《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

夢の中の女に殺される! TV局内の殺人! 20年前に死んだ恋人の夢に怯えていたN放送プロデューサが殺害された。犯行時響いた炸裂音は一つ、だが遺体には二つの弾痕。番組出演のためテレビ局にいた小鳥遊練無は、事件の核心に位置するアイドルの少女と行方不明に……。繊細な心の揺らぎと、瀬在丸紅子の論理的な推理が際立つ、Vシリーズ第4作!


恒例になりましたVシリーズと対応しているS&Mシリーズチェック(逆かな?)。4巻目という事は対応しているS&Mシリーズは『詩的私的ジャック』になります。4巻目は芸能人シリーズって所です。ロック歌手に続いて、今回はアイドルです。
なぜかVシリーズの中でも好きな作品。トリックが素晴らしいとか犯人が意外だったとかではないのですが、好きなんです。多分、設定が好きなんだと自己分析。練無くん御一行の4人がTVのクイズ番組出演のために東京に上京して、TV局の中を舞台にアイドルとの遭遇あり、殺人事件ありと何でもありの展開が面白いのだろう。そして今回、物語の中心にいると言っても過言ではないのが、練無くん。シリーズを追うごとに彼が好きになってます。これはもうキャラクタ小説として読んでいる証ですね。今回は特に話題の渦中にいますからね。紅子さんが言う所の「複雑な人格」が面白い。ビックリ箱のような存在。あとはタイトルに起因しているでしょう。イカしてます。バンド天国です。日本語で2つ、更には英語でも読める。森さんはタイトルから物語を構成しただろう。彼にはそれが出来るから、すごい。
ミステリとして読めばトリックは地味な印象。犯人側からの独白、死んだはずの恋人や幽霊など語られていますけれど、あらすじの「意外な犯人」という事はなかった。謎解きが淡々と進んで、そうなんだ、と思っていたら終わった。消去法で犯人を指摘する解決の手法は理詰めだけれども、新鮮な驚きは無いですね。むしろ解決後の会話の方が吹き出すほど驚いた。森博嗣ってこういう小ネタ好きですよね、そして騙される私。多分、消化不良なのは動機や犯人の思考に起因している。これはVシリーズを通じて言える事。明確な動機や唯一の犯人が無い(いない)と納得しない読者(私)が反発するのもよく分かる。そして、それが不自然だという森博嗣の言葉も分かるのだけれど、紅子さんは人を小馬鹿にしてる雰囲気が感じられて、ちょっと癪に障ってます。人の性格や能力を見極める際に限定しすぎてる気がする。もっと人の意外性や突飛な部分を考慮にいれればいいのに…器量が狭く感じます。いまいち魅力的に映らないのです(誰も困らないだろうけど)。

夢・出逢い・魔性ゆめ・であい・ましょう   読了日:2000年12月23日