《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

キスからの初告白の100ページ後に、その人のことを好きじゃなくなる怒涛の展開。

放課後オレンジ(2) (フラワーコミックス)
くまがい 杏子(くまがい きょうこ)
放課後オレンジ(ほうかごおれんじ)
第02巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★(4点)
 

陸上部に復帰した滉士(こうし)先輩に練習を見てもらうことになった夏美(なつみ)。その滉士にいきなり告白されて超ビックリ!そんななか迎えた全中につながる最初の大会。初めてのレースに夏美は緊張でガチガチ。集中できないでいたら翼(よく)先輩が声をかけてくれた。その一言で自信を取り戻した夏美は…!?

簡潔完結感想文

  • 陸上大会。スタート位置に自分の力で立てない個人競技アスリート。恋愛脳。
  • 大好きな人の活躍を自分のことのように喜んでたら、自分が疎かに。恋愛脳。
  • スケベ部長の行動に振り回されたくないから、言っちゃう 大嫌い! 恋愛脳。

持ちが不安定すぎて三角関係が安定し始める 2巻。

『2巻』では本書で初めての陸上競技大会の模様が描かれます。
大会には結構ドキドキして、作者の取材なり勉強の成果が見て取れる。
ハイジャンプという競技の魅力がしっかり出ているのではないか。

一方で、魅力が全くでないのが登場人物たち。
ここまで独り善がりな行動の連続を見せ続けられると嘆息を漏らすばかりである。

このメンタルの揺動が中学生らしいと思わなくもないが、
理解不能の行動ばかりで、彼らの感情に共感が出来なくなるだけ。

恋愛と男に振り回されるだけの人生の正統派ヒロイン・夏美(なつみ)だけじゃなく、
ヒーローである翼(よく)先輩の言動も身勝手が過ぎる。

ヒーローに振り回されるヒロインを描きたいのだろうが、
どちらも身勝手すぎて応援できない。
むしろ翼の行動が酷いから、夏美を擁護したくなるぐらい。

本当に、どちらもどうして相手を好きになったのか理解が出来ないのが、
少女漫画としての最大の欠点だろう。

好きと言っても、大嫌いと言っても、
その想いの浅さが露呈しているから、心に響かないし、ドキドキしない。

そうして相対的に、物事が見渡せている滉士(こうし)先輩が常識人に見えてくるから不思議だ。
もしかして三角関係の均衡を保つため、計算しつくされた展開だったりして…⁉


主人公・夏美が泣くのが恒例の本書。
2巻終了時、11話時点で夏美の落涙率は10回/11話(91%)となりました。

驚くことに7話では涙目になるが、はっきりとは泣かなかったのだ。
というのも7話は試合中。
説明台詞が多めの回なので、さすがの夏美も泣く隙がなかった模様(笑)


半は全国大会・全中に繋がる市の陸上競技会の模様。

初めての大会の雰囲気に緊張する夏美。
有名スプリンターの桜井 亮(さくらい りょう)の妹であることで注目される中、
自分の失言によって周囲の反感を買ってしまう夏美。

同じ学校の部活仲間からは嫌われる描写は一切ないが、
夏美は空気の読めない人なので、なかなかの嫌われ者だと思う。
そういえば学校内で友達がいる描写がないような…。

そうして買った反感もあり、同じレースに出場する選手から
スタート直前に嫌味を言われてしまい動揺する夏美。
更に彼女はフライングをしてしまい絶体絶命!

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自分が何のために走るか分からない人間にスタートラインに立つ資格はない。

漫画的表現なのは分かるが、
フライングからの仕切り直しまで何分あんだよ。

そしてフライングしただけで泣くって…。
仮にも個人種目のアスリートが試合前から泣くなんて、競技者に向いていない。
これも「泣きたいぐらいの気持ち」の漫画的表現とフォローも出来るが、
この後も自分の気持ちを切り替えられない夏美の弱点が露わになります。

陸上大会の時まで、翼が傍にいないと自分を立て直せないなんて、
女性を弱く描くのにも程があります。

これが後の夏美の成長との比較材料になるならまだしも、
最後まで夏美の精神力は全く鍛えられないから目も当てられない。


先輩と滉士先輩のエントリーするハイジャンプの様子は手に汗を握る。

驚くほど しっかり試合しているのだ。
試合の流れとか緊張感、臨機応変な対応や駆け引きまで周到に配置されている。
だから翼のことを自分のことのように緊張する夏美に、ちゃんと感情移入できる。

競技に復帰したばかりのブランクのある滉士先輩の記録は170センチ。
これが最終巻には、ああなるんだから、
伸びしろは滉士先輩の方があったりして⁉
この後 たった3か月余りで記録を伸ばし過ぎな感もあるが…。


優勝候補筆頭の翼は、単独首位の記録で優勝は決定済み。
しかし優勝が決定し、コンディションの悪い雨の中でも、全中参加への標準記録を突破したい翼。

それは自分の全中への出場を決定すれば、自分の時間で夏美の練習をたくさん見てやれる、という理由から。
この人も恋愛脳ですね。
怪我など恐れない。

…というか今 気づきましたが、この部には部活の顧問やコーチはいないのでしょうか。

「不世出の天才ジャンパ―」にコーチどころか顧問がいなくて、
自主練に任せているような状態って どうなんだ。
大人がいると部活内でイチャコラ出来ないから割愛されたのだろうか。


なみに「恋愛に疎い」という設定の翼は、
まだ夏美への好意を自覚していなかったことが判明!
滉士への数々の牽制も無意識で行っていたらしい。
さすが天才。ぶっ飛んでる。

翼の全中出場が決定したことを自分のことのように泣く夏美。
そんな彼女を見て愛おしさが募った翼は、彼女に思わずキスをする。
ぶっ飛んでます。

しかし夏美は色々な意味で翼に心を奪われて、
自分のことを忘れ、ウォームアップすらしていない状態でレースに出場。
元々メンタルが弱い夏美は、試合に集中できなくなる。
翼も夏美も相手のことを想っているようで、周囲が見えない人たちですね。

これは試合会場での前半で、翼が部長として他の部員のケアをしていたのとは対照的。
夏美のことになると暴走してしまうのが翼、ということでしょうか。

この暴走は最終回まで続く。
これはグイグイの滉士先輩への対抗策の一環なんでしょうか。


かし相合傘をしながらの帰り道、翼はキスを忘れてくれと言う。
そして「部内恋愛の禁止」を告げ、夏美と距離を取ろうとする。

翼は夏美に対して言葉が足らなすぎですね。
翼まで頭の悪い本能的な行動をし始めてしまったから本書は終わりを迎えたと思うのだが…。
見た目の童顔に騙されてはいけません。

でも これは翼は責任を感じたからでしょうね。
彼なりのケジメではあると思う。
そして振り回されるヒロイン、は少女漫画的に正しい。


ち込む夏美を元気づけに自宅に上がり込むのは滉士先輩。

夏美の心理状態を慮って来てくれたのだが、
素直じゃないから出てくる言葉は「あんなチビやめて俺と つき合えよ」。

あれっ⁉ でもなんて滉士は
「昨日のことで お前がヘコんでると思っ」て、夏美を励ましに来てるんだ??
恋愛禁止を告げられた帰り道のことを滉士が知る由もないではないか。

夏美がヘコんでるのは、不甲斐ないレースをしたから、
と考えることも出来ますが、翼との恋愛の話をしているので、その線はないでしょう。

これは作者のミスでしょうね。
やっぱり、色々と若さが溢れ出ているなぁ…。

そして、どちらにしろ部内恋愛禁止だからと思わざるを得ない。

ここでキッパリと断らない夏美に唖然とする。
好きな人とキスして、一世一代の告白をした翌日だというのに。

優柔不断が三角関係継続の秘訣とはいえ、酷い。
男性たちに翻弄されることで承認欲求が満たされてるだろうことが推測される。

女性として強く断らないと しつこく誘われ続けることを学んだ方がいい。


夏美は滉士を断る理由として、「ロン毛の男の人ってだめ」と言い放つ。
しかし翌日には髪を切って現れる滉士先輩。

ここは滉士の誠実な愛が分かる胸キュン場面なんだろうけど、
そこまで夏美に従う理由が伝わってこないなぁ。
そして毛先を整えた程度で、あんまり変わらないのが残念すぎる。

ちなみに滉士先輩は部内恋愛禁止を無視する覚悟があるらしい。
彼の性格を考えると当然だろう。

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(右)髪を切る前の滉士(左)髪を切った後の滉士。微妙な変化すぎて、胸キュン効果が激減。

分の恋心と、恋する乙女の気持ちに鈍感なくせにキスするし牽制もする翼。
彼もまた身勝手男の代表である。

更には滉士に釘を刺すどころか、
「見損なったぞ桜井 お前…恋愛できるなら相手が誰でもいいのか?」
「お前がそんなカルい女だとは思わなかったよ」と夏美を糾弾。

意味不明~!!
でも一部、真実を突いている~。

これも翼の自重の言葉なんだろうけど、
夏美を傷つけるような言葉を含めるのは配慮に欠ける。
キスを「魔がさした」からやったと言える彼はサイコパスなのだろうか。
どうして部長になれたのかが不思議でならない。


れ出る涙を隠さないまま帰途につく夏美をフォローするのはまたも滉士。

そんな夏美の手を引いて歩く優しい滉士。
それにキュンとする夏美。
肉体的接触に身体が反応しちゃうらしい。
これが後々のエロ展開の伏線だったりして…。

これは翼と滉士が並び立ったという表現なんだろうけど、
これでは上述の翼先輩の残念さが証明されただけである。


歩きついた先のバッティングセンターでバッティングする3人。
(とマネージャーの市川(いちかわ)先輩)。

そこから、夏美のキスを賭けたホームラン対決開始!

意味不明~!!
陸上漫画ですよね。
ハイジャンプしろよ。
作者としては、継続的に2人の男性の直接対決を描きたいのだろう。
が、意味不明~。
そして女性は男性に捧げられるもの、という価値観が気持ち悪い~。


翼は童顔で騙されているけれど、ヤンキー気質なところがある。
論理で詰められると「うるさい !!!」
ちょっと頭が足りない人のように思える。

「スケベ部長」は、後半の翼を一言で言い表す言葉ですね。
どんどんと残念な人になっていきますね。


キスを拒否られた翌日から、翼はスパルタに豹変。
いびるように夏美に練習を課す。

叱咤する翼に向かって夏美は
「どうして あんな人のこと好きだったんだろう」。

うわー、ヒロインが一番言っちゃいけない台詞。
せめて一途なヒロインであれば応援できたのに、自分の気持ちさえ疑い出す始末だ。
私の中で作品への気持ちが切れた瞬間は、ここかもしれません。


でも夏美はすっかり忘れているだろうけど、
この練習に翼が夏美の練習に掛かりきりになれるのは、翼が無理をしてまで全中出場権を得たからだ。

自分が胸を打たれた言葉も、自分の都合で塗り替えて、
自分に優しくなければ、好きな人も簡単に嫌いになる。

自分、自分、自分、そんな人に恋愛をする資格はない。
夏美の浅はかさは、少女漫画の中でも一、二を争うレベルだ。


もちろん翼の鬼の部長のドS演技もヒール役を買って彼女を鍛えるため。

恋愛禁止だから男女の仲で彼女を支えられないなら、
部活内の立場で彼女を支えるという翼の不器用な接し方だろう。

こういう節度を持った態度を継続してくれたら、翼に好感を持ったのに。
さぁ、作品のバランスが崩壊する後半戦が始まりますよ…。