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三毛猫ホームズの推理 (角川文庫)

三毛猫ホームズの推理 (角川文庫)

体つきは優雅で上品、きりっとした顔立ちの三毛猫。手術で子宮をとったせいか、時々物思いにふける癖がある。だがひとたび事件がおこると、ユニークな推理と鋭い冴えで人間どもを翻弄する。その名も『ホームズ』。そして、コンビの片山は、血を見るのは大きらい、アルコールはダメ、女性恐怖症と三拍子そろった独身男性。一応刑事だ。売春、密室殺人、女子大生連続殺人事件と二人(?)のまわりには事件がいっぱい。ノッポで童顔の片山と名探偵ホームズのスリリングな活躍を描く、ベストセラー「三毛猫シリーズ」ついに文庫化。


多分、最初で最後の赤川次郎作品。赤川作品にまで手を伸ばしていたら、人生が何回あってもミステリを読みきれません…。読むキッカケになったのは、我孫子武丸さんの『8の殺人』。この作品の中で、『全く新しい密室を生み出した作品』と紹介されていた(はずだが、該当箇所が見つからない)。確かに、密室殺人のトリックは大技が炸裂していて、25年以上前の出版当時はかなりの衝撃的だったはず。現在のミステリ好きが読んだら、あからさまな伏線と相俟って、簡単に見抜けられてしまうのかもしれませんが。にしても、このトリックの成功率とても低そうですけどね…。

展開はコミカルかつスピーディ、会話も面白く、無駄のない描写で非常に読みやすかったのだが、「館シリーズ」ばりに次々と人が殺されるのには驚いた。赤川作品は子供から大人まで幅広く読まれるほのぼのした作風だと勝手に思っていたので、このような連続殺人や女子大生の売春(今なら援助交際か?)が話題に出るとは思わなかった。ただ、ここまで飄々と悪びれた感じもなく、殺人や売春が起こると、作品のコミカルさが一転、気持ち悪さに変わった。関係者が皆、不幸になってしまうのに片山は浮ついているし。シリアスにしたくないのは分かるが、どうしても起こる事件と作風のアンバランスに戸惑った(これが赤川次郎作品の魅力なのは分かるのだが)。一番最後の動機は取って付けたようで納得できないし、片山の妹の件もこんなに重い結末を用意していいものかと、読書開始時には予想もしなかった沈んだ気分で本を閉じることになった。軽い気持ちが仇になりました。

にしても、作中の展開だと片山のどこが女性恐怖症なのかよく分からない…。かなり積極的にアタックしてるじゃないか。あっ、モテそうでモテないという設定が読者の愛着を誘うのか。彼が幸せになるのを見届けようとするのがファン心理か。

三毛猫ホームズの推理みけねこホームズのすいり   読了日:2006年09月14日