- 作者: 秋月涼介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/06
- メディア: 新書
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右眼に藍玉(アクアマリン)のような淡い水色、左眼に紫水晶(アメジスト)のような濃い紫色の瞳をもつ石細工屋店主・風桜青紫(かざくらせいし)と、彼を慕う女子大生・鴇冬静流(ときとうしずる)。先生に殺されたいと願う17歳の霧嶋悠璃。境界線(ボーダー)を彷徨う人々と、頭部を切断された犬の首を縫い付けられた屍体。異常と正常。欲望と退屈。絶望と救い。根源を射つメフィスト賞受賞作!!
↑のあらすじにあるようなキレイな字面が並べられた美しき登場人物たちの名前に陶酔…、する前から悪酔いしてしまった。それでも描かれている世界観もキレイだったら話は別だったのかもしれませんが、至って普通。醸し出そうとする雰囲気ばかりをなぞるだけで、肝心の内容がついてきていない。自己陶酔というか、見せかけのキレイというか。とにかく読み終わった後に「で?」と思ってしまうほど何も残らなかった。サイコを狙ったような設定ですが、結果的にちゃんと動機と行動がしっかりしている所もよく分からない。メフィスト賞のダメ選考の一つを見た気がする。
ただ読了して10年以上経過してみると、本書の意義も分かる気がする。賞関係者・編集者たちが狙ったのは、ライトノベルとミステリの融合だろう。メフィスト賞の賞としての権威も安定し始めたところで、その時点で成長が見込まれたライトノベルの分野の要素を取り込み、賞の裾野を広げ、購買層も広げるという戦略。本書はその先陣である。という考察を思い付いたのは、本書発売の8ヵ月後に西尾維新さんが登場し、彼が一躍人気作家に躍り出ているからである。メフィスト賞関係者の目は少しも間違っていなかったという事である。本書はその戦略の偉大な先駆者であり、先駆者だったのだ。アーメン。