《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画あるある。3巻は三角関係が始まる場合が多い。テコ入れ策かな?

コスプレ☆アニマル(3) (デザートコミックス)
栄羽 弥(さこう わたり)
コスプレ★アニマル
第03巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

ケモノ王子vs.イジメっ子王子! 魔性のオーナーも参戦か!? リカの恋路はどうなるの? ――愛のお料理教室にサーフィン合宿♪ 恋人たちにはお楽しみイベントが盛りだくさん。おもいっきり元(ハジメ)とイチャイチャした~い……のに、アラタやオーナーが邪魔ばかり(怒)! 彼らの誘惑に負けちゃダメ、挑発に乗っちゃダメ~ッ。リカ、恍惚(こうこつ)状態の第3巻!!

簡潔完結感想文

  • コスプレが恋愛関係のマンネリ打破ならば、三角関係は少女漫画のマンネリ打破。
  • 若くない。現役高校生と旅行をすると主人公の老け具合が顕著になった気がする。
  • 若すぎる。2人の恋愛フリーパスである合い鍵。親に扶養されている身ですけどね…。

日本に四季があるように、四季にはコスプレがある 3巻。

『3巻』は全4話収録で、1話ごとに コスプレをしている。
中でも2話目・3話目は雑誌掲載の時期に合わせた季節のコスプレである。

着る物を全てコスプレとするならば、特殊なコスプレじゃなくても、
人は1年でかなりの数のコスプレをしているのかもしれない。

ハレの日に着る和服が、着る者の背筋をピシッと伸ばすように、
コスプレは人の心に大きく作用するのだろう。

3話目の夏祭りの話は、日本ならではのコスプレで着眼点が良い。

これはコスプレとハレの日である祭と、そして愛欲が良くマッチしている お話だ。
娯楽の少ない時代には祭の後は、男女の時間だったそうですし。

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職業ではなく、同じ地区に住む者が着ることで連帯感を高めるのが祭の衣装。

主人公の リカがコスプレの虜になるのも、そんな作用に魅了されているからかもしれない。
そして そんな滾る精神で彼とイチャイチャしたいのだろう…。

『3巻』の出版年は2005年だが、出版年があと7~8年 あとだったら、
秋にはハロウィンイベントを開催しただろうなぁ。

日本でこれだけ流行するとは誰も予測していなかっただろう。
皆、コスプレする機会を窺っていたのかもしれない。


回は季節感を採り入れたこともあり、
1話完結の物語としては、まだまだ楽しいのだが、
長編少女漫画としてみると、何も起きないまま同じことの繰り返し。

リカに感情移入できれば恋の酸いも甘いも感じられるのだろうが、
話の筋しか追えない不感症の私からすると、
毎回ちょっとした問題や邪魔があって、
それを排除してイチャイチャするという水戸黄門的パターンが続くだけ。

ただ、以前も書いたが、水戸黄門的にするのなら1話完結で、
どんどん色々なコスプレに挑戦する話にした方が良かっただろう。


1話目で早くも交際し、別れる気もさらさら なさそうな主人公カップルだから話に展開がない。

そこで話のスパイスとして、彼氏・元(はじめ)の同級生のアラタを配置しているが、
このアラタは「自分 壊す」「手段も選ばねー」とか言葉だけのヘタレである。

動き出すのは、作者が いよいよ話を思いつかなくなった時かもしれない。


アラタが今回から眼鏡をかけ始めたのは、アラタの決意の表れか、
それとも似すぎている元とアラタの読者への判別のヒントか。

時々、演出でアラタの髪が黒じゃない時があるのだが、本当に元にしか見えない。

見た目がほぼ同じならば、幸せな元よりも、
不遇なアラタに肩入れしたくなるのが、判官びいきが好きな日本人的感覚か。


んな不幸の不均衡を解消すべく、今回、元にも過去の不幸が明らかになる。
どうやら元の育った家庭環境は複雑らしい。
そんな問題も後々に出てくるのかな。

しかし家庭環境が複雑なヒーローというのも少女漫画で頻出する設定ですね。
年齢的に、抱えるトラウマが親関係しかないという制約があるから仕方ないが。

そんな元の住まいに、リカが初めて行くのが3話目のラストから最後の4話目。

元の家は親が不在がちで、リカが寝泊まりしても大丈夫みたいだ。
家に入れてくれたことは自分を更に受け入れてくれたようで喜ぶリカ。
現役高校生である元の制服を着たりとコスプレも満喫。

しかしラストの展開は どうなんだろう。
元が家の合い鍵を作り、リカに渡すのだが、
作者としては、一層 深い仲になった2人を描きたかったのだろう。

これが社会人だったら果てしなく嬉しいことだということは分かるが、
彼らの場合、高校生が親に黙って合い鍵を女性に渡す、という
身の程をわきまえない展開にしか思えない。

ちょいちょい こういう若けりゃいいってもんじゃない年齢の壁に阻まれる本書。
特に元は まだまだ高校生、という部分がネックになりがち。

作者は登場人物たちより 上の年齢だろうから、
現在の作者の物の見方で描いている部分とのギャップが生じている気がする。

それなら、お互い社会人だけど、共通の趣味としてコスプレがあった、っていう方が良かったかも。


齢設定といえば、2話目の海での お泊りのお話で気になったのは、
19歳とはいえ現役の女子高生たちの中に入ると、リカの年増感が増しちゃうこと…。

逆の立場だったら邪魔としか思わないだろうな。
正当の彼女とはいえ、おばさんが若者に対抗している痛々しさしか伝わってこなかった。

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見てるよ。成績も全国でトップクラスでサーフィンも出来ちゃうアラタの勇姿を★

過去に好きだった人を知ると気にすることが止められなかったり、
リカは元の過去の全てを知り、全てを受け止めるつもりなのだろうか。

何だか色々と重い人の重い話になりそうな気がする。

作者には本書はエロ描写目的で読まれていることを肝に銘じて欲しい。

下手に話の奥行きを出そうとすると、
かえって作品の空虚さが悪目立ちしてしまいそうだ。