《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

身長差50cmカップルのデートは時間制限あり⁉ 歩き疲れて足が痛くなる前に首が悲鳴を上げる。

ひよ恋 8 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
雪丸 もえ(ゆきまる もえ)
ひよ恋(ひよこい)
第08巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

結心の誕生日。はじめての放課後デートで、ひよりと結心の距離はぐっと接近中!? でも、親友・りっちゃんの様子が、最近なんだかおかしくて──!? 【同時収録】平行線/ひよんコマ/おまけまんが みったんの放課後日誌

簡潔完結感想文

  • 彼女が知らない彼の誕生日。ある意味サプライズ誕生回(笑) 放課後デートをどうぞ。
  • 文化祭に続いて大イベント修学旅行の事前準備。だが友情が崩壊しメンタル的に最悪。
  • 修旅1日目。仲直りで大好きな人と同じベッドで眠る。勝負下着 つけてて良かったね(笑)

一人 傷つくことのない両想いだが、別の意味で傷ついている人がいた 8巻。

本書は主人公・ひより に優しい。
最大のライバル・妃(きさき)は自動的に物語の外へ放出され、
ライバルだと目された礼奈(れいな)は恋人がいて戦線から離脱。

こうしてヒロインの視界はクリアになり、
学校内で人気の高い結心(ゆうしん)のはずなのに両想いとなっても、
誰もが2人を祝福するだけで、恨み言や嫌がらせを受けなかった。

しかし結心を好きで泣いている女性はいなくても、
ひより を好きで泣いている女性はいた。

それが ひより の幼なじみの律花(りつか)。
これまでの10年以上、誰よりも ひより の近くにいて、彼女の手を引っ張っていった律花。

だが高校1年生の冬から ひより は恋をし、その お陰で自分から行動し始めた。
これまでは雛鳥のように自分の後ろをついてきた ひより が、自分の力だけで羽ばたいている。
そんな親離れが嬉しくも寂しい律花。

いつまでも終わらないと思っていた子育てが、いつの間にかに終わっていたと知った時、親は虚脱感に襲われる。

両想いの副作用は思わぬ所から発見された。
この『8巻』は幼なじみの友情の崩壊と再生が描かれる。

これまでのように泣いたり逃げたりしないで、笑おうとする ひより が痛々しく、
何回も泣くよりも胸に迫るものがあった。

ひより にとっては、笑って、自分の足で立ち続ける事が律花に対する感謝の形だったのだろう。
強くなったね、と私まで親心を発動させてしまった。

そして再読すると、今回の律花との仲直りは、この後の展開のための予防線とも考えられる。
ちょっとネタバレになるが、この後、律花は今回の事をよりも ひより を恨みがましく思う時がくる。

でも それで友情が壊れないのは、その前に友情を再構築して補強していたからではないだろうか。
恋の大嵐が吹き荒れる前に事前準備をして その崩壊を防いだとも考えられる。

ひより の両想い前にライバルたちが撤退したのと同じように、
あまり内容がドロドロしないように入念な計画を立てているように思われる。


心の誕生回。
だが当日に それを知り、彼女として知らないままでいた事に ひより はショックを受ける。
10月1日が誕生日の結心だが、昨年12月から学校に来た ひより にとっては未だ未経験のイベントなのだ。

所持金も少ないので せめて出来る事として放課後デートを計画する2人。
ゲームセンターを楽しみ、プリクラを撮る2人。
そこに手書きの誕生日メッセージを書き込み、思い出を残すことが出来た。

だが好事魔多し。
結心とだけ長く一緒に過ごすと、ひより は首を痛めてしまうという副作用があったのだ!
2人だけで一緒にいられる時間は限られているのかもしれない。
今後は一定時間内に座るなどして首を休ませなければならない。

けれど そのお陰で結心が ひより の家に送ってくれ、彼を自宅に招待することになった。
結心が拾ってきた猫とも感動の再会を果たす。

結心は ひより の母親とも交流し、娘が学校に楽しく通う姿を知る母親から感謝される。
親との面識も出来たし、もう少女漫画的には婚約です。

その証として(?)、結心は ひより の頬にキスをして立ち去る。
結心は健全すぎる男の子で、本当に男女交際になるのか心配に思っていたので、
こうやって自分から動いてくれると嬉しい。


一方、その日、一緒に帰ろうと思っていた律花は、
ひより が結心と過ごす事を知り予想以上にショックを受ける。

ずっと彼女を守る役割を果たしていたが、それがいつの間にかに結心にバトンタッチしていた。
ひより が成長する事が、自分から離れていくような気がしてならない。
そんな律花の話を聞いたコウは「依存している」と分析する。

それは予想外であり、そして思い当たる節のある分析だったのだろう。
失って初めて どれだけ自分にとって大切かを思い知らされた律花。
ひより からのメールも、彼女への対応が分からなくなっているから返信せず、
その理由も咄嗟の嘘で誤魔化してしまう。

恋愛が上手くいくと、友情が破綻していってしまうのだろうか…。


んな中、大イベント・修学旅行が間近に迫る。
なぜか学年中が日程も行き先も忘れていたようで、降って湧いたような話なのが面白い。

自由行動の班は男子4人女子2人の不釣り合いな数となる。
クラス内のレギュラーメンバーを揃えたら そうなった、という感じ。
ここで礼奈と一緒の班にならないのが謎。
まぁ 彼女は日頃から そこまでベッタリと ひより と行動してませんが。

2泊3日ずっと一緒にいられる幸せ、
そして結心が自分から同じ班に誘ってくれた僥倖を噛みしめる ひより。
コウは律花の我慢も知らず、呑気に幸せに浸る ひより に冷たい視線を送るのだが…。


律花たちと一緒に修学旅行前の買い物していた際に結心と会う。
ひより と結心が恋人らしい会話や行動を目の当たりにする度に律花の胸は痛む。

また別の日、男女が同じ体育館を使用した体育の授業で、
ひより が苦手なバレーボールの練習をする2人や、
そして その成果に喜び合う姿を見て、律花は一層の疎外感を覚える。
そして その痛みを彼女は呑み込もうとしてしまう。

ひより は いつも通り、自分に全力で優しいのに、
自分は ひより に優しく出来ないどころか、突き放してしまうことに落ち込み悪循環に陥る律花。

メールの件で、律花が ひより に嘘をついている事も露見し、各人が複雑な心境を抱えたまま修学旅行が間近に迫る。


由行動の内容を決める期限の前日、
ひより は律花の班と一緒に回ることを計画するが、
律花の心境を一番 理解しているコウが反対を表明し、
コウに促される形で律花も、自分が ひより を避けていると口にしてしまう。

幸せな ひより を見ると心が濁るから、律花は ひより を突き放す。けど それは自分の魂を汚す行為だった。

それどころか今の心境だけじゃなく、過去の全ても否定してしまう律花。
「毎日毎日 ひより の心配ばっかりして 本当は ずっと迷惑してたんだから!」
彼女を自分から遠ざけるために、自分が嬉しかった事も何もかも否定してしまった律花。

こうして事前準備から達成感があった文化祭と違い、逃げ出したいほどの心境で修学旅行は始まる。

だが、傷つけた律花が ひより以上に傷ついていた。
それに気づいていながら ひより は律花と距離を取る。
律花がいなくても大丈夫な自分を見せる事が、律花への感謝だと信じているからだろう。

だが その無理は結心に見抜かれていた。
結心に何度も律花を気にかけている事、強がっている事を指摘され、
虚勢を剥がされた ひより は、これ以上 律花に嫌われる事を何より恐れている事を告白する。


んな中、律花が不調になる。
これは律花が自分の態度に反省した精神的に病んで、それが不眠などに繋がり体調も悪化したのだろう。

少女漫画では その人の体調不良を見抜くのは、好きな人の特殊能力である。
(今回の場合は、律花に明らかな異常があるのだが…)

ひより は律花が熱を出している事を見抜き、
そして結心のフォローもあって一緒にホテルに向かう。

熱で弱っている律花は虚勢を繕う余裕もなく、ひより に言えなかった言葉が次々に出てくる。
寂しかった事や、結心の存在で自分の役割が揺らいだ事など話せなかった気持ちを吐露できた。

雨降って地固まる。
恋愛であっても、友情であっても すれ違いの後の仲直りは これまで以上に関係が補強される。

こうして修学旅行1日目は終わり、万全の状態で2日目の自由行動が始まろうとしている。
雨の後は地面が固まったと思っても、地盤が緩んでいるから、次の嵐で崩落する危険もあるような…。


ひよ恋 番外編ー平行線ー」…
中学時代の結心と妃の話。

妃のナイトだから結心は彼女を傷つけるような行動が出来ない。
だから自分の恋愛に無関心な振りをして、結心は妃の恋心を無視し続ける。
そうなると やはり、結心が彼女を守る必要がないように、遠く離れるしかなかったか。

結心側からしてみれば幼なじみの呪縛と言った感じかもしれない。
ドロドロとした内容には出来ないから、恋人関係にはならなかったが、
立場的には妃と ひより は、現彼女と その存在を知りながらも彼にアタックする女性である。