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『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

現在、過去、未来。別々の時を刻む3つの大時計を戴くクロック城。そこは人面樹が繁り、地下室に無数の顔が浮き出す異形の館。謎の鐘が鳴り響いた夜、礼拝室に首なし死体、眠り続ける美女の部屋には2つの生首が。行き来不能な状況で如何に惨劇は起こったか?世界の終焉を鮮烈に彩る衝撃のメフィスト賞受賞作。


なんだかな〜、の作品。私はミステリ・推理小説(意味重複?)においては、本格であれどんな形態であれ1ページ目から伏線になっていたり、ラストまでが清冽な世界観を持っているモノが好きだ。しかしこの作品において言うならば、終焉する世界である必要が全くない気もするし、ファンタジックな世界観なのにトリックは古典ミステリだし…。その世界の「あり」と「なし」の分別が私には分からないまま終わってしまった、という印象。最初のゲシュタルト云々の話は好きで期待したんですが‥こういうペダンチックな薀蓄披露って多いですよね(好きですけどね)。それが小説本体に関わっていれば問題ないんですが…。もう新人には手を出さずまず名作から読んだ方が効率的かな?なんて改めて思った一冊。
秋月涼介さんの時も思ったのですが、妙にヤングアダルト(読んだことありませんが)。メフィスト賞って、新人発掘と言うより若者ターゲットの本を作る、という方向なの?ジャンルを決めない、ということだけに、読んでみるまで提示される謎が、本格推理小説式に解明するのか、それとも論理よりトリック重視なのか、などが分からないというデメリットがありますね。今回は上記の通り、中庸、もしくは中途半端。魔法が使える世界で、新本格。時計が10分ずつずれている、という所に作者の美学を感じました。これがでたらめにずれていたら、論理的じゃありませんから。
後日談:メフィスト賞は続編を念頭に置いていると考えて良いのだろうか。だから最初の1冊では「世界観」だけが前面に出ているように思えてしまうが、その後、シリーズ物ならではの面白さが生まれるような仕組み。ただ、1冊で切り捨てられちゃったら本末転倒ですが。

「クロック城」殺人事件「クロックじょう」さつじんじけん   読了日:2002年09月10日