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バガージマヌパナス わが島のはなし (文春文庫)

バガージマヌパナス わが島のはなし (文春文庫)

「ワジワジーッ(不愉快だわ)」ガジュマルの樹の下で19歳の綾乃は呟く。神様のお告げで、ユタ(巫女)になれと命ぜられたのだ。困った彼女は86歳の大親友オージャーガンマーに相談するが…。あふれる方言、三線の音、沖縄の豊かな伝承を舞台に、儚い物語の幕が上がる。第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。


読み始めてから読了までが長かった作品。確か2年ぐらい前に50ページほど読みそのまま放置していた。決して面白くないからではなく、沖縄の方言が読みにくくて断念してしまったのです。しかし昨今の沖縄ブームのせいかTVで沖縄の映像を見るうちに思い出し読書再開した、という経緯がある本です。
上で断念した理由に「面白くないからではなく」と書きましたが、最初の70ページぐらいまではいささか退屈ではあります(笑)ずっと主人公・綾乃が大謝家の二女という意味のオージャーガンマー(86歳)と過ごすのんびりとした日常が書かれているので。しかも、私には粗野で共感しにくい日常が。しかし、綾乃がユタ(巫女)になるお告げを神様から受けてからはもう痛快です。 ラストは(全体の話の流れも)予想できるものでした。前段階に比べると急な展開でしたが、このラストが必要なんでしょうね。冒頭の日常の光景があってこその展開です。
沖縄という風土が育んだ信仰が私には面白く感じられました。本土では色眼鏡で見てしまう神様や霊・信仰というものを日常と隣り合わせに生きている姿が新鮮で素敵でした。そして琉球言葉ってのは不思議ですね。なんとなく共通語が変化していった形跡は文字上で見受けられますが、それが何単語も続くともはや理解不可能。でも不思議な魅力・味を感じる。言葉が沖縄の気質そのものを表しているようで。この言葉があるからこそ、この不思議な小説が生まれたのでしょう。沖縄の魅力満載の小説でした。

バガージマヌパナス   読了日:2004年09月08日