- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/03/09
- メディア: 文庫
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不審な火事が原因で意識不明となった歌舞伎役者の妻・美咲。その背後には二人の俳優の確執と、秘められた愛憎劇が。「摂州合邦辻」に託された、ある思いとは? 大学で近世日本文学を専攻、以前は大学で講師も務めていた探偵の今泉。役者の小菊とともに梨園でおきた事件の謎を鮮やかに解く。梨園の名探偵・今泉文吾シリーズ。
私の好きな今泉文吾シリーズ。これまた、良かった。作者の愛する歌舞伎のように、無駄なく気品を漂わせ展開する物語(私は歌舞伎見たことありませんが)。本の最後のインタビューの作者の言葉ではありませんが、長くないからいい。全てを語らない美しさ。もちろんミステリ的には解決しますが。物語の目的が、さぁ驚け!という犯人当てではなく、ストンと腑に落ちる、パズルのピースがはまる、そんな心地よさを、いつも感じます。
このシリーズは登場人物が少ない中、どうパズルを組み立てるのか、というのが面白いところなんですが、今回は読んでいる最中に分かってしまいましたね。ピースが少ないので、どちらの方向にはめるか、ということを考えれば分かる。ミスディレクションもちょっと弱いかな。こちらがダメならあちらだろうと思ってしまうでしょう。そして今回は核となる歌舞伎の題材も露骨かな、と。「摂州合邦辻」は特に。聞いたこともありませんでしたが「摂州合邦辻」はすごい話ですね。このシリーズを読むといつも思うのですが、歌舞伎の様々な愛憎・行動は、もしかしたら、日本人の感情は全て歌舞伎に内包されているかもしれない、とまで思えてきます。
実みたいな女性は嫌いですね。自分のしたい事・意志を曖昧にして人の所為にするか、したい事をする自分は、自分が勝手な行動をしている、と思い込む。被害者面しやがって!と思ってしまいました。