- 作者: 森絵都,影山徹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2006/05/26
- メディア: 文庫
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高さ10メートルの飛込み台から時速60キロでダイブして、わずか1.4秒の空中演技の正確さと美しさを競う飛込み競技。その一瞬に魅了された少年たちの通う弱小ダイビングクラブ存続の条件は、なんとオリンピック出場だった!女コーチのやり方に戸惑い反発しながらも、今、平凡な少年のすべてをかけた、青春の熱い戦いが始まる―。大人たちのおしつけを越えて、自分らしくあるために、飛べ。
森絵都さんにハズレなし!と断言できる作品。どんなジャンルでも少年・少女を書かせたら右に出るものはいないでしょう。冒頭部からの温かな雰囲気。まさに屋内プールの中のあのモワ〜んとした心地よい温かさ。全4巻の作品なのでまだまだ始まりの終わりという感じで1作品で感想を書くと物足りなさを感じますが、今後の展開・期待は高まります。森さんキャラ設定も文章も構成も巧いですね。兄弟の反応には思わず感心してしまいましたし、「地球をもう1周!」は素晴らしい名言です。知季の才能の持っていき方もミステリ的種明かしで興味を引き、頷けます。しかし要一くんはもう少しスマートにならないですかね、知季の兄のようで俺様な要一…。
後半では物語の主人公は飛沫に移る。前半はアジア強化合宿の選考会の模様・後半は飛沫の苦悩が描かれています。前半は飛込みの大会の模様なので、仕方ないことですがルールなどの説明が多め。しかし試合の様子に鳥肌が立ちました。文章だけで自然に身体が反応する、森絵都さんの筆力はすごい!
今回は視点が飛沫なので知季の成長の様子を客観的に見ることができます。そして後半は飛沫が飛込みへの情熱を持てるかの苦悩を描いています。飛沫の夏陽子との契約内容もついに明らかにな。しかし飛沫を視点で、要一というしっかり者と一緒に知季を描くと、知季が賢いのか天然なのか分からなくなります…。そして主人公であるはずの知季は未だ何かを超越せずにウジウジしてるような…。