い。
子供のイタズラを母が苦笑いしながらも許してくれるように、
優羽に自分への愛があるから許されると思っているのだろう。
本当に小学生メンタルの男ですね。
こういう人間が性欲はしっかり持っていて、理性が吹き飛びそう とか言っているんだから怖い。
新キャラ・実花ちゃんは本書の失恋担当として大いに活躍してくれています。
本書の中でしっかりと失恋しているのは彼女だけですね。
この優しい世界で一番傷ついているのは彼女かもしれません。
目標に向かって一心不乱に努力する姿は少女漫画のヒロインのようであった。
できれば実花をイイ男ぶった格好つけた言葉でフッた凛に対して、
罵詈雑言を投げつけて欲しかったぐらいだ…。
それでは各話の感想を。
24話。
優羽のヤキモチで、愛されいる実感に浸っている凛。
その状況に喜びが溢れ出し
「もっと もっと ヤキモチやかせて
俺への愛を思いっきり確かめるに決まってんだろ？」と悪巧みを始める。
彼はダークヒーローなのでしょうか。
実花は凛と同じ高校に入学するために深夜2時まで勉強している。
今は小中高一貫校なのに外部受験をするのは 恋愛を成就するため。
実花って少女漫画の主人公になれますよね。
憧れの先輩を追って先輩の高校に入学、ってのは行動力のある主人公が第1話で取る行動です。
ただし、波乱を巻き起こすための展開であって、
実花の恋心が本物とは思えないのが残念な部分である。
その兄・和真も深夜2時まで起きてるのは、彼も彼で勉強していたからなのだろうか。
勉強も遊びもハイレベルを維持するための努力家なんでしょうね。
そういうとこ描かれてないけど。
そんな実花の入試試験前日、試験会場となる優羽のクラスで机に受験生の番号と名前が貼られる。
そこで優羽は実花の名前を見てしまい激しく動揺する。
これ、個人情報 どうなってんですかね。
25話。優羽たちが2年生に進級。
幼なじみ4人組は凛と暦（こよみ）、優羽と蛍太（けいた）に別れてしまう。
このクラス分けで、優羽の世界が広がると思っていた時期が私にもありました…。
どうして作者は、新しいクラスで優羽に同性の友達を作らなかったのでしょうか。
それは きっと内輪の物語に異物が入ることになるからですよね。
本書では「脇役」を置きたくないのだろう。
これまでの6人+その恋人、みーんな友達、みーんな主役として扱いたいという姿勢か。
ヤキモチに関して、優羽は「みんなをイヤな気持ちに させるだけ だから――…」と自分の胸にしまう。
優羽に とって幼なじみって何なのでしょう。
暦ですら頼ろうとしない優羽に他者は必要なのだろうか。
そんな ぼっちの優羽を、凛は励ますとともに苦しめる。
また自作自演が始まりました。
凛カップルに割って入ろうとする実花は、
球技大会の実行委員に凛を推薦し、一緒に活動することを奪略愛の第一歩とする。
一体 何の権力が彼女に あるのだろうか…。
本書では こういう話の不自然さが悪目立ちする。
独善的というか、自分たちが良ければよいという、実花の思想と同じような空気を作品から感じる。
26話。
凛と実花の急接近を見て、感情が爆発してしまい、怒りの表情すら見せる優羽。
それに対して凛は作戦が成功したのに、持ちつ持たれつの関係だった実花に八つ当たり。
本当に人としてサイテーの人間ですね。
凛もこうやって試すような恋愛をすることが不毛だと分かったでしょう。
そして作品も今更2人の関係を試すようなことをしても、
作品もこの愛も価値が上がる訳ではないと思い知ったでしょう。
必然性のない作られた嫉妬が起こした問題は まだまだ続く。
27話。
優羽の不自然な態度を見かねて、蛍太が相談に乗る。
蛍太は凛のフォローにも回っています。
嫉妬させたい、愛されている実感が欲しいという目的のために、
当の本人・優羽と、そして自分を慕ってくれている実花を傷つけたことを痛感する凛。
それを凛に自覚させる蛍太。
2人の間に確かな友情を感じられました。
まぁ蛍太には未然に事故を防いで欲しかったけど。
そうして実花に謝る凛。
確かに、凛に拒否されても何でもない風を装って話しかける実花の心は強い。
実花によって、失恋の悲しみや痛みが初めて描かれます。
この場面、凛の勘違いっぷりに腹が立つ。
「…俺の全部 優羽だけのモンだから」
「…ダメなんだ 俺は お前に なにもしてやれない――…」
なんでモテ男風の お断り台詞を連発してるんだ？？
私利私欲のために乙女心を利用したことを もっともっとちゃんと謝れよ。
土下座しろ、DO・GE・ZA！
本書初の失恋を経験した実花もフォローするのが蛍太。
いよいよ こちらの恋愛が始まるんですね、と思っていた時期が私にもありました。
直後に優羽と対面した実花が、
「凛さん なんてもーイイんです」
「凛さん めんどくさい人だけどイケメンだから～」
と強がり半分で言った言葉に対しての、優羽の反論が少し頓珍漢なところが気になる。
「…凛くんのこと…そんな言い方しないで……」はともかく、
「私 負けないから…っ 凛くんへの気持ちだけは 負けない――…っ」
これは、なんだかピントがずれている答えですね。
相手はもう好きな人を乗り換えて、白旗上げている状況だというのに。
これは前回までの状況で優羽が言いたかったことなのか…？
28話。球技大会当日。
優羽が試合中、隣で試合をする凛を見ていたら怪我をした。
それを見逃さない凛。
彼もまた優羽をしっかり見ているってシーンなんだろう。
でも本書において散見されるが、凛が怪我に気が付くコマが全く描かれていない。
大体、彼の方も試合中で優羽を見る余裕がないはずだ。
それなのに脳内補完しろと言わんばかりに、既成事実だけで話を先に進める。
諸々において大事な「気づき」が抜けているのが残念。
そして不自然さMAXなのが、なぜか他校の制服姿の和真が球技大会に入り込めるとこ。
相変わらず教師や親という大人の存在が全くいない世界ですね。
こういう環境だから凛みたいなガキが生まれてしまうのだ。
その意味では、和真は同級生だけど、蛍太たちよりは距離が少し遠いので凛を直接的に注意できる数少ない人物。
だが優羽を庇う和真を置いて一直線に凛のもとに走る優羽。
ここも正論は差し置いて、2人の独特の関係性が優先される。
やはり誰も入り込めないのだ。
そして その世界には読者も入り込めず、共感性を失わせる…。
今回は、自分の手から優羽が離れることに和真は胸を痛め、そんな和真の姿を見て暦は沈痛な表情を浮かべる。
ここに和真がいることでドラマは生まれた。
ここにいるのが とっても不自然だけど。
優羽がモノローグで言っている、
「……自分ですら 気付かなかった痛みを気付いてくれる」というのは何を意味するんだろうか。
バスケの傷は優羽も痛みを覚えてたし、嫉妬の痛みなら凛が傷つけたようなもんだし。
他に凛が先回りしていることも思い当たらない。
謎です。
突き指を並んで水で冷やす中、優羽は「ごめんなさい」と話を切り出す。
優羽は ここ最近の自分の気持ちを伝えようとするが、凛はそれを別れ話と早合点。
それを先延ばしにするために、もうすぐ来る優羽の誕生日での1日での巻き返しを約束する。
それを聞いた優羽は言葉を呑みこみ、
「凛くんと過ごす お誕生日に甘い期待をしてしまいます――…!!」ですって…。
バカップルここに極まれり。
言えよ！ 言わなきゃ伝わらないって何度 経験してんだよ。
この経験での総括を言う場面だったのに、
優羽が言わないから不毛な嫉妬編がまだまだ続いちゃうじゃないか…。
はぁ、内容がどんどん希釈されていく…。
「春恋～はるらぶ。～」…
隣のクラスの男の子に恋している女の子の話。
雑誌モデルのインタビューを基にした胸キュンシーンを盛り込んだ作品。
可もなく不可もない、王道のラブストーリーです。
この話でも男が舌出してるよ。
これ絶対、男は自分の容姿に自信がありますよね。
