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つきのふね (角川文庫)

つきのふね (角川文庫)

あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。


主人公は中学2年生のさくら。親友の梨利と、梨利を追い掛け回す勝田くんと毎日をそれなりに楽しく送っていたはずだった。が、48日前のある事件をきっかけに梨利と気まずくなってから学校も楽しくない。そうして、さくらは、その48日前に出会った不思議な年上の男性・智さんの部屋に入り浸っていくが…。上手く要約出来てませんが登場人物はこんな所です。


非常に神経の張り巡らされた作品である。構成力の妙。一つの文章で多くの事が伝わる描写力と、物語の奥にある緊張感を途切れさせない構成。えっ、そうだったの!とミステリを読んでるが如くの驚きの連続でした。さすが森絵都さん!読んでいると主人公と同じ感覚で、フッと大事な事に気付かされる。心理描写・人物の配置・小物の使い方も上手い。「つきのふね」など心底、感心してしまった。最初は中学生特有の自意識過剰な考え方に当初げんなりしていたんですが、その愚直なまでの考え方が終盤とても好ましく思えてくるから不思議。特に勝田くんなんて怖い習性を置いとけば、愛すべきキャラクタです。ただラストの展開は少しやり過ぎかな、と思った。あぁいう極限の状況じゃないと智さんが決断したという事実が目立たないのだろうけど、物語が大きくなり過ぎた印象です。あと単行本では桜沢エリカさんの描いた表紙がセーラー服じゃないことが不満ですね。
冒頭で「1999年7の月に〜」というノストラダムスの大予言の話が出てきますが、私もそんなに長くは生きられないだろうと漠然とながら思ったものであります(笑)本書は98年の7月の発行。もし滅びてたら1年の命。地球はめでたく滅びなかったのですが、今読む人(特に99年に物心がついていなかった若い人)にはノストラダムスの予言なぞはただの戯言でしょうね…。

つきのふね   読了日:2004年12月25日