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魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

完全な空中密室、そして衆人環視の不可能犯罪! アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮かぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに解き明かす!


恒例のS&Mシリーズとの相似点チェック。本作は5冊目の『封印再度』。詳しく言及するとネタバレになるので、簡単に。人の認識と凶器と狂気って感じでしょうか?狂気は語呂で選んだ言葉なので、語弊があるかもしれないけど。この作品は、警察が疑っている容疑者が実は犯人ではない事を先に記している。よって読者の方が一歩先を行くという造りになっています。その為、真犯人に目が向けられていないので終盤になるまで事件に肉薄しません。だからといって退屈かというと、事件発生まで結構なページがあるけれど(Vシリーズの特徴かもしれない)各々のキャラクタ、特に序盤に動く人によって、かなり緊迫してます。一人だけハードボイルドでワンダーランド、もしくはルパン三世です(笑)本作からの登場人物・各務亜樹良そしてエンジェル・マヌーヴァ。この二つ、私は苦手です。各務は七夏とキャラクタ・ビジュアルが混同してしまうし、エンジェル・マヌーヴァは興味が沸かなかった…
ミステリ的には、とても面白かった。空中での密室殺人の描写は緊張感たっぷり。心拍数上がります。森さんの飛行機好き満開だからか、機構が分かっているからなのかアクロバットの場面もとてもイメージが沸く描写だった。そして何より被害者の体内に残った物の解釈も論理的で合理的だった。残された状況を論理的に組み上げた推論。美しかった。まさにミステリの「美」の形。今回は切れ味がよかったです。ミステリ以外でも面白さ満載。登場人物が増えれば増えるほど組み合わせが面白くなる。カップリング(笑)の妙といいますか、組み合わせ自由って感じです。紅子⇔保呂草はもちろん、今回は七夏⇔練無・各務⇔保呂草、など人物関係がやっぱり面白い。そして今回は練無の憧れの先輩が登場することで人物関係が微動。紫子さん頑張れ!今回も練無くんが中心にいるので楽しめた(広義ではいつもだけど)。複雑な趣向の一端が見え隠れ。そして事件と並行して、もしくは関連して分かる、ある事実。あの人の独白に私も背筋が寒くなりました。

魔剣天翔まけんてんしょう   読了日:2001年02月19日