《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

私たちの間に恋愛感情はなかったから、だから男女であっても友達に戻れる、よね?

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岩本 ナオ(いわもと なお)
町でうわさの天狗の子(まちでうわさのてんぐのこ)
第04巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

幼なじみの瞬(しゅん)ちゃんが、しばらく京都に修行に行ってしまうことを知った秋姫(あきひめ)。ちょっぴり心細い秋姫だけど、瞬ちゃんに心配をかけないよう、ひとりでも大丈夫な姿を見せようと心がける。でも、人はそんなに急に変われるはずもなくて…。そんなある日、タケル君から、もっともっとショックな言葉を聞かされてしまい――!?

簡潔完結感想文

  • 続・日常回。スカートの丈の短さを保護者に注意されたり、家族へ料理を作ったり、フラれたり。えっ⁉
  • 恋を失って見えてきたもの。周りにいる不器用で優しい人たち。波にさらわれたけど確かにある思い出。
  • 文化祭準備。普段は話せない人と話す機会。高校生活はずっと人との距離を縮めてきたから今回も大丈夫。

姫(あきひめ) 恋の修行。告白、登下校、デートに続いて、終焉の 4巻。

『4巻』も『3巻』に続いて日常回が続きます。

瞬(しゅん)ちゃん が一週間ぶりに登校してきたり、
保護者からスカート丈を注意される女子生徒が続出したり、
1学期の終わりに通知表を親に見せたり、
家族と恋人のために料理を振る舞ったりしています。

しかし1学期の終わりと同時に交際も終わってしまう。

1学期の間で急速に接近した秋姫とタケル君の仲。
でも一緒にいて楽しいけれど「彼女」とは違う。

「彼女」になることを夢見て、その夢のつづきを見ているような秋姫には青天の霹靂。
自分たちの関係のどこが問題だったのか、それを知るには まだまだ恋の修行が足りないようだ…。


行といえば、秋姫の目下の悩みは、
生まれてこの方、ずっと一緒だった瞬ちゃんが長期間の修行に行ってしまうかもしれないということ。

行ってほしくはないけど、絶対に行かないでとは言わないことにしている秋姫。
なぜなら「瞬ちゃんは 小さいときから あたしの意志を尊重するように言われているから」
だから「あたしだけは それを言っちゃいけないんだ…」。

でも、言わないと瞬ちゃんは烏天狗になって飛んで行ってしまうかもしれない。
秋姫の不安な気持ちは自分の中にだけ仕舞われている。


そんな不安を押し殺して、瞬ちゃんが心安く お嫁お山に行けるように、
7月中はずっと瞬ちゃんと仲良くしようとした矢先、
スカートの丈を短くしたことで瞬ちゃんを怒らせてしまう。

秋姫は「太郎坊としての自覚がうんぬん」と瞬ちゃんの怒りを推察するけど、
これは瞬ちゃんが自分の好きな女の子が他の男子から
好奇の目・イヤらしい目で見られたくない気持ちからでしょう。

しかも自分が天狗の所用で1週間学校を休んでいた間の秋姫の変化。
これは秋姫から目を離さざるを得なかった瞬ちゃんの自分への怒りでもあるんでしょう。

秋姫のスカートの留め具が吹っ飛ぶ事件で瞬ちゃんが血相を変えたのも同じ理由。

瞬ちゃんは本書の中で分かりやすいほどに秋姫のことに必死で、
冷静に見えて、頻繁に混乱している場面が多く見受けられる。

それを察せない秋姫は、やっぱり恋愛修行が足りませんね。

でも一応、恋愛修行としては女子生徒の恋愛バイブル『虹空』を読んでるか(笑)
この『虹空』は「エンコー・リスカ・イジメ」など盛り込んだ横文字の小説らしい。

ネタ元は2000年代後半に流行したケータイ小説でしょうね。
実はこの『虹空』、この後も続編やら関連本が色々出ているところが面白い。

そして秋姫に本を借りた瞬ちゃんも ちゃんと読んでいて笑った。
感想は「女が好きな横書きの小説」「つまらんかった」ですって…。


1学期の最終日は料理回の ほのぼの回、だと思われたが…。

秋姫の家では学期の終わりは、父の康徳(こうとく)様が お山から下りてきて、
家族みんなで食卓を囲みながら、通知表を見せ、団欒するのが習わしらしい。
今回は秋姫母の要望もあり、タケル君も参加。

基本的に秋姫は父の康徳様のことをちゃんと好きなところが良いですね。

通知表が良くなかったから父をガッカリさせちゃうと落ち込む秋姫。
天狗の父親の存在を忌み嫌うのではなく、父に良く思われたいという気持ちが勝っている優しい子です。

そして その通知表を見て、子どもたち(秋姫&瞬ちゃん)の良いところを
ちゃんと指摘してくれる康徳様も素敵です。

一風変わった家族形態だけど、基本的な愛情の上で成り立っている。

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天狗の子育ては褒めて伸ばす。大天狗様は瞬ちゃんにだって怒ったことないのだ。

ちなみに瞬ちゃんは学年2位の成績らしい。
1番は誰なのだろう。結局、最後まで判明したりはしなかった。

瞬ちゃん、なんだかんだハイスペック男子です。
そして行動原理も分かりやすい。
秋姫の保護・観察を「仕事」と称している瞬ちゃんだが、
「私事」も高い割合で入っているだろう。


校入試の少し前から始まった本書。
早くも様々な思い出が生まれた高校1年生の1学期が家族の団欒で終了。

…と思いきや、これも秋姫の恋愛修行の一環なのか、一大事件発生。
何と、タケル君から「友達」に戻りたいと言われてしまう。

翌日、補講を受けるため目を腫らして通学する秋姫。
人生の最大の悲しみの中でも補講を受けようとする秋姫は偉いですね。

ただ結果的にはサボるんだけど。
学校の最寄り駅に集まったのはメールで事態を知ったクラスメイト達。

皆より一足先に彼氏が出来た秋姫、そして一足先に別れを知った秋姫。
彼女の高校1年生の1学期はピークアウトが早かった。

そんな彼女に、クラスメイト達が寄り添う姿が良いですね。
飾られた言葉じゃなくて態度で示してくれる。

これみよがしに友達も慰めながら泣くといったワザとらしさがないのがいいですね。
朴訥とした優しさが、この決して発展していない町に良くマッチしている。

自分たちの経験不足を詫びつつも、何とか秋姫に元気を取り戻してもらおうとする。

クラスメイトが漕いでくれる自転車で小さな町をただただ進む1年2組の女子たち。
そして、そこここに残るタケル君との思い出。

1学期で失ったもの、恋人から「友達」に戻ろうと言われた傷を、
1学期の間で得た友達が必死に手当てしてくれる。


方、当人のタケル君から別れたことを聞かされた瞬ちゃんは呆然自失。
だが正気を取り戻し、秋姫の身を心配する。
ヒーローは姫の身に何かあったら馳せ参じるのが「仕事」。

瞬ちゃんの取り乱した姿を、眷属見習いの誰かが秋姫に密告して欲しいものだ。
「あの時の次郎坊(=瞬ちゃん)の慌てっぷりはなかったぞ。よっぽど姫のことが…」。


姫メインで考えると、タケル君はフッた側になる訳だが、
タケル君もタケル君で傷つく場面がいっぱいあった。

現に、漫画の中で彼の顔が曇る時が幾つかあったもの。

それは秋姫に単純な力だけでなく、精神的にも頼られない場面。
男として一番傷つくことだろう。

また、彼女が精神的支えにしているのは別の男だということも明確であった。

きっと、それもあってタケル君は瞬ちゃんを試すようなことを言ったりしているのだろう。
その言葉で瞬ちゃんが動いてくれれば、タケル君は お役御免だもの。

そんなタケル君が本音を話せるのは、
ライバル関係でもある瞬ちゃんではなくて眷属見習いの八郎坊(猪)。

八郎坊は初登場時からタケル君との絡みが多いですね。
今回は初の人型も登場。

タケル君が本音を語る相手がいて良かった。
タケル君も八郎坊のお陰で気持ちが浮上したらしいし。


そうしてタケル君と見るはずだったのに、見られなかった花火大会は、
色々アクシデントがありつつ、瞬ちゃんの隣で鑑賞。

友人たちの存在と、瞬ちゃんの存在が秋姫の2学期へ向かう気持ちを高めてくれた。

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瞬ちゃんの台詞は借りてきた言葉だけど、嘘ではない。鈍感な子が相手だと大変ですね。

ばらくはタケル君と目を合わすことも、会話することもなかったが、
文化祭の準備を通して、タケル君と徐々に元通りの関係に戻っていく秋姫。

この文化祭の前後は普段は話さない・話せない人と喋ることが出来る、
という特殊な空間が生まれるのは あるある でもあります。

タケル君とは もう恋人ではないけど、かけがえのない友達であることが残った。
だから恋人同士では言えなかった一言も、友達としてなら言えたりする。

毎回、毎巻、偏見だったり険悪な関係だったりを経験する秋姫ですが、
今回はタケル君との友情を取り戻す話になっていますね。
イベントを通じて仲良くなるのが本書の基本設計です。

そして失恋と それを乗り越えさせてくれた友情、
それらをひっくるめてのクラスメイトが協力して準備する文化祭。

これまでの学校生活の集大成のような位置付けですね。
更には文化祭が終わったら、瞬ちゃんは1か月修行に出てしまう。
まさに一大イベントです。

まぁ、文化祭の開幕は『5巻』なんですけど…。