くまがい 杏子(くまがい きょうこ)
放課後オレンジ(ほうかごおれんじ)
第04巻評価:★★(4点)
総合評価:★★(4点)
やっぱり翼(よく)先輩が好き…。二度目の告白で、OKをもらった夏美(なつみ)。ところが滉士(こうし)先輩に嫌々キスさせられたことを翼に知られ、「全中で優勝したら、お前を抱く」と宣言されちゃった!なのに、大会直前の試合で翼が膝を故障。そのサポートを買って出たのがなんと滉士で!?
簡潔完結感想文
- 2度目の直接対決。高嶺の花に手が届くように高く跳ぶ2人の男。高嶺の花??
- 風邪回。彼氏と間男とモテモテの私と。夢は願望の証。淫らな夢は私の願い。
- 遭難回。性欲の化け物との一夜。2人の欲望が高まったところで最終巻に続く。
性欲はパワー。MAXになって最終決戦に臨む 4巻。
翼(よく)・滉士(こうし)ライバルである2人の男が、
1年以上の切磋琢磨を経て、いよいよ直接対決する様子までを描く『4巻』。
男性2人の因縁は良く描けている。
そこだけを見れば考えられた物語だし、対決結果が楽しみである。
ただし本書には作品価値を猛烈に下げる要素がある。
それがヒロイン・夏美(なつみ)の存在。
泣くことだけが存在価値の中学1年生の新入部員に
この男たちが惚れたから物語の質が ガクンと下がった。
彼女さえ いなければ、もっともっと良質な陸上部の選手たちを描いた作品となっただろう。
彼女のせいで陸上競技が、女をものにする手段と化してしまった。
彼氏の翼は大会での優勝と引き換えに、彼女の夏美に身体を捧げることを約束させる。
三角関係の滉士は、優勝すれば翼から夏美を奪えると思い込んでいる。
陸上は自己鍛錬とか修練の場ではありません。
女をモノにするための手段です。
そして『4巻』で夏美はアスリートでなくなります(作品上は)。
男たちの戦いを見守る無力な女性として位置づけられる。
性行為の合意が得られ、性欲が極限まで高まる様子を描いた『4巻』です…。
そして恒例の夏美の落涙確率チェック。
大変残念なことに『4巻』では3/6しか泣きません。
なので合計で19/23話となって確率は83%。
私の興味は高確率の維持だけにむかっている。
次が感動の最終巻なので、これ以上 確率を落とさないように祈るばかり。
全国大会の全中出場をかけた最後の大会が目前に迫る。
翼先輩と約束を果たそうと無理をして練習を重ねる夏美。
諦めない姿勢は大事だが、大会1週間前で100メートル走において
1秒以上も記録から遅いのに、練習量でそれをカバーしようとしている。
全てにおいて長期的視点が欠けていることが、彼女の愚かさの表れだと思う。
しかし翼の助言によって大会前日までにタイムが急激に伸びる。
うーん、10代のアスリートには なくはない話だろうが、
作品も長期的視点が欠けているように思う。
名コーチ・荒川(あらかわ)がいなくても物語が成り立つ。
そして急激に伸び始めているものが もう一つ。
それが翼の身長。
ただし その副作用として膝に痛みを覚えている。
顧問もコーチもいない部活なので、体調は自己管理、
大会への出場も個人の意思だけで決められる。
翼の選んだ道は出場。
なぜなら夏美を巡るライバルの滉士の芽を摘んでおきたいから。
この大会で翼が優勝したら滉士の全中出場の可能性はないんでしょうか。
そういう私利私欲の駆け引きも描いて欲しかった。
そして何より翼は滉士との直接対決を1年以上前からずっと望んでいた。
これは前日譚として語られる翼がハイジャンプを始める契機に理由がある。
かつて翼は滉士先輩のジャンプに一目惚れした。
その競技に魅入られた翼は自分の体格とのミスマッチを承知した上で競技に没頭する。
才能はみるみる開花し、初心者の翼は滉士の自己ベストを5か月で抜き去ってしまう。
プライドが打ち砕かれた滉士は100メートル走の選手に転向。
これが『1巻』の時点でハイジャンプを止めていた詳細な理由である。
この時点で滉士は競技から逃げ出したが、陸上からは逃げ出していない。
しかし新部長が当時1年生の翼になった時、彼の中で何かが折れた。
滉士にとって翼は越えなければいけない高いハードルなのだろう。
2人のライバル物語は、なかなか良く出来ていると思う。
ここにヒロインが加わるから物語が一気にチープに見えてしまう。
ただ『1巻』の感想文でも書いたが、この経緯なら滉士と翼が同級生の設定でも良かった。
経験者の滉士の跳躍に、部活に入っていなかった翼が魅入られても話は成立する。
夏美も含めて、あと1年、各々が万全の練習を重ねて
全中の舞台で羽ばたくという展開で良かったのではないか。
そんな経緯もあってか、故障を抱える翼の試合を滉士がサポートすると名乗り出る。
滉士がサポートするのは、
夏美を巡る競争で正々堂々と戦うことを誓ったからかな。
手負いの翼に勝っても滉士は嬉しくないのだろう。
そんな男2人の友情譚を見て、涙を流す夏美。
ヒロイン気取りもいい加減にしてほしい。お前は部外者だ。
それぞれの全中出場の可能性が見えてきたところで、試合が始まる。
今回の大会の優勝は滉士。
翼は記録なしという結果に終わった。
2人には全中での対決が待っています。
にしてもマネージャーは何をしているんでしょうか。
顧問やコーチもいないし、彼らは独立愚連隊なのでしょうか。
そして続いて出場するのは夏美。
だが1年生だけの予選でも勝ち上がれなかった。
夏美の夏は終わった。
そして作品内では、アスリートとしての夏美も終わりました。
これ以降は ただの自己憐憫が過剰なヒロインと成り果てます。
にしても前回の失敗があるというのに、
出走直前にキスをする翼という人間は何て自己中な男なのでしょうか。
夏美は胸キュンする彼の数々の行動ですが、
どれも自分の欲望を満たすためにしているだけにしか見えません。
そして翼先輩にマッサージであれ練習であれ、
少しでも身体を触られるたびに、顔を赤らめるのが気持ち悪い。
さっきまで泣いていても、スイッチが入ると羞恥と愉悦が入り交じった表情をする。
彼女もまた、いつでも発情しているのだろうか。
試合翌日、夏美は悔しさで雨の中3時間以上走り続ける。
試合前後の無茶苦茶な行動は、身体を壊す一因になりかねない。
彼女は本当にアスリートなのでしょうか。
ただ この悔しさが持続すれば、来年は好記録が期待できそう。
ただし作品に来年はこない。そして夏美はストイックに生活しないだろう…。
中盤から終盤まで少女漫画の日常回が続きます。
陸上関係なし!
まずは看病回。
雨の中 走り続けたために高熱を出し寝込む夏美。
最初に部屋に来たのは滉士。
しかし直後に翼も来訪。
夏美の部屋で3人が集合します。
まるで浮気相手と彼氏との遭遇。
物語が終わっても夏美は こんな風に2人に言い寄られるんでしょうね。
どちらからも迫られたら断れないんでしょうね。
この回は、本書の中で初めて落ち着ける回かもしれない。
ちょっと過激な場面もあるけど、基本は ほのぼのとした3人の様子。
翼のヤキモチも中学生らしいかわいいもので、
このぐらいの恋心の表現でいいんだよ、と思わざるを得ない。
続いては合宿での遭難回。
ただし練習風景などなく、夏美はただの恋する少女と化す。
合宿所でもイチャつく2人。
ホント、部内恋愛禁止って何だったのでしょうか…。
しかし市川先輩と翼が同居しているという衝撃の事実を知り夏美は動揺。
そんな動揺もあって、カヌー研修中に溺れる夏美。
なぜカヌーに乗っているかなどの説明は一切なし。
きっと海で溺れて遭難するためなら何だって良かったのだろう。
夏美が気が付くと、翼先輩と下着姿で洞窟の中にいた。
どうやら沈む夏美を翼が助けて、洞窟の中に避難したらしい。
…らしいのだが、それは全て読者の脳内補完に任される。
本書で大事なのは経緯ではなく状況の構築。
下着姿でいることが問題に上がり、夏美は そこに混乱するだけ。
そうして救助のお礼も言わず、服を脱がしたこと、
意識を失っていた自分を翼が裸で温めあったことに怒り出すバカ女。
夏美って作品内で「ありがとう」って言ったことありましたっけ??
自分は何かをされることを当然だと思っている彼女の傲慢さがよく出ている。
夜を迎えた洞窟内で体が震えるほど自分の欲望を我慢している翼。
どんだけ頭を性欲で支配されてるんだか…。
それをみて「ガマンしてくれてるんだ…」とドキっと嬉しさが込み上げる夏美。
彼女に翼に触りたいという欲望が生まれる。
これは広く言えば性欲なのだろうが、どちらかと言えば愛おしさのような気がする。
が、夏美から身体を寄せられたことを了解の合図と都合よく変換する翼。
もうガマンをしない宣言をして、最終巻に突入です。
頭の中が完全にピンク一色ですね。
翼が彼女が出来たから速攻 ヤりたくてたまらない童貞中学生でしかない(下品で申し訳ない)。
「抱く」という言葉で濁していますが、ヤりたい、が正しい言葉でしょう。
ヤりたくて ヤりたくて 震えるヒーローなんて前代未聞だ。
「We love Athletics!!」の副題が悲しい…。