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少女漫画と小説の感想ブログです

友だちの恋や学芸会のことで頭いっぱいで猫田は そんなに気になっていないだろう。だが それもいい。

猫田のことが気になって仕方ない。 4 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
大詩 りえ(おおうた りえ)
猫田のことが気になって仕方ない。(ねこたのことがきになってしかたない。)
第4巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

未希子は、猫顔の男子・猫田と仲良くしていくうちに猫田、ゆっけなど、初めての友だちが出来ていった。夏休みも終わった新学期、春菜が学校を欠席した。すると、ゆっけが「たぶん俺のせいだ」と言い出して!? どうやら、春菜に対してゆっけが告白をしたみたい! まだ恋をしたことがないみっきーはそれに対し…!?

簡潔完結感想文

  • ゆっけ と春菜の恋模様に、他クラス・葛西の意地悪。恋と友情を考える みっきー。
  • 学芸会本番。葛西の代役で主役のメロスを演じた みっきー。メロスが信じる友情とは?
  • 2学期も終了間際、クリスマスを前に様子のおかしい猫田に みっきーは興味津々で…。

走れ2学期。あっという間に2学期が駆け抜けていく 4巻。

みっきー こと未希子(みきこ)の輝くような小学校6年生も後半戦。
ようやく今の自分の周囲にいる人たちを「友だち」と呼ぶのだと気付いた主人公の みっきー 。

友だちという特別な存在のお陰もあって毎日が充実していく みっきーだったが、
2学期開始早々、春菜(はるな)が学校を欠席。
その原因は病気などではなく、男友だちの ゆっけ にあるというが…。


時間を掛けて友だちという存在を理解した みっきーの次のテーマは恋。

ゆっけ と春菜の関係が「好き」という感情でこじれてしまったが、
ゆっけも春菜もお互い誠心誠意の言葉を重ねることで問題は丸く収まる。

その一連の流れを間近で聞いていた みっきーは友だちの仲直り(?)はうれしく思うが、
それまでの二人の関係がややこしくなってしまった恋のむずかしさも痛感する。

そこで浮かび上がるのが恋と友だちの違い。

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友だち同士の中に恋が生まれる。恋って何なのだろう?
男友だちの まちゃこに聞いてみると、気になって仕方ない特別な人だという。
でもそれは みっきーの猫田への思いとほぼ一緒。
けれど、自分は猫田に恋をしていないと みっきーは反論して…。


本当に本書は問題提起のちりばめ方が上手ですよね。
少女漫画読者からしてみれば、みっきーの猫田への気持ちなんて恋に決まってるじゃん、
と単純化した結論に飛びついてしまうが、当の本人の気持ちはもっと複雑。

ましてや みっきーは、これまで転校した学校では深く人に関わらなかった性格の持ち主。
友情や恋という関係や感情は未経験のもの。
こうして無垢な人の経験を通して、読者も一緒に問題に向き合えるようになっている。
結果ではなく過程をしっかり描くことで共に歩いている感覚になれるのだ。

そして本書は友情や恋愛を一歩引いたところから見ているから心地よいのだと思う。

正確には一歩遅く実感が伴うから、と言った方がいいかもしれない。
これが友情なのか、これが恋なのか、とみっきーの実感・理解はちょっと遅い。
しかし遅れてジワジワと身体を駆け巡る喜びがまた心地いいのだ。
ウジウジと自分の感情に囚われるのではなく、人と人の関係を通して学んでいく。
体験型の学習が みっきーと本書にはよく合っている。

そして猫田の猫顔問題で物語を牽引しながらも時にはその問題を脇に置いたり、
主題に戻したりと緩急が自在なところも魅力です。
学校イベントと猫田問題のリレーのバトンパスがとても美しいです。


続いても友情の話。
2学期最大で最後のイベントは学芸会。

題材は友情が試される「走れメロス」。
友情が分かった みっきーには相応しい題材。

今回も結果的には みっきーが主役のメロスを演じるが、それはあくまで結果。
始めは裏方として、一歩引いて物事を見ている。
そこで学年全体で取り組む学芸会の楽しさや、他クラスの人との交流など、みっきーはまた小さな喜びを見つける。

そんな中、出会った他クラス・葛西(かさい)はメロス役の男の子。
葛西は男と女は絶対に友だちになれないと思い込んでいる人。
だから男友だちに囲まれる みっきーを口悪く罵るし、
告白する勇気のないまま みっきーの取り巻きに安住する まちゃこ を鼻で笑う。

でもそうやって葛西は女の子との接触を最初から諦めてるから世界が広がらず、
むしろ女子から怖がられ自分の世界が限定されていく悪循環に陥っている。

そんな葛西は広く興味を持たずに生きていると、葛西とかつての自分を重ねる みっきー。
みっきーがそこに気付くのは視野が広がった成長の証である。

だから怪我をして降板した葛西の代わりに努めたメロス役を通して、葛西にメッセージを送る。

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メロスは宣言した。男と女で友情を区別する虚しさを。
みっきーは自分が理解ができた人、仲良くなりたい人は、ちゃんと名前を呼ぶという特徴がありますね。
これはなんだか、喧嘩漫画の番長みたいな人だなぁ。
「俺の後ろは任せたぞ …葛西 ボソッ」「ばっ、番長!! ブワッ」みたな。

学芸会の回でも、みっきーが決して演技やセリフ覚えが達者でないところがいいですね。
ちゃんと みっきーが困難を乗り越える場面を見せている。
みっきーは何でも器用に出来るスーパーウーマンな訳ではないのだ。
絵も下手だし(笑)
けれど、何にでも興味を持って挑戦できる人で、それが毎日を輝かせる秘訣なのだ。
学芸会の時は学芸会のことが気になって仕方ない。
そういう全力投球の人なんです。

みっきーの中ではしっかりと成立している男女の友情。

私もそれを否定するわけではないのだが、
本書の中で男女の友情が成立しているのは誰と誰の間だろうと考えてしまう。

みっきーと猫田、入江、まちゃこ、猫田と春菜には恋愛が少しずつ絡んでいる(だろう)からダメで、
結局、ゆっけ と みっきーぐらいだろうか。
葛西のように はなから否定するのは勿体ないが、やっぱり結構 難しい問題である。


『4巻』のラストでは猫田の家庭環境が初めて明かされる。
父子家庭の妹と3人暮らしらしい。

格好つけてはいないのに、猫田が周囲の子より目立ってしまうのは、その大人びた性格からだろうか。
どうやら、それが生まれた要因は家庭環境にあるみたいですね。
妹を保育園に送り迎えをしたり、他の無邪気な男の子とは違う経験をしている。

父子家庭ゆえの問題や困難も、猫田はちゃんと等身大で受け止めている気がする。
そんな大人の猫田だから一歩引いて、クラス全体を見渡して みっきーに適切なアドバイスできるのだろう。

そして次巻、その妹の素顔が明らかに!

雑誌連載が単行本の巻のまたぎを意識した構成になっていますね。
これぞ人気連載って感じがします。