- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/07/15
- メディア: 文庫
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航海中の豪華客船で完全密室から人間が消失する! 世界一周中の豪華客船ヒミコ号に持ち込まれた天才画家・関根朔太の自画像を巡る陰謀。仕事のためその客船に乗り込んだ保呂草と紫子、無賃乗船した紅子と練無は、完全密室たる航海中の船内で男性客の奇妙な消失事件に遭遇する。交錯する謎、ロマンティックな罠、スリリングに深まるVシリーズ長編第6作!
最初に謝らせて下さい。森博嗣さんゴメンなさい! この本をつまらないと一瞬でも思ってしまった事を謝ります。評価は初読時の6点ですが、シリーズが完結して再読した今ならもっと高いかも。その理由は恒例のシリーズ対応チェックで…。6冊目となる今回はS&Mシリーズでは『幻惑の死と使途』になります。「幻惑の〜」はマジシャンの話で、こちらは手品のように物を奪う怪盗の話。しかし類似点が多数。これに気づいたら言わずにはいられません。ネタバレなので伏字を多用して言及します。まずはネタバレじゃないけれど、人間消失。これは『幻惑〜』でも、この本でもミステリの核を成す事件。トリックが問題となる。そして何より二重生活! 『幻惑〜』では有里匠幻が、そして今回は…。これは言えない。これに気づいた時とても興奮しました。そして森博嗣に恐れ入りました。なるほど、部分では評価が低くても全体として見渡した時、現れる構図は本当だったのか、と感服。
単品(Vシリーズのみ)としても読み返すと面白い。新刊で4カ月おきに読んでいると忘れてしまった事を忘れずに読めるのがいい。ブランクがあると「前の事件」とか言われても「はて?」と首を傾げてしまうが、続けて読むと人物関係や事件関係などを覚えていて楽しみやすい。初読時にはハッキリ言って、エンジェル・マヌーバや関根朔太・ボナパルト氏など、どうでもよかったのですが、今回は人物関係図が頭にしっかり出来ていたので楽しめた。最終章は、その事を覚えていると感動(?)出来る。壮大なドラマがそこに浮かび上がるのだ。いい事するじゃん、あの人も。事件発生がとても遅く、初めは冗長な印象を受けたが無駄なものは一切配置されていない、伏線の嵐。恋愛要素の多い作品だと、私も思っていたけれど実はかなりのミステリ(ミステリというか驚きのトリック満載と言った所)。主役級4人の会話も、ますます楽しい。裏山シイタケ大好き! シーチキンとの合わせ技も最高。もちろん緊張感を含んだ会話も好きですよ…。微妙な関係にドキドキしてます。