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シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

シャングリ・ラ 下 (角川文庫)

加速する地球温暖化を阻止するため、都市を超高層建造物アトラスへ移して地上を森林化する東京。しかし、そこに生まれたのは理想郷ではなかった!CO2を削減するために、世界は炭素経済へ移行。炭素を吸収削減することで利益を生み出すようになった。一方で、森林化により東京は難民が続出。政府に対する不満が噴き出していた。少年院から戻った反政府ゲリラの総統・北条國子は、格差社会の打破のために立ち上がった。

ついに反政府ゲリラは政府に宣戦布告。國子はブーメランひとつで戦車部隊に立ち向かう。だが地上の森では政府とゲリラの戦争をあざ笑うかのように、想像を超えた進化が始まっていた。究極のエコロジー社会がもたらす脅威とは?國子たちは生き残れるのか?アトラス計画の真の目的とは?ゲリラ豪雨、石油価格の高騰、CO2の取引など、2004年に既に現在を予言し、SFを現代小説に転換した傑作長編。

   
長大な物語である。いったい読了まで何十日かかるのか、と心配していたのだけれど、その長さと厚さを感じたのは、実は後半の数章だけだった。この世界の基本的な設定が理解できた第一章の終わりから第十二、十三章辺りまでは本当にノンストップの面白さ。超巨大な人工物に象徴される圧倒的な世界観、一癖も二癖もある魅力的な登場人物たち、そして謎が謎を呼ぶ展開と構成。その3つが完全に一つになった物語は読むのを止められない。が、その後が長い。後半の数章は同じ事の繰り返し。「と思いきや××」「が、まだ××」の連続。今までは早送りのような映像の連続だったのに、最後にきてリピート再生を見ているような倦怠感が出てしまった。主要人物は死なず殺さず、名も無い脇役は軽く死ぬという展開にも嫌気が差した。掲載媒体が雑誌だから物語の謎やクライマックスを最終回に持ち込ませなければいけないのかもしれないが、その前の戦闘シーンだけのゴチャゴチャを要約して、最後の章だけ2,3倍の長さにして欲しかった。物語が派手に展開していくに従って、単調な印象しか残らない、最後はそんなアンバランスさだけが残った。
ただ、この世界の設定という点では文句なしに面白い。本当に圧倒的だ。経済オンチの私は今後「炭素経済」という経済理念が生まれてもおかしくないと本気で思った。環境と経済の統一は今後の実世界でも問題になるのでは…?
そして国内外の神話を上手く取り込んだ所に感心しました。メデューサを始めとした数々の名前を冠する物が、その後、神話を踏まえた活躍を見せる。単に神話をなぞらえるばかりではなく、神話を逆手に取った展開などアレンジも良かった。にしても草薙の扱いが最初から最後まで悪い気がした(結構、重要な役どころなのに…)。涼子も同じ。途中参加である違和感が最後まで拭えなかった。
初出がアニメ情報誌だからか、とても漫画的・アニメ的である(私が連想したのは「ザブングル(世界観)」と「ナウシカ(國子の設定)」)。しかし、それが悪いというのではない。漫画やアニメのようなカラッとした面白さや、これでもかと連続で起きる事件も大きな気持ちで受け入れられる。映像が頭の中にブワッと浮かび上がるのは、この作品の最大の長所。アトラスも森もドゥオモも國子の戦闘シーンも鮮明に想い描ける。読みながら寝てしまったら夢に出てきたほど(単純…)。作中の巨大建造物・アトラスのような圧倒的な創造物を是非、楽しんで。

シャングリ・ラ   読了日:2006年04月25日