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煙の殺意 (創元推理文庫)

煙の殺意 (創元推理文庫)

出所して間もない手許不如意のひだるさに、島津亮彦は身なりを繕って花見客さざめく多武の山公園へ。知人に出会い、誘われるまま鍋をつついたその翌日…愛すべき傑作「紳士の園」や、殺人現場に赴いた風変わりな捜査官が織り成す推理の妙「煙の殺意」など八編を収録。興趣の尽きないストーリーと騙される快感が堪えられない名作品集。


亜愛一郎シリーズの直後に読んだ作品。しかし本格ミステリの要素が凝縮された亜愛一郎シリーズとは一線を隔した作品集。特殊な状況下での事件・殺人が多いように思えます。一筋縄ではいかない事件ばかりで、例えば殺人を起こすにしても、こんな動機があるのかと驚く短編が多かった。そういった意味では人はなぜ、人を殺そうとするのか、という事を突き詰めた作品かもしれません。どの作品も風変わりな人が登場するというのは共通点でしょうか。どの作品も25年近く経っているのに今も面白いのは亜愛一郎シリーズと変わらない泡坂作品の特徴です。

  • 「赤の追想」…久しぶりに会った友達は私の姿・格好から、身辺に起きた事柄を次々と言い当てる。起きた事を話してみると…。恋愛の話であり、悲しい話です。他人の事より自分の事に疎い、というのは名探偵の特徴の一つですかね。
  • 「椛山訪雪図」…盗まれたはずの掛軸は盗まれていなかった!?犯人は一体何を盗んだのか…? 清冽な雰囲気の中、掛軸が頭に浮かび隠されたものが見事に表れる、とても楽しい一編。もしそんな掛軸が存在するのなら是非、見てい。
  • 「紳士の園」…あらすじ(↑)参照。ショートショートの様な展開を見せながらも推理小説。風が吹いたら桶屋が儲かる、ではありませんが、花見をしている客が妙に冷静だったら? 作中に出てくるスワン鍋は絶対食べたくない一品。
  • 「閏の花嫁」…ある日、突然いなくなった女友達は某国の王女になろうとしていた…!? ほぼ往復書簡で綴られる作品。恋愛の勝者と敗者の鞘当てかと思ったら思わぬ展開。ブラックな作品でした。スワン鍋よりフォアグラが嫌いだ。
  • 「煙の殺意」…大きな事件が大好きでTVにかじりつく望月と遺体に顔を上気させる斧。二人は捜査官で…。変人が二人集まって文殊の知恵。殺人の動機としては最低。戦場での精神の高揚と同じ原理なんでしょうか。沈鬱になる作品。
  • 「狐の面」…30年近く前に坑夫の妻が狐に憑かれたと噂話があった。それに対して寺の住職が考えたのは…。色々な奇跡の種明かしのオンパレード。奇術師でもある著者の本領発揮。新興宗教の奇跡もこの手の物が多いのかな?
  • 「歯と胴」…師事する教授の奥さんは若くてキレイ。やがて二人の関係は…。殺す対象が予想と違って驚いた。冷静に残酷な作業をしている様子が怖い。被害者は加害者の元に再び戻る。伏線の効いた皮肉な結末は面白かった。
  • 「開橋式次第」…大家族の署長一家が橋の完成式典に参加する途中、時効が成立した15年前と同じバラバラ殺人事件を発見する…。面白い着眼点。読者の先入観を見事に裏切る。解決する人物も意外で面白い。人の区別が難しいけれど。

煙の殺意けむりのさつい   読了日:2002年11月07日