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迷路館の殺人 (講談社文庫)

迷路館の殺人 (講談社文庫)

奇怪な迷路の館に集合した四人の作家が、館を舞台にした推理小説の競作を始めたとたん、惨劇が現実に起きた。完全な密室と化した地下の館で発生する連続殺人の不可解さと恐怖。逆転また逆転のスリルを味わった末に読者が到達する驚愕の結末は?気鋭が異色の構成で挑む野心的な長編本格ミステリー。


いや〜、面白かった!!綾辻行人という作家が推理小説界の重要人物だということが改めて分かりました。『十角館』では、なんだか青臭いしミステリとして堅苦しいな、なんて思ってたのですが…。シリーズ3作目となる今作はミステリの醍醐味である、不可思議さはそのままに最高のプロットの作品を読ませていただきました。これは心地のよい裏切られ方。やっぱり楽しいぞ、ミステリ。
この本の最大の特徴はその構成であろう。まず冒頭で島田に送られてきた本。その本が丸々掲載されている中盤。そしてエピローグ。また、中盤の1冊の本の内容にしても見立て殺人の連続で作者の興味をひく。実に見事なプロット。綾辻さんはただのミステリ愛好家ではなく、作家になったと思いました。この読書欲を書き立てる構成が、ラストの事実に更にインパクトを与えている。必読です!!もちろん注文点も。時代の流行なのかもしれないですが、文章にやたらと傍点が多用されているところが、少しくどいです。さして必要のない部分や、さぁここで驚け!!みたいな意図が見えてしまって、ちょっと冷めてしまいました。また中盤のトリックの1つは露骨過ぎ。ここは作者が本当に驚きを狙ったわけではないのだから、とも取れるのですが…。しかしこの本全体を包む、本当に驚愕のトリックのためにこの本があると思えば瑣末なこと。この本の素晴らしさは変わりありません。いざ次の館へ!
今更ですが、本格ミステリにおいて守るべき点の公正さが、中村青司という建築家が作る「館」においてはフェアなアンフェアとして描かれているのも、このシリーズの特徴なんですね。このもう一捻りがミステリのウルトラCに一役買ってますね。

迷路館の殺人めいろかんのさつじん   読了日:2004年09月17日