
- 作者: 日日日
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/06/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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病気療養のため、日本のとあるところにある火蜥蜴島に転校してきた西表耶麻子。そんな彼女が、同じ高校の南愛治くんに一目惚れしてしまった。何通も、ラブレターをしたためては、渡せない日々。そんなある日、大嫌いな不破先輩にそのラブレターを発見されてしまう! お節介な不破は、耶麻子の恋を成就させるべく色々な作戦を練るのだが……。
書き出しが面白くて巧い。主人公・耶麻子の思考をダイレクトに伝えつつ、簡潔に状況説明をしている。こちらの興味と読書スピードを高めてくれる。掴みとして非常に良く出来ている。だけどその思考の流出も、延々と続くと飽きが来るのも事実。スタートダッシュの割に、中盤でダラダラし、終盤は出来レースといった感じも受けた。もちろんゴールシーンは感動したのだけれど、もうちょっとレース全体の構成を考えれば、もっと良い結果になるんではないかと思った。
読了した後に構成を考えると、あれだけで喜久子との関係がそこまで強いものになるのか疑問に思う。もうちょっとエピソードを書き込めば良かったのに(賞の応募規定に枚数制限でもあったのだろうか?)。あとは「優しくない先輩」という呼び方を文中に(しかも序盤で)使ってしまったのが残念。これで恋の結末は分かってしまう。好きなタイトルだっただけに、もっと効果的に使って欲しかった。それと愛治くんに幻滅する理由もシニカルな彼女には似合わない。これで幻滅するかぁ?と薄汚れた私は思ったりした。もっと言えば愛治くん自体がよく分からないだが…。
文章のテンポは良いのだけれど、所々の文章で、耶麻子の言葉を借りた著者の思考が述べられているのが気になった。文章と著者の距離が近づき過ぎていて、読んでいて(悪い意味での)青臭さを感じた。また、いくつか表現として好ましくないモノや、言葉の誤用・重複があった気がする(人の事を批判できないが…)。無理にこんな言葉使わなくてもいいのに、と幾度か思う箇所があった。
なんて多くの注文をつけますが、当時高校生でこれだけの作品が書けるってだけで羨望と嫉妬を感じます。この感想が辛口なのは、そういう私の負の感情が入り混じってもいるからです。若さへの妬みです…。日日日と書いて「あきら」と読むのは、「日」を3つ足すと「晶」だからかしら?