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楽園のつくりかた (角川文庫)

楽園のつくりかた (角川文庫)

エリート中学生の優は、突如ド田舎の学校に転校することになった。一杯勉強して、東大に入り、有名企業に就職する、という将来プランがぐちゃぐちゃだ。しかも、同級生はたったの3人。1.バカ丸出しのサル男。2.いつもマスクの根暗女。3.アイドル並みの美少女(?)。嗚呼、ここは地獄か、楽園か?これぞ直球ど真ん中青春小説!今もっとも注目を集める作家の代表作、待望の文庫化。


笹生陽子作品2作目。これも面白かった。序盤と終盤の展開にはすごく驚いた。まるでトリックが暴かれたミステリのように最初から読み返してしまった。ミステリだとしたらアンフェアだと思うけれども、この作品はミステリではないので減点無し。ただ主人公のキャラクタと独白の文章、展開、更には結末が「ぼくは悪党になりたい」とあまり変わらない印象。周りが見えているようで見えていない、自分は上手く立ち回っているようで、実は不器用という構造がそっくり。利己的な主人公の考え方に既視感がありすぎて楽しめなかった部分もあった。両方とも「あんたの考え方は間違ってる!」と大声で言ってやりたいほど思春期真っ盛りの一方通行の思考なのだ。
ただ終盤の展開で一気に見方が変わった。一気に主人公がいとおしくなる。彼の闘いが見えるからだ。そして周囲の人の優しさが身に沁みる。特に母親は強く偉いな、と頭が下がる。誰でもが少なからずの悩みや問題を抱えて生きているんだな、と思わされる一冊。彼はこれから偏差値至上主義を止めるのか、見てみたい。そういえば、都会から田舎への転校生というのは普通、羨望の目で見られるのが定石だけれども、本書では純粋な田舎育ちは一人だけという設定なので、その展開がない。逆に、主人公が独りで田舎を軽蔑しているという構造が主人公の一人相撲を如実に表しているのかな、と思う。

楽園のつくりかたらくえんのつくりかた   読了日:2005年03月28日