《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画で実は2人が過去(幼稚園時代)に会っていた確率が 気になって仕方ない(体感15%)。

猫田のことが気になって仕方ない。 9 (りぼんマスコットコミックス)
大詩 りえ(おおうた りえ)
猫田のことが気になって仕方ない。(ねこたのことがきになってしかたない。)
第9巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

顔が猫にしか見えない同級生・猫田に、特別な気持ちを抱きはじめたみっきー。だけどそんなとき、小学校の同級生・入江と再会。二度目の告白をされてしまった! しかも、猫田には“すきな人”がいるらしい…。はじめての気持ち、伝えられるの? 波乱の第9巻!
【収録作品】聴能力少女クラネ

簡潔完結感想文

  • 入江に猫田に気持ちを伝えるという宿題を出された みっきーは寝不足のあまり倒れて…。
  • 保健室で みっきーが見た夢は子供の頃に会った友だちのこと、そして果たせなかった約束。
  • 自分の中にある気持ちを猫田に伝えようとする中、親からある可能性が伝えられて…。

やっぱり恋には、運命と障害が必要だよね、の9巻。

いよいよ最終回を見据えた大きな展開が繰り広げられます。
これでもか というジ・王道少女漫画を突き進んでいきますね。

実はこの『9巻』は、これまでで一番 動きが少ない。
猫田とも友だちとも行動を共にせず、みっきーの単独行動が多い。
しかも客観的に見れば、何も起こっていないように思われる。
『8巻』で苦言を呈したことが再び起こっているのかと思いきや…。

この巻は みっきーの心の革命のお話です。
まさしく革命です。
幼い頃から みっきーが(意固地に)保持していた価値観が解放されます。
実は(これでも)自分を抑え込んでいた みっきーが変化の時を迎える。
人や物事にドライだった みっきーが流す涙。
それは積み重ねた思い出があったからだった…。


話は冒頭に戻って、少女漫画における恋を盛り上げる2つの要素について。
1つは運命論。
この恋が特別だと演出するには「運命」が必要です。
みっきー(未希子・みきこ)と猫田(ねこた)の運命は過去の出会い。

文化祭の一連の騒動を通じて、自分の中の猫田が特別であることを自覚した みっきー。
その気持ちに気づいてしまっては、入江(いりえ)の2回目の告白にも応えられないことを自覚する。
お断りをしたにもかかわらず入江は みっきーに自分のことを真摯に考えてくれたと感謝を示し、
そして、みっきーにその猫田への気持ちを本人に伝えるように「宿題」を出す。

入江、あんた良い当て馬だったよ…。

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交際を再度 断った入江から、とある宿題を出される みっきー。
猫田に気持ちを伝えることへの重圧に加えて、
猫田から好きな人がいると言われたことを思い出した みっきーは気持ちがすれ違う不安に襲われる。
寝不足と相まって その場でへたり込んでしまい、猫田によって保健室に運ばれる みっきーがそこで見た夢。

それが運命の出会いの時。
実は2人が4-5歳の頃、みっきーが人生2度目の引っ越しをした先で猫田に出会っていた。
たった1回きりの出会い、そして女の子だと思っていた「かなちゃん」。
それが実は猫田だったのだ。
明かされる猫田の名前「猫田 要(ねこた かなめ)」。

夢の中のかなちゃんと、この町に来て以来ずっと隣にいてくれた猫田が みっきーの中で一つに結ばれる。

猫田が猫の顔になる「猫変換」の大きな要因も描かれる。
次の日の再会を約束したにもかかわらずたった1回きりの出会いになったのは、
猫田の母の体調が思わしくなく、当時一緒に暮らしていた祖母に連れられ母のもとに行ったから。


そんなことは露知らず、翌日、風邪を引いた身体をおして会いに行った公園で みっきーが見たのは一匹の猫だけ。
みっきーは その日以来、何度も何度も公園に足を運ぶが、
結局、会えないまま自分がその土地を離れる日が来てしまった。
そして、みっきーは寂しいや会いたいといった感情をその土地に置いてしまった…。

そして、その日以来の再会が、小学6年生の転校初日のあの日だったのだ…。

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果たせなかった約束に出会ったのは一匹の猫。
猫田の得意料理「チャーハン」が意外なところで伏線になってたんですね。

猫田との運命は語られたので、
これで、あとは本格的な「猫変換」の解除だけですね。
いよいよ最後の時が近づいてきております。


そして恋に重要な2つ目の要素が障害。
上手くいきそうな時に恋の障害が訪れるのは少女漫画ではあるあるですね。
事故や病気・留学など小さな恋に大きな波乱を作りがち。

けれど本書の場合、展開としてそれほど唐突ではない。
可能性はずっと示唆されてきたから。
みっきーの人生はそれと共にあったから。

けれど、みっきーの心境を思うと辛すぎる展開だ。

前述の猫田(5歳)との2回目が無かったことが みっきーの性格形成にも大きく影響を与えている。
落胆が大きすぎて、何も期待しない心になってしまったらしい。

だから今までの転校もドライに乗り切ってきた。
そうすることで心を守ってきたのだろう。

だが、今回、転校の可能性を聞いて みっきーの中に湧き上がってきた思い、
それが拒否であり、周年だった。
みっきーの内面の変化を如実に表すエピソードで、
みっきーが弱いところ、涙を流している姿はこちらの胸まで痛む。

毎日が楽しかったから、それを失うのが怖くなる、嫌になる。
諦念を覚えてしまった5歳の未希子と、現在の未希子の対比も美しい。

わがままを言わなくなったことが成長の証ではない、
執念が生まれて、わがままを言えるようになったのが成長なのだ。

それを一番分かってくれるのは、ドライになった娘の変化を間近で見てきた母なのだろう。
みっきー母は理想の母ですね。
そしていつまでも出てこない父。
もしかして みっきーは無意識的に引っ越しの原因になっている父を恨んでいたりするのかな…?
(既に鬼籍に入られてるという私の妄想は一応 否定された)

さて、どんな方向からも猫田が特別だと分かった今巻。
いよいよ決着の次巻・時間です。


「聴能力少女クラネ(ちょうのうりょくしょうじょクラネ)」…
中学2年生のクラネには友だち一人もいない。
”物”ばかり話しかけていたら”物”たちと会話できるようになっていて…。

なかなかシビアな現実だけど、いつもポジティブな主人公がいいですね。
長編化しても面白かったのではないかと思う作品。
物の声を頼りに学校内の事件を解決していくのもいいし、
なんだかんだで男や物にモテそうなヒロインに友だちどころか恋人が出来るお話も良い。
クラネや太田(おおた)・恐野(きょうの)たちの今後が知りたくなりますね。
良い短編は長編化する余地がたくさん残されています。