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朽ちる散る落ちる (講談社文庫)

朽ちる散る落ちる (講談社文庫)

地下密室と宇宙密室、驚天動地の森ミステリィ! 土井超音波研究所の地下に隠された謎の施設。絶対に出入り不可能な地下密室で奇妙な状態の死体が発見された。一方、数学者・小田原の示唆により紅子は周防教授に会う。彼は、地球に帰還した有人衛星の乗組員全員が殺されていたと語った。空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室の秘密を暴くVシリーズ第9作。


Vシリーズ9作目。『100人の森博嗣』に書かれていた事ですが、森作品では1つの作品全部が以後の作品の布石になるためだけに存在するという事がある。その関係が、2作前の『六人の超音波科学者』とこの作品である。舞台が同じミステリというのも面白いですね。見えていた真相のもう一つ先にある真実というのはミステリの醍醐味。「あの事件は発端に過ぎなかった!」という煽りはミステリ心(どんな心だ?)を刺激されます。ただ、同じ煽りでも↑のあらすじの文章にある「宇宙密室」というのはどうなんでしょう?有人衛星はねぇ…。ちょっとお話が違うんじゃなくて?って感じ。けど「宇宙密室」が宇宙での訓練をする巨大実験装置の密室の事だったら、特に文句はないんです。略せば「宇宙密室」だし(笑)言葉の魔術…。ただ、実は今回もトリックというか全体の状況が理解できず…。Vシリーズって大掛かりな仕掛けパターン多いですよね。『月は幽咽の〜』『捩れ屋敷〜』も状況設定が壮大すぎてイメージできなかった。話も壮大ですよね。エンジェル・マヌーヴァや今回の話など、大きすぎる話に私の想像力もオーバーヒート気味。
遅ればせながら恒例の共通点チェック。S&Mシリーズの9作目『数奇にして模型』との共通点としては密室殺人の状況が似ている、と思う。あとは模型誘拐劇(萌絵と未遂のへっ君)という要素も似ているかな。ちょっと強引かもしれませんが。
全体の感想は、つながっているのに、つながってないって感じです。この話は『地球儀のスライス』の中の「気さくなお人形、19歳」と話がつながっている。けれど、今回の話がクライマックスの10巻目につながるのかと思いきや、つながらない。この大きな話が単発の出来事で終わっている。国際的な話は次回への伏線かと思ったけど。今回のラストシーンは好き。スパイ映画の1シーンみたいに騙されてドキドキ。さて、あと1巻。このシリーズはどう終結するのでしょうか(って、もう私は知ってますけどね…)

朽ちる散る落ちるくちるちるおちる   読了日:2002年05月13日