- 作者: 綾辻行人,皆川博子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/06/07
- メディア: 文庫
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館を埋める百八個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で十年前一人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが時計館を訪れた九人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは。第45回日本推理作家協会賞受賞。
これぞ間違いなく館シリーズの最高傑作!と、その結末に唸りをあげました。これは、すごい。館シリーズといえば建築的な仕掛けがあることが前提なんですが、今回はそれに加えて、人の概念や認識まで変えてしまうような仕掛けが。私はこういう、その世界ごとグンニャリ反転させてしまうようなトリックが大好きです。
町中の、しかもドアの向こう側には人が住んでいるという変わった閉鎖状況の中での連続殺人。人がビックリするほど簡単に襲われ、全員が全員、肝心の犯人の名前を言わぬまま死んでいく…(当たり前か)。そして全員が倒れ、最後には犯人候補すらいなくなってしまう…。そう、館の中には「そして誰もいなくなっ」てしまうのだ。この辺りは綾辻さんのデビュー作『十角館の殺人』に似ている。こうなると、真犯人候補は限られてきてしまい普通のミステリならそこで一段落着いてしまう所だが、本書の真価は、犯人当てではない。WHOよりHOWに、そしてこの舞台設定に読者は慄かされる。私はこのトリックの一端を予感した時、震え、綾辻さんのミステリへの情熱と、発想力に感服した。そして真相が分かると合点がいく数々のエピソード・伏線がジワジワ効いてくる。特にエピローグで明かされる、ちょっとした地味な小ネタが私は好き。皆さんも史上最高の館の扉の前へ、是非!
今回も、前作『人形館の殺人』や「囁きシリーズ」などに使われている「過去からの告発」がある。この手法は綾辻さんのお家芸なのでしょうが、こう何回も使われると「またか」と思ってしまうし、都合の悪い事だけ喉元まで出掛かっているのに思い出せない、いつまでも小骨が取れない感じにジリジリ・イライラしてしまった。もちろん謎と絡んで効果をあげているのですが、ワンパターン化してるとも思う。