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人形館の殺人 (講談社文庫)

人形館の殺人 (講談社文庫)

亡父が残した京都の邸「人形館」に飛龍想一が移り住んだその時から、驚倒のドラマが開始した。邸には父の遺産というべき妖しい人形たちが陣取り、近所では通り魔殺人が続発する。やがて想一自身にも姿なき殺人者がしのび寄る。名探偵島田潔と謎の建築家中村青司との組合せが生む館シリーズ最大の戦慄。


またも、かなり間を空けて読んだ「館シリーズ」第4弾。私の感想は太田忠司さんの文庫版解説と、ほぼ同じ。この本は「館シリーズ」の異色作であるという事と、読んでいる最中に連想したのは同じく綾辻さんの「囁きシリーズ」、その中でもやっぱり『黄昏の囁き』とよく似ていると思った事。よく似ている理由は「過去からの告発」という部分であろう。自分の中にある開けてはいけない過去の記憶、そして自分の内部からの声、この二つが悲劇を招くという構成はそっくり。この構成は先を知りたくなる読書欲を誘うけれど、あぁ全部がミステリ的設定なんだ…、と冷ややかに見てしまう部分も…。人間の記憶って、そんなに便利に封印され開封されるものなの?と思ってしまうのだ。そしてラストの「新本格的動機」ともいうべき人の心の解釈も作為的でいまいち納得できなかったなぁ。ミステリ好きとして現実味が云々とは言いませんが、設定が便利に作られてるな、とは白けてしまいます。シリーズ化の盲点とでも言うべく意欲作・異色作の真相は面白かったんだけれども…。
体の一部がそれぞれ欠けた6体のマネキンという設定を見た時は、「あれっ、あの作品!?」と思いましたが、綾辻さんがあの作品を読んでいない訳なく(だって探偵が「島田・潔」ですよ…)、作中にも、その作品に触れた記述がありました。当然マネキンは、あのトリックには使われてはいなくて、ホッと一安心。前の3作品の時も思ったのですが、「館シリーズ」は1作ずつに「ミステリの基本」ともいうべきトリックが使われていますね。今回はアレ。メイントリックは正直う〜んって感じがしますが、島田潔の扱われ方が面白い作品でした。でも前作と似てるかな…?

迷路館の殺人めいろかんのさつじん   読了日:2006年01月27日