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モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

大介と結婚した掃除人キリコは、短期派遣の清掃の仕事を始めた。ミニスカートにニーハイブーツの掃除のプロは、オフィスに溜まった人間関係の澱も死角も見逃さず、電器メーカーの子会社に編プロ、モデル事務所の謎を鮮やかに解き明かす。夫・大介が探偵役となる最後の謎は、キリコ自身。読後感温かなミステリ。


シリーズ名をまたもや勝手に命名。途中まで見落としていたけど、タイトルにもある通り、確かにモップの精=キリコは深夜に現れているんですね(最初の3編)。深夜に清掃するキリコは普通の人には存在を知られていない存在、というのを上手く使った短篇集です。この本の主人公・清掃人キリコの清掃は一味違う。大きく分けて3つの掃除をしている。1つ目はゴミの発見と掃除・2つ目は事件の発見と掃除・3つ目は人の悩みの相談と掃除、である。3つ目が物語の最初から最後まで通して書かれているので、2つ目の重要視するミステリファンには物足りないかも。けれど、3つ目の悩みと解決の描写が上手く、キリコの存在も際立っているのでカタルシスがある。最後の1編は前回に引き続き驚かされた。この本は前作の内容がそのまま踏襲されている。この本からだと人物関係がよく分からないので、是非とも前作から。そうすると最初から嬉しい発見が出来たりするのだ。

  • 「悪い芽」…自分が悪い訳ではないはずなのに、いつからか会社や家庭の中で居場所がなくなった中年課長。ある日キリコと口論になったことで…。謎を解いたその先の文章が面白い。十人十色の考え方というか、考え方の個人差はどこにでもあるという事か。きっと彼はいい上司なれるんだろう、という予感がいい。
  • 「鍵のない扉」…小さな会社を切り盛りしてきた女社長が自宅で死体となって発見される。彼女の不在で会社は混乱し、さらに…。キリコだから知りえた情報があり、そこから物語が展開していく、というのが面白い。更には、深夜に働く清掃人のキリコと会う特殊な状況の設定も面白い。そこに注目するのも良いかも。
  • 「オーバー・ザ・レインボウ」…同じ会社の男性モデルに二股を掛けられて失意のどん底の女性モデルに不可解な事件が次々起こる…。謎解きや犯行動機などは分かりにくいけれど、犯人が「うまくいけば…」と思っていた心の闇の方がとても怖い。読んでいて鳥肌が立った。自己中心・利己主義の極みである。
  • 「きみに会いたいと思うこと」…突然、出ていったキリコ。彼女の心の中に何があったのか。残された者たちは彼女の空白の大きさに戸惑う…。前作で完結したはずの話が、暗雲立ち込めての再登場。登場人物に好感を持っていれば持っているほど辛い話。巧みな話の持っていき方に、読者がヘンデルとグレーテルのように誘導される…。富士山の話は知っていたので、引っかからなかったけど。今回はキリコ側からの愛情が示されているのがファンには嬉しい所。良かったね、××!

モップの精は深夜に現れるモップのせいはしんやにあらわれる   読了日:2005年07月15日