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亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)

亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)

集中豪雨がもたらした土砂崩れで、列車は駅と駅とのド真中で完全にストップ。満員の乗客たちは復旧を待つことにしたが、先を急ぐ三人の男たちは徒歩での山越えを決意した。またたく間に道にまよい、野宿をする破目になったが、翌日も脱出できなかった。途方にくれる一同、その時幸いにもポツンと遠くに人家の灯が見えた。一夜の宿を借りたのはよかったが、これが災難の始まり。前の晩、たしかに隣りに見えた合掌造りの大きな家が、翌朝には跡形もなく消え失せていた。この地方の伝説どおりの怪事件が勃発した!名探偵亜愛一郎が活躍する傑作事件簿第2弾!連作短編集。


亜愛一郎シリーズ第2弾。2作目になって、お決まりパターンというのがしっかり確立されている。三角顔の洋装の老婦人・亜愛一郎の登場の仕方・会話の妙、全部毎回少しずつ違ってそれを一編一編楽しむのが作品の読み方のツボだと思います。短編なので基本的にトリック重視。前提条件をしっかり読んでおくのが短編ミステリとしての正しい読み方ですかね。
文庫版初版の解説は田中芳樹氏による史上最低の解説。2版からは改訂されているらしいですが、私は被害者に…。何が「明かしても魅力が損なわれることはない」だ!! ミステリ的には問題なくても、シリーズ的には大損害だ!! これを採用した編集者・出版社も問題だが、書いたヤツが一番悪い! ネタバレはミステリの御法度だということは作家として分かってるだろうに…。初版の方、くれぐれも読まない方がいいですよー。

  • 「藁の猫」…自殺した絵の巨匠が遺した不自然な絵画たち。そこへ浮かび上がる巨匠と内縁の妻と女優の関係は…。ねじ曲げられた絵はねじ曲げられた精神。画家という特殊な職業のねじ曲がった心。シリアスの中のコミカルがいい。
  • 「砂蛾家の消失」…土砂崩れで電車が立ち往生し歩いて山越えを試みるが、道に迷った亜。たどり着いた家で寝泊りするが、眠る前に窓から見た隣の家が目が覚めると消失していた…。どこかで見たことあるようなトリック。面白いけれど。
  • 珠洲子の装い」…飛行機事故で死んだ後、爆発的人気を得た女優・歌手の加茂珠洲子。死後、開催された加茂珠洲子大賞に登場した微妙に似ている女性が…。ちょっと時代は感じさせますが、印象深い作品。現実味は薄いかな?
  • 「意外な遺骸」…木の葉に包まれた焼死体が見つかり…。内容は怖いですが、全編に遊び心がある作品。森博嗣さんの「虚空の逆マトリクス」の中にも同じような作品が(内容は違いますが)。窮地に陥った人間がとる行動に、妙にリアル。
  • 「ねじれた帽子」…高速のドライブインで遭遇した、帽子を飛ばされても追いかけない男の謎。帽子をたどっていくうちに亜が見出した真相とは…?「風が吹いたら桶屋がもうかる」みたいな推理方法。これぞミステリ、という感じで好き。
  • 「争う四巨頭」…引退した各界の重鎮たちが夜な夜な開く会合。その場にあったのは友の死亡記事・硬貨・孫子の本・お御籤・囲碁。これらの関連は…? このシリーズらしい作品かな。四巨頭会談という単語を思い出した私。
  • 「三郎町路上」…客がタクシーを降りた直後、車内から、その客が首切り死体となって発見される…。最もトリック重視の作品。動機や背景などは後付けっぽい。車内の亜と女性博士の会話すごく面白いし上手いです。妙な暗示。
  • 「病人に刃物」…病院の屋上で元・患者と彼を助けに入った男が転倒。すると元・患者の腹には刃物で刺されたような傷が…。思ってた展開からもう一展開。驚いた。人間は無意識に最悪の展開を避ける、という事を改めて確認。

亜愛一郎の転倒ああいいちろうのてんとう   読了日:2002年11月03日