- 作者: 森絵都
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: 文庫
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中学2年生の陽子と1つ歳下の弟リン。両親が仕事で忙しく、いつも2人で自己流の遊びを生み出してきた。新しく見つけたとっておきの遊びは、真夜中に近所の家に忍び込んで屋根にのぼること。リンと同じ陸上部の七瀬さんも加わり、ある夜3人で屋根にいたところ、クラスのいじめられっ子、キオスクにその様子を見られてしまう…。第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞の青春物語。
語られる出来事は何でもない事なのに、なんでこんなに面白いのだろう。別段大きな事件も起きない、けれどページをめくる手が止まらない。いいな、兄弟。ちょうど同じ日に読んだ伊藤たかみさんの『ミカ!』にも兄弟が出てきたけど、どちらもよく出来た兄弟だ。鍵っ子の二人(陽子とリン(本名なんだろうか?)の、直接は語られない、孤独が寂しい。孤独な者同士、共通の痛みを共有している。共有しなければ、世の中が面白くなければ潰されてしまうかもしれない二人。料理の品目で相手の機嫌を見抜いてしまう二人。陰と陽のような二人だけど根本は同じ。
構成も面白かった。推理小説みたいに真相を見出すのは実にワクワクした。なるほど、そういう考え方も出来るのか。何気なく、物事を一面的な見方で見てはいけないとか、偏見で物事を考えてはいけないとかの教訓が含まれている気がする。本当はもう一つイベントがあるんだけど、言わずもがなの事だから言わないのがいい。こうやって希望を持って終わるのが児童書のスタイルのいい所。読み終わって胸がいっぱいになって、この瞬間は優しくなろう、と決意する(嫌な事が起きるまでは…)。ただ、終わる直前が駆け足だったかな? 妙にキレイにまとめようとしているような気もする。タイトルの意味も唐突だったな。