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亜愛一郎の逃亡 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

亜愛一郎の逃亡 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

長身で二枚目、行動は些か心許ないが、虫や雲を撮ることにかけては右に出る者のない実力派カメラマン、亜愛一郎。だが、彼の行くところ、必ず怪事件が勃発する。そして愛一郎が白眼をむいたときは、決まって事の真相を言い当てるのだ。快調の連作第3弾。愛一郎の行く先に必ず現れる不思議な人物の正体も、遂に解き明かされる時がきた。愛すべき名探偵、亜愛一郎最後の事件簿。


亜愛一郎シリーズ最後の作品。もっとシリーズ物の楽しみを味わいたかったのに終わってしまいました…。亜愛一郎の登場の仕方・亜に見惚れる女性・間抜けな会話・三角顔の老婦人と犬・真相を見抜いた亜の白目、全てが愛すべき名探偵シリーズ。前の2作品でも書きましたが、美形なのにそれを鼻にかけずに、推理力もある一定の範囲の人にしか理解されていない、そういう雰囲気が大好きです。大したことでもないのに、名探偵がしゃしゃり出るパターンよりも、私好み。最後の短篇も、いつも通り力むことなく進のに、最後の最後に急展開したのにはビックリ。解説は「我孫子武丸」さん。今回は何事もなくいい解説です。せめて、2作目と3作目の解説が逆だったらなぁ…。驚きを味わうのがミステリの醍醐味なのに。

  • 「赤島砂上」…西日本裸体主義者(ヌーディスト)クラブの会合である島に集まった30人。そこへ闖入する男。彼は何の目的で不法侵入を試みたのか…? 人は物をどうやって隠すのかがある、という問題の回答。映像化はムリな作品(笑)
  • 「球形の楽園」…自ら大金をかけて造ったシェルターの中に死んでいた男。彼には致命傷でない傷が残されてたが…。これは想像より一段凄かった。これだろうな、と思ってたら真相は全然違ってビックリ。設定を活かしたトリックです。
  • 「歯痛の思い出」…巨大な歯科病院で亜が見た男。彼はずっと一連の動作をしているようだが…。完全な安楽椅子型推理。離れていても事件が見える。真相が見えてくる様子が面白い。亜がタバコを吸うのは意外。噎せそうなのに。
  • 「双頭の蛸」…双頭の蛸が現れるという湖で銃による殺人が起こる…。蛸云々は話を長くするためのものかと邪推。トリックは詳しい事は分かりませんが、印象としては無理だと思う…。全体的に気持ちのいい作品ではないかも。
  • 「飯鉢山山腹」…飯鉢山が崖崩れを起こして、車が巻き込まれたらしい。しかし被害者には鈍器で殴られた跡が。その直前には1台の車が普通に通過したのだが…。アリバイ工作の短篇。段々、前置きが長くなってる印象です。
  • 「赤の讃歌」…赤を基調とした作品で有名になった画家。しかし女性美術評論家は、絵は年々ダメになったと感じていた…。言葉の端々から情報を統合する亜の推理がいい。中里ララ・香嵐らん子など準レギュラーの存在も面白い。
  • 「火事酒屋」…異常に火事好きの夫は、消防車より早く現場に向かう。その夫が第一発見者の現場で他殺死体が発見されて…。いい作品。長編にも耐えうるトリックではないかと思います。あぁ、いよいよ次で最後の短篇…(泣)
  • 「亜愛一郎の逃亡」…初の書名タイトル。記録的降雪の日にさびれたホテルに泊まりに来た亜たち。翌日、亜らはホテルから消失する…! 前代未聞の主人公の密閉空間からの逃亡。そして明かされる真実。何度も言うようですけど、2巻目の解説無しでこの結末を読みたかったな。「ある結末につまづける亜」、お見事!!

亜愛一郎の逃亡ああいいちろうのとうぼう   読了日:2002年11月06日