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嫁洗い池 (創元推理文庫)

嫁洗い池 (創元推理文庫)

『ミミズクとオリーブ』に引き続き、作家とその妻、そして同郷の刑事が繰り広げる掛け合いの妙が、何とも言えない直木賞作家による安楽椅子探偵ものの第二弾。そして、郷土料理を中心に、本集でも読むだけで涎の出そうな料理や食材の数々が登場する。大根の雪花、イリコ、塩アンの丸餅、アラメ、ヒャッカ、豆腐の兄弟煮、関東炊き…。美食と推理の華麗な競演をお楽しみあれ。


前作『ミミズクとオリーブ』が面白かったため、続けて読書。前作と同じパターンなのに面白い。それどころか、お馴染みになった「ぼく」と妻と友人・河田の三人の会話が更に楽しく感じられた。「ぼく」の思考の流れはすごく分かりやすくて共感。ダメダメな思考なのに共感…。そして前作にも増して料理がおいしそう!! 夕食前に読むと早く何か食べたくなります。ちなみにこの奥さん、ジャンル区分すると「台所探偵」というらしい。このネーミング良いですね。シリーズ続編出ないのかなぁ…。

  • 「娘たち」…友人で警察官の河田の同僚の娘が、突然の失踪。一体どこへ行ったのか…。この同僚の省エネな喋り方いいですね。最初の10文字ぐらいで後の内容が予想できるって(笑) 冒頭で送られた手紙と成人式のエピソードは切ない。
  • 「まだらの猫」…河田が次に持ってきた事件は密室殺人だった。部屋の中で死んでいた老人、そして凶器と見られるのは吹き矢…? 冒頭で「ぼく」が血を吐くのは驚いた。妻のトリックの連想の仕方が面白かった。こういう所が上手いのです。
  • 「九寸五分」…九寸五分とは匕首のこと。広域暴力団の傘下の組長が匕首で刺されて殺された。刺した男は捕まえたがしっくりこない河田は妻に相談に来る…。いつにもまして前段階が長かった。秋刀魚を庭で炭火で焼く。美味しそう〜!!
  • 「ホームカミング」…引退した老人がジョギングから帰ると心臓発作を起こし死んだ。健康状態に問題はなかったはずが何故…? 妻が同窓会に出席して、独りになった「ぼく」の悲哀の描写が見事。失って初めて気づくのでは遅いですよ。
  • 「シンデレラの花」…会社創業者の葬儀の夜、現社長が姿を消した。失踪か事故かトラブルか…!? さりげなく残酷な物語。それが怖い。冒頭と中盤の「ぼく」の夢の使い方が効果的。ホントに役に立ってるのかも、「ぼく」の捜査能力。
  • 「嫁洗い池」…表題作。弟を包丁で刺した後、自分は自殺しようとした、という兄の行動は現実か妄想か…? ありえそうな、なさそうな設定。河田さんがラストで、こうなってしまったらこのシリーズ続編は望めないってこと!? 悲しい…。

嫁洗い池よめあらいいけ   読了日:2001年12月08日