《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

「大っキライ」と叫んだ16ページ後には交際が始まる怒涛の展開 その2。

放課後オレンジ(3) (フラワーコミックス)
くまがい 杏子(くまがい きょうこ)
放課後オレンジ(ほうかごおれんじ)
第03巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

滉士(こうし)先輩と翼(よく)先輩が勝負!賞品はなんと夏美(なつみ)のキス。怒った夏美は翼に大嫌いって言っちゃった!!次の日から夏美の練習量が強烈にUP。嫌がらせ?と思ったら、全中に行くために必要な練習だった。そんな翼がやっぱり好き…。もう一度告白した夏美だけど…!?

簡潔完結感想文

  • 真相。全部言わなきゃ分からない人に対して格好つけた振る舞いは無意味。
  • 迷走。交際後にも続く三角関係。新キャラが ことごとく意味を成さない。
  • 貞操。大会優勝後に抱くよ。お前の恐怖心とか関係ねーから。俺様DV彼氏!

春が大人の商業主義に追い越される 3巻。

作品が潰れていく音がはっきり聴こえます。
漫画家を続けるために編集部の言いなりになった若き作者の苦悩が見て取れるようだ(幻想)

青春部活モノから痴情におぼれる3人の中学生の姿を描く性春モノへの大転換。
女性を抱くためだけに陸上競技に奮闘する2人の男との乱れた三角関係。

主人公である中学1年生の女子生徒は性に対して恐怖心を覚えているのに、
彼氏の欲望を満たすためだけに、その純潔を捧げる覚悟を決める。

少女漫画なのに、女性は男のためにあるかのような作品のスタンスには反吐が出る。
男性の性的要求を絶対に拒絶しないことが小学館ヒロインの基本条件なんでしょうか。

男性作家が少年誌・男性誌で描いたら問題になるような発言なのに、
女性作家が少女誌で描く分には何の問題もないという非対称性の論理が目に余る。
これは作品というより出版社への怒りです。

それにともない迷言連発です。
「女の子はね 好きな男の子になら なにされたって嬉しいものなのよ」
「全中で優勝できたら、桜井(夏美)のこと抱いてもいいか?」

作者も含めた女性は誰もが無力で、
作品が汚されていく様子を呆然と見つめるしかなかった…。
小学館、滅亡しろ(一部作品を除いて)と本気で願う『3巻』です。

ちなみに3巻時点での主人公・夏美(なつみ)の落涙確率は15/16話で94%となりました。
作品は崩壊したので、ネタとして100%の記録を達成し、伝説になって欲しかった。


角関係の三人共、好感が持てない点が素晴らしい(嫌味)。
夏美・翼(よく)・滉士(こうし)先輩、どいつもこいつも欠点ばかりが目立つ。

まずは主人公の夏美。
究極の自己中心的な恋愛脳のヒロイン。

陸上部部長の翼(よく)による鬼の特訓が続いていた。
これは部内恋愛禁止のために夏美の想いに応えられない翼が、
夏美を全国大会・全中出場させるための、せめてもの行動だった。

しかし翼を信じられない夏美は
「大っキライな人に練習見てもらうってだけでも嫌」だと逃げ出す。
いやいや、練習はメニューを考えた人の好き嫌いで判断するものじゃないから。

だが兄に不平不満をぶつけた際、彼の助言により翼の真意を知る。

すると即座に「なによそれ… どうして そういうコト 先に言ってくれないの?」と涙を流す。
見事なヒロインっぷりですね。
そんな貴方が「大っキライ」ですよ☆


そして遠方の高校に進学しているのに何でも知っている兄は、
夏美に翼の校庭での早朝練習を教える。
その早朝練習が自分の練習に付き合う時間を捻出するためだと思い当たる夏美。

全てを知った翼と対面した夏美は手刀を繰り出し、脳天を一撃。
「バカじゃないの⁉」
うん、お前がな★

「やっぱり嫌いになんてなれない…!」
いや、ちゃんと嫌いになれてましたよ。
本人に面罵するほど。
まず、一連の言動を謝ろうか?

でも彼女の口から出る言葉は「好き」。

全てを知った夏美に翼は自分の抑えていた気持ちまで話す。
この部長、我慢が長続きしません。
はたして「大っキライ」から16ページで好きになりました。

この辺は、ある意味で予想外の展開の連続で面白い。


だし翼は彼氏としては最低な人間。

彼は夏美のことを常に性的な目で見ている様子。
恋人との心の交流なんて実利が無いので しません。

鼻血を出した夏美を、彼氏である翼がお姫様だっこする胸キュン展開。
向かった先の保健室に養護教諭がいないのは、少女漫画あるある ですね。

ちなみに「部内恋愛禁止」などという不文律は恋の障害の一つでしかなく、消滅します。
身勝手な部長と新入部員に対する他の部員たちの意見が聞きたいものだ。

矛盾する部長の相談に親身になって応える市川(いちかわ)マネージャー。

「抑えられないんです 滉士先輩に傷つけられるアイツを見てると
 俺 いつか あいつに とんでもないことしてしまいそうで…」
ハイ、性犯罪予告が出ました。
翼にとって恋人とは性欲の対象でしかないのだろうか。

それに対しての市川マネージャーの答えに唖然とする。

「女の子はね 好きな男の子になら なにされたって嬉しいものなのよ」。

ハイ、女性が乱暴されたいかのような誤解を与える発言出ました。

「好きな男の子になら」が、大前提なんだろうけど、
主人公の夏美が、滉士先輩の性的暴行に対して、
愉悦を感じるような描写があるから意味を成さない。

翼は性的欲望のために我武者羅に動き出します。
部長としては割とまともでしたが、彼氏としては独占欲と性欲に支配された最低な男です。


望にまみれた翼とは反対に、徐々にまともになるのが滉士先輩。

夏美の鼻血の治療をした保健室でイチャつく翼たちを見つめる滉士。
彼は2人のイベントを何もかも覗き見しています(笑)

そして滉士は翼が保健室を去った後に、夏美を強引にベッドに押し倒す。

「あたしが はっきりした態度とらないから
 滉士先輩をよけいに傷つけてるんだ」
「あたし滉士先輩の優しさに甘えて ちゃんと返事してなかった」

とヒロイン思考の夏美。
私には、本命と両想いになったからキープしていた片方の男を突き放す身勝手な女にしか見えません。

しかし男の方も負けずに身勝手で、強引にキスをする。

そこへなぜか保健室に帰ってくる翼。
ここは体育館に行っても、夏美がいないから戻ってきた、と一言 説明が欲しいところ。

夏美に触る者は誰であれ許さない翼は、滉士を突き飛ばす。
それが暴力問題に発展するが、滉士は全ての責任を一人で被る。
滉士、2度目の陸上部からの退場です。


士を陸上部に戻したのは新キャラ。

「県下でも有名な名コーチ」というザックリとした説明の荒川(あらかわ)が初登場。
具体例を全く示さないまま、彼の名コーチ設定は受け入れられる。

なぜ専属コーチではない、荒川に滉士停学の情報が回るのかも謎のまま。
そして謎の権力で、滉士の停学処分を無かったことに…。

アハハ、もう、何も考えられないや。

荒川は突如、強化選手を2人指名。
強化選手とは「県下で全国を目指す主力となる力を持つと判断された選手のこと」。

それに選出されたのは滉士と夏美。
これまでに夏美の才能や彼女の将来が有望だという描写は一切なかったけどね…。

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まず自分の技術の向上を考えられない者に強化練習など無意味だと思わされる一コマ。

彼氏の翼が不選出に対して荒川の胸倉を掴んで涙ながらに抗議する夏美。
この行為は翼を一層 惨めにすると思うが、夏美にそんな気は回らない。

彼を評価しない荒川に靴を投げつけてまで抗議する夏美。
自分が信じる翼は絶対的な存在でなければ我慢が出来ないらしい。
初対面の「名コーチ」にすら盾突く恋愛脳。
強化選手失格だけでなく、もはや人として終わっている。

荒川は翼に他種目への転向を提言する。
ここにきて翼の体格(身長)問題が議題に取り上げられます。

でも『1巻』1話で「日本中が熱狂することになる不世出の天才ジャンパ―」、
翼の未来を示してしまっているため、全くもって緊張感がない。


うして滉士先輩と強化練習に参加する夏美。

だが練習前に夏美は滉士を突き飛ばした際に、彼の持っていたコーラを頭から被ってしまう。

この場面、よくよく見れば滉士はコーラを持っているけど、
事前に目立たせないから唐突に感じる。

夏美はシャワー室でゴキブリに発見し、大粒の涙を流しながらタオルを前で押さえただけの姿で滉士に助けを求める。

これは普段は滉士先輩と過敏に警戒するのに、
困った事態になると彼にすがるしかない夏美の姿勢そのもの。


しかし滉士も残念な思考の持ち主だから、
「これから お前が翼のものに なってくのを 黙って見てろなんて…!」
「耐えらんねー…」と夏美に無念さを露わにする。

いやいや、失恋ってそういうものだから。

思い通りにならない現実に耐えられない滉士はゴキブリの排除と引き換えに夏美からのキスを要求する。
自分の手を汚さずに、相手の心を汚す最低な作戦ですね。

男の要求には唯々諾々と従うしかないヒロインの夏美ですから、
キスと、せめてもの抵抗の平手打ちを滉士に差し出す。
そして唇の汚れを洗い流すかのようにシャワーを浴びるのだった…。

…えっと、ゴキブリは??
読者のツッコミ待ちのギャグ漫画なのかな??


が伸び、すっかりロンゲに戻ってしまった滉士先輩は強化練習で覚醒する。

荒川コーチが再登場(もしかして最後?)。
翼でも言えるような助言ばかりだったが、果たして本当に名コーチなのか。

ただし、翼と滉士であった実力差を埋める装置としての役割は果たした。
数週間前(推定)まで170センチが限界だった滉士のハイジャンプの記録は195まで伸びる。
本書にとって記録など飾りであります。
気合と性欲で何とかなるのです。


そして最も意味のない夏美のライバルキャラ・樋口 梓(ひぐち あずさ)が初登場。
「これが あたしにとって無二のライバルとなる梓先輩との出会いでした」

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夏美の性根を叩き直してくれる可能性のあった先輩は、小学館に抹殺された…。

…ライバルに なりませんでしたね。
結局、夏美のアスリートとして大成を描けないまま作品が終わるので。
この時点では作者は、大長編を描いて夏美をちゃんと成長させるつもりだったのか?

梓先輩は恋愛のお邪魔虫としては機能してくれる。

強化練習のシャワー室でのキスを目撃している梓は、キスのことを翼の前で暴露する。

ここ、梓を強化練習後すぐに登場させるなら、
シャワー室の近辺に第三者の存在を匂わすべきだったのでは?


2人のキスを知った翼は嫉妬や叱咤をしない代わりに、夏美と性行為に及ぼうとする。
翼が壊れて、作品が崩壊し、作品カラーがオレンジからピンクに染まった瞬間です。

「全中で優勝できたら、桜井(夏美)のこと抱いてもいいか?」

ハイ、性欲が全てを塗り替える発言が出ました。
翼は夏美を抱きたくてたまらない。
これ以降、何回「抱く」と発言したでしょうか。

夏美は性に対して恐怖心があるにもかかわらず、口から出る言葉は
「…あたし ……っ がんばり…ます…」。
従順だねぇ。健気だねぇ。そして愚かだねぇ。

そして交わされる約束の口づけ。
これは最終回の伏線かな?

中学1年生と2年生が交際から2か月で性行為に及ぶ可能性が出てきた。

もっと彼氏彼女としての交流とかないの?
デートもしていない。電話もしていない。
それどころか、まともな会話もしていない。

男女交際は恋愛ではなく、肉体的接触・性的行動でしかない印象を受ける。
そんな小学館の思想にはついていけません。


その2人の様子を窓から見ている滉士先輩。
どこにでも現れる覗き魔(笑)

翼がグイグイくる一方で、滉士は乱暴の封印を約束する。
初登場から暴力と欲望のままに生きていた滉士は逆に真面目になるんですね。

これが作者が考える男たちの均衡なのかなぁ。
こうすることで三角関係が予測不能になると考えたのでしょうか。

繰り返しになりますが、三角関係どころか、1人1人の人間が本当に嫌いです。