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龍の館の秘密 (創元推理文庫)

龍の館の秘密 (創元推理文庫)

行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。今回は、「立っているだけで一日二万円」の仕事。でもバイト先での宴会の末、たどり着いた「龍の館」で、またもや殺人事件が勃発! 被害者はなぜ溺死する寸前になるまで助けを求めなかったのか? 『天使が開けた密室』で注目を浴びた著者が放つ、清新な本格ミステリ第二弾。未発表短編「善人だらけの街」を併録。


「少女漫画ミステリ(勝手に命名)」の第2弾。「第1弾」の事件は夏休みの前半だったが、今回は夏休み後半編。今回も前回と同じく放浪者・武熊さんの紹介で始めたアルバイトの最中にトラブルに見舞われ殺人事件に巻き込まれ、その事件の真相を美形大学生(ほんのりホの字☆)・修矢が解き明かす展開も一緒。そしてそして今回も事件が起こるのは全316ページの長編の中で189ページ目と遅めなのも一緒。事件前の描写の中にも事件の背景となる問題や解決への手掛かりなどが伏線として書かれているのだが、読了してみるとその場面は本当に必要だったのか?と疑問に思う箇所も多い。その一方でミステリとしての推理のバリエーションの少なさに不満が残る。延々と続く推理合戦には飽きる事もあるが、本書では推理する者が高校生だからかアイデアがすぐ涸れてしまい十分な検討がされない。それなのにその数少ない推理案が真相の半歩手前まで接近してしまっているから真相披露の驚きを削いでしまうという悪循環。探偵が真相へ近づくのに残っている距離は半歩だもの。しかも今回は不可能犯罪と言うよりも十分な捜査がされなかったために、謎が生まれただけなのである(しかも初歩的な捜査)。正直、なぜこのレベルの作品が創元推理文庫で復刊されたのかが、一番の謎。
揶揄の意味も込め「少女漫画ミステリ」と命名しているが、実際、各キャラクタにもう少し独自性や深みが欲しい所。特に直情型で考えなしの美波だが、父の失踪という問題を抱えているのだから、もう少し大人でもいいと思う。

  • 龍の館の秘密」…一応、クローズド・サークルの館モノ。この館は様々なトリックが仕掛けられているという前提。メインの謎は死を回避する手段を持っていた被害者はなぜ死に追いやられたか。謎自体は面白い設定なのだが、上述の通り捜査側の見落としが謎を複雑にしているだけで、それを発見すれば容疑者は自然と浮かび上がる訳で…。トリック自体も古典的でお粗末か。しかし作者は美波たちに人が死にゆく様子を間近で見せるとは…。さすがに美波たちが気の毒に思えた。今回の修矢は大人気ないし、直海に至っては必要ないんじゃ…?
  • 「善人だらけの街」…またまた武熊さんの代理で臨床治験ボランティアに参加した美波。だがその夜、隣のビルで火災が発生し…。伏線は周到だが、真相はとんでもミステリ。でも修矢はなぜ美波の元へ来られたんだ…? そういえば倉知淳さんの「猫丸先輩シリーズ」にも臨床治験の短編がありましたね。

龍の館の秘密りゅうのやかたのひみつ   読了日:2009年02月07日