- 作者: 浅倉卓弥
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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映画化もされ127万人の読者の涙を誘った感動のベストセラー『四日間の奇蹟』の著者が壮大なスケールで描く歴史ロマンス、『君の名残を』がついに文庫化。幼馴染みで、剣道部主将を務める高校生、白石友恵と原口武蔵は、雨が降りしきる下校途中、忽然と姿を消してしまう。二人が目覚めたそこは平安末期、動乱の前夜だった……。生きていく為、その運命を受け入れていくしかない二人。その行方は。
落雷を受けた高校生の男女3人が過去にタイムスリップしてしまう…、という些か古典的とも言えるSF的設定で物語は幕を開ける。3人が行き着いた先は平安時代末期、それは権力が貴族から武士へと移行する転換期前夜。3人はある人物たちとの出会いから自分に課せられた「運命」を強く意識して生きる…。
タイムスリップした現代人が歴史上の人物に遭遇する設定に既視感はある。しかし私が本書に没頭したのは彼ら2人(志郎は除く)が出会った人物が、既にその死を運命付けられていると分かった時からだった。特に第一部「友恵之章」での、周囲の環境にも慣れた友恵に告げられたプロポーズ、そしてそれ同時に未来人の友恵が夫の死を理解する残酷さと言ったら…。本書のキーワードは時代の流れ、歴史上の役割、そして運命への抵抗だろう。序盤こそ高校生だった彼らだったが作中の時間は刻々と流れ、成長し、そして彼らは別の誰かになっていく…。
上巻単体でも数多くのドラマがあるのだが、まだ歴史の転換期に重要な役割を担う人物たちは全国各地に散らばっているだけ。人物の配置など二重三重に緻密に練られていると思われるので下巻で彼ら時代を切り拓く者たちがどう出会うのかが早くも楽しみ。またこの作品が小説でフィクションである事から、彼らの運命は本来の「歴史」とは異なるかもしれない可能性も残されている。上巻で友恵・武蔵ともに予期した愛する者の死、そして主要な人物の後ろに見え隠れする右眉に傷を負った人物の狙いとは…!? さあ時代の変革の準備は整った。いざ、下巻。
しかし本書で惜しむらくは後半、第二部の平家の内情の描写。勿論、この第二部こそが「平家物語」の本来の流れであるのは分かるのだが、ここまで折角「(紫式部のではない)源氏物語」として次世代の主役たちの目覚めが描かれていたのに、ここで一旦リセットされてしまった。第二部はタイムスリップなどのSF要素・現代人は陰を潜め、普通の歴史小説に成り果ててしまったのが残念。展開に退屈を感じると、所々に作者が捨て切れなかった調べ上げた知識が書かれているのが気になり出した。この時代の全てを注ぎ込もうという意気込みは分かるが…。
源氏の各勢力の礎となる者たちの終結、そして平家の弱体化が全て描かれ、いよいよ源平合戦が幕を挙げる。歴史の勝者は予め決まっているのか…!?