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リズム (角川文庫)

リズム (角川文庫)

さゆきは中学1年生。近所に住むいとこの真ちゃんが、小さい頃から大好きだった。真ちゃんは高校には行かず、バイトをしながらロックバンドの活動に打ち込んでいる。金髪頭に眉をひそめる人もいるけれど、さゆきにとっては昔も今も変わらぬ存在だ。ある日さゆきは、真ちゃんの両親が離婚するかもしれないという話を耳にしてしまい…。第31回講談社児童文学新人賞、第2回椋鳩十児童文学賞を受賞した、著者のデビュー作。


森絵都さんのデビュー作。20歳で書いたとは思えないほど上手い。もう13年以上前の本である。大事な事を、さり気なくしっかりと伝える文章は今の森絵都さんと同じ。「リズム」というタイトルに全てが込められている。バンドマンの真ちゃんらしい言葉である。この本で救われた人って、かなりいるんだろうな。児童書の鑑。
森絵都さんの作品は落ち込んだ時の描写が上手いと思う。多感な時期の心の揺れを見事に表している。徹底的に上手くいかない時を描いて、それでも歩み出す主人公の強さが眩しい。今回はカレーと肉じゃがの描写が好きです。そして登場人物がいい。真ちゃんはもちろんである。彼の心根の優しさは物語の随所に表れている。それを、さらっと書いてしまう森絵都さんが好きだ。そして担任の三木先生。教師の鑑である。植物を育てられる人に悪い人はいない。姉は少し大人び過ぎているが、長女とはこういうものだとも思う。姉妹の性格の違いの描写も見事。
この本は続編『ゴールド・フィッシュ』がある。今度はこの作品での姉と同じ中学3年になった、さゆきたちの話。待ち受ける壁を彼らはどう乗り越えるのだろうか。

リズム   読了日:2005年01月10日