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学ばない探偵たちの学園 (光文社文庫)

学ばない探偵たちの学園 (光文社文庫)

呑気な雰囲気の私立鯉ヶ窪学園。転校生の赤坂通は非公認サークル・探偵部に入部させられた。彼らの目前で起きた密室殺人。被害者は、芸能クラスのアイドル目当てで侵入した盗撮カメラマン。事件後には、妙な名前の刑事コンビが現れ、美術教師が勝手な推理を披露し、音楽教師が謎の言葉を残すやら…。我らが探偵部と顧問教師は犯人にたどり着くのか。


転校生である主人公・赤坂通くんが「探偵(小説研究)部」に入部する冒頭から終盤までハイスピード&ノンストップの学園ミステリ。全260ページの作品の中で保健室で男性の刺殺体が発見された事件1日目から、続いて2,3日目とそれぞれに遺体が発見される怒涛の展開。持ち味のスピード感を削ぐような死者への感傷や文学的要素は一切排除した小気味好いミステリになっている。
本書も烏賊川市シリーズと誉める点はほぼ同じ。ミステリをユーモア風味に味付けしながらも飽くまで基本に忠実な手法。そしてドタバタ劇の中に伏線やヒントをさり気なく詰め込んでいるのも同じ。もっと言えば登場人物たちの精神年齢も同じ(笑) 烏賊川市の皆さんは20代以上のいい大人なんですけどね…(苦笑)
ミステリとしては「密室」「物理トリック」にこだわった作品だろうか? 第1の事件ではちょっとトリッキーなトリックが事件の真相になっている(平面図と睨めっこをしても分からないだろうトリック)。トリックを見破った上での犯人の導き方は好きだけど、とても現実的とは言えないし偶然の要素もかなり強い。アレをアレする時などは、相当目立つはずなのだが…。犯人にとっては(たった3日間とは言え)犯行が露見しなかったのは僥倖としか言えないぐらいに突発的な犯行。しかしその無茶を成立させる為の伏線(言い訳?)は前半にしっかりと張られているし、作品の勢いによくマッチした大胆なトリックとも言える。反対に第2の事件のトリックは地味も地味。深読みすれば犯人の焦りの表れ、とも言えるだろうが…。
本シリーズも烏賊川市シリーズと同じく「ツイン探偵システム」なのだろうか。ノンシリーズまたはシリーズ第1作は誰が探偵役を務めるかを知らない楽しさがあるが、本書ではメイン(第1事件)担当とサブ(第2事件)担当の探偵役が2人いた。ただし「ツイン探偵システム」には折角の一連の事件の流れを分断してしまう短所があった。結局、第2の事件の推理が正解とされた時は、あの場面は真相披露だったのか、と別の意味で驚いてしまった。第2事件はやはり地味だ。
本書で一番笑ったのはノベルス版7ページの『多すぎる登場人物の一覧表(暗記不要)』。よくある主要登場人物じゃなくて、全登場人物が紹介されてるかも。そして一番感心したのは、密室における犯人行動分類論。大雑把だけど一理ある犯人推理方法。特に古典ミステリを読書する場合は念頭に置いても損はない分類法だろう。ただし直後に作中で否定されているのが皮肉である(笑)

学ばない探偵たちの楽園まなばないたんていたちのらくえん   読了日:2009年03月06日