《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

憧れの日本で竹林の中にある草庵の一室を借りて探偵事務所を開業したトウキョー・サム。記念すべき依頼人は驚いたことに巨漢の相撲取り、福助、それに禅の修行僧という顔ぶれだった。相撲取り連続殺人事件、老僧消失事件とまたまた超ジャパネスクな難事件に挑む、かつてない究極の謎解きミステリー、再び。

物語の舞台は「前作」と同じく外国人が誤解してそうな「ニッポン」。その中では「ニッポン」には独自の思想や作法があって、アメリカからやって来たサムがその(間違った)文化に戸惑い、読者はそれを笑うのがお約束だったはず。しかし前作では陽気な雰囲気を醸し出していた「ニッポン」だったが、今回はなんだか暗い。前回が日の当たる縁側だとすれば、今回は土蔵、もしくは作中にも登場する寺だ。サム自身も日本かぶれの明るい外国人ではなく、陰気な修行者になってしまったし、ムードメーカーのエクボさんはほとんど登場しない。ミステリも狭義のミステリではなく広義のミステリ。色々とフェアではない。一方、物語の舞台は「ニッポン」から、どんどん狭くなって禅などの思想が主題になってしまった。両方とも残念な裏切りです。

  • 「巨人の国のガリヴァー」…サムに相撲部屋で死んだはずの力士の幽霊を見る、という相談が持ち込まれる。その裏には相撲協会の対立が見え隠れし、ついには死体が発見される…。展開はスピーディーで面白いが、謎解きの弱さと、この世界独特の心の動きが分からなかった。リキシとフクスケの登場でサムが小人にも巨人にもなる描写は楽しかったけど、もはやミステリーではない…?
  • 「実在の船」…サムに手渡された1冊の手記には寺での禅の修業に悩む外国人ウンスイ(雲水・禅の修行僧)の言葉が綴られていた。手記を読み終え、寺に向かったサムだが…。こ、この展開はちょっと…。観念的過ぎるというか、今まで読んだものは何だったの!?と憤りが湧いてくるというか…。小難しさだけが先行して、面白みが置いていかれてる。『垂里冴子のお見合いと推理』空美が名前だけ登場。

続・日本殺人事件ぞく・にほんさつじんじけん   読了日:2006年03月02日