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四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作として、「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化。脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー


賞の名前で「ミステリーがすごい!」と謳いながら、↑のあらすじの最後の一文は「ファンタジー」という謎の複合体。ベストセラーにはなったものの、第1回目にして『このミス』の立ち位置をあやふやなものにしてしまったと思われる曰く付きの作品。更には大賞以外の本も過剰なまでに出版して、(私は)「このミス」の背表紙自体に危険なものを感じることになる。

出版社側が賞に期待していたミステリーファンからの悪口雑言を予想しなかった訳はないだろうが、賞側は本書は多くの作品の頂点に立ち、出版するだけの価値を本書に見出したのだろう。確かに、伏線、小道具の使い方や、話の進め方は本当に新人離れしていると思う(読了すると楠本夫婦のエピソードは最後まで伸ばすような話でなかったかなぁ。これが伏線となって本格ミステリ的な謎解きになるのかと思っていただけに、処理の仕方に不満が残りました)。また、「期限付きの奇蹟」の作為性、あの出来事を二人だけの秘密にする必要性に疑問を感じた。生きること、とか、自分とは、ということを考えさせられる内容ではあるが、全ては用意されたものという感じがする。それでも終章を清々しく読んだ私は既に、作者の術中にハマってもいるということか…。そういう新人離れしている所が、まったくイヤらしい(笑)

ミステリとしても小説としても悪くはないけれど、平均点といった感じが抜けない。一時は『アルジャーノン』的な展開と結末、はたまた最初から叙述トリックで映画「シックス・センス」オチまで考えていたので…(敬輔は既に××だったいうオチ。ミステリとしては、そっちの方が面白かったかも…。

四日間の奇蹟よっかかんのきせき   読了日:2006年05月29日