《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

アイドルグループ・HRM30のメンバーはプロデューサーの妻の座を虎視眈々と狙ってる

砂漠のハレム 5 (花とゆめコミックス)
夢木 みつる(ゆめき みつる)
砂漠のハレム(さばくのハレム)
第05巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

ケダモノで俺様なジャルバラ王国第三王子・カルムの正妻を目指すミーシェ。カルム王子が統治する南州の記念式典に側妻たちも参加することに。気が進まないミーシェだが、カルム王子の国に対する想いを知り、王子の力になりたいと改めて思う。式典当日。側妻の代表として役目を務めるコレルのことが気になるミーシェだが…?

簡潔完結感想文

  • 第二章・正妻オーディション開幕。永遠のライバル、厳しい審査員、商業価値を認めるP。
  • 一部読者が期待した女性同士の戦いは ほぼなく、一次審査敗退の側妻の28人は本当にモブ化。
  • 他の王子の妻たちのように由緒正しい家柄はなくても、アーレフの奴隷は一つのブランド。

のライバルと言えるのは貴女だけですわよッ! の 5巻。

『4巻』までが、第三王子・カルムが自分の正妻としてミーシェが相応しいか吟味する一次審査とするならば、『5巻』からはカルム以外の者に彼の正妻になり得るかを試される二次審査と言えよう。本書は異国ファンタジーの溺愛モノだとばかり思っていたが、実際はオーディション番組のような緊張感と興奮を味わえる作品だったようだ。期待していた後宮の女同士の争いは ほぼないままだけど、これはこれで女性の好きなジャンルが展開されているのか。

この二次審査から登場する新キャラが3人いる。1人はミーシェの永遠のライバルとなる存在のコレル。早い段階からカルムの側妻(そばめ)になった女性で、後宮の中でミーシェが初めて意識する人である。じゃあ他の28人の側妻は何なのか、と言いたくなるけれど、大ナタを振るって二次審査の参加者を2人に絞り実質 最終審査にしたのは英断だろう。ステージが変わったことが分かりやすいし、有形無形ではなく1人の明確なライバルになった方が読者の方も読みやすく、作品も盛り上がる。

2人目の新キャラは審査委員長とも言えるカルムの実母でもある王妃。ミーシェに対して辛口コメントを いちいち言ってくる この女性に対しての態度が、実は本当の審査内容なのだろう。わざとミーシェを窮地に追い込んでから彼女の出方を待つ。もしかしたらミーシェは一次審査でアーレフという権力とトラウマの象徴に言い返すだけの胆力を鍛え上げなければ、王妃に対しても委縮するばかりだったかもしれない。カルムが一次審査としてミーシェを連れ回し、彼女に様々な経験と覚悟を持たせた成果が出ているように思う。

カルムの正妻選定に一番 口を出してくる審査委員長は王妃。会話は全て審査対象

第3の人物はカルムの長兄である第一王子・メフライル。彼の役目は まだまだ不明確だけど、ラストの展開から考えると このオーディション番組が どうやったら盛り上がるかを大局的に考えるプロデューサーのような役割に見えた。決まりきった審査内容ではなく、自分が面白いと思う方向に番組を組み替えそうな予感がする人だ。
また国王を目指すカルムにとってライバルに違いなく、ミーシェにとってのコレルと同じポジションだろう。コレルが正妻に自分がなると確信しているように、メフライルもまた第一王子として自分が一番国王に近いと思っているに違いない。第三・第四王子と違って性悪なところを見せないだけの器量があるから恐ろしい。

多くの白泉社作品と違って、目的達成を二の次にした日常回での時間(巻数)稼ぎをしたりせず、本題に向かって前進している実感があって嬉しい限りだ。一次審査を見届けた読者で二次審査の途中で読むのをやめる人はいるだろうか(いや いない)。


ルムの南州統治5周年の式典が開催。それを前にしてカルムはミーシェに南州の歴史を教える。今でこそ女性の活躍する社会になっているけれど、カルムが統治するまでは貧困と差別に苦しめられてきた。そこをカルムは4年で改革した。これはカルムの正妻教育の一環だろうか。

当日、ミーシェはカルムから贈られたドレスを着て参加。式典では側妻(そばめ)の1人がカルムにバッジを付ける役目を与えられる。後宮入りした順番で回ってくる役目で、今回はコレルという側妻の順番となる。カルムは側妻を この4年で集めたと思われるが、コレルは古参の側妻といえるだろう。

正妻オーディション編となることで、コレルはミーシェが初めて後宮内で引け目を感じる女性として描かれる。コレルは歯に衣着せぬ物言いをする人らしく側妻と言い争いになり、式典の前にドレスが破れてしまう。その事態にミーシェは自分がカルムから贈られたドレスをコレルに渡し、式典の成功を最優先する。ミーシェは欲のない、大局を見られる女性として描かれているが、式典でカリスマ性を見せたカルムとの距離も描かれる。ただミーシェも そこで引け目を感じ続けるわけではない。この距離を埋めるため、正妻になるための日々を歩んでいく。


漠の この国ではオアシスでも植物に囲まれた森と言える。少女漫画は森に行くと遭難するのが お約束。今回は砂漠には珍しい豪雨で川が増水して分断され、カルム一行はクローズドサークルに閉じ込められてしまう。他の側妻たちもいるが、好奇心旺盛なミーシェはカルムに同行して食料調達を任されようとするも任されない。

自分を頼らないカルムだけど、彼はコレルのことは頼る。そしてミーシェはコレルから式典の際の お礼を言われ、背筋の伸びた彼女の生き方に自分との違いを感じずにはいられない。落ち込んだところをフォローするのがカルムの役割。

しかしカルムが接近した際にミーシェが居た洞窟が崩落し、二重の閉鎖空間が生まれる。そこから この頃はなかったスキンシップ開始。久々に本編でもケダモノ発言が飛び出す。肌と肌を重ねて一夜を過ごすが健全に終わる。当初はヒロインがドキドキしていたのに、結果的にヒーロー側が撃沈するのはベタな展開。


ルムは2人の事故を側妻たちに伝えずにいたが、様子を見に来たコレルに発見される。そのことが気になるミーシェだったが、2人で話した際コレルは妻としての役目で私情を抑え込む姿勢を見せた。コレルに感化されたミーシェは彼女を参考に冷静さを保持しようとして いつも通り変な空気を醸し出す。

そして今度は自分がコレルとカルムの抱擁の場面(事故)を目撃して、冷静さを保持しようとするが逃亡。それをカルムに追いかけられ これまでの感情の動きを洗いざらい話す。コレルという存在によってミーシェの嫉妬が煽られた。これは これまでなかった展開である。またコレルには故郷があり、彼女が そこを大切に思っているようだ。

コレルにカルムへの愛情を問われ、ミーシェは側妻たちの前で堂々と正妻を目標とする宣言をする。コレルは他の側妻のように嘲笑して無理だと決めつけないが、ミーシェの困難を列挙し、そして自分が正妻になるから無理だと断言する。


んな時、カルムの母親である王妃に拝謁する機会が設けられる。親族への挨拶に緊張するミーシェをカルムが気遣い、対面が始まる。王妃はミーシェに優しい言葉と厳しい言葉をかける。彼女にとってミーシェは正妻に相応しくないと考えている。ただ その向けられた敵意に対して どう反応するかが審査基準だったのではないか。あからさまな牽制を受けてもミーシェは王妃の前では冷静だったし、カルムの心配に対しても「自分で歩ける」と言うのは彼の擁護や援助なく、正妻を目指す宣言に聞こえる。

その王妃が主催する茶会(サロン)に側妻の中からミーシェとコレルが招待される。事実上の決戦である。そう決意して茶会に乗り込むミーシェだったが彼女に漂う殺気をカルムが中和する。


会で この国の4人の王子が初めて集合する。初登場となるのは第一王子のメフライル。おそらく国王を目指すカルムの最大のライバルだろう。茶会でミーシェは主に他の王子の妻と交流する。カルムは困っている女性を集めて30人の側妻を得ているが、他の王子の妻たちは由緒正しき家柄。自分の素性や身分を明かすことがカルムの評判に関わると考えたミーシェは自己紹介も ろくに出来ない。

アーレフは恋愛における仮想敵だったけど、メフライルは いつか対決する政敵

その躊躇に王妃は興が削がれたと言い放ち場の雰囲気を変えるためにコレルに詩(うた)を詠(うた)わせる。側妻たちの中で浮いていたミーシェは王子の妻たちの間でも浮き始める。更にミーシェが良かれと思ってした行動に対して王妃が厳しい叱責をしたのでミーシェはブチ切れる。王妃に口答えをして追放処分を受けるが、カルムは抱腹絶倒しながら それを断る。どれだけ敵が多い状況でもカルムだけは味方になってくれる。そして そのカルムの実母なのだ。自分に反論するような気骨のある人間を王妃が嫌いなわけがない。

表面上は王妃に嫌われたミーシェだったが、第一王子・メフライルがアーレフの奴隷だった彼女に利用価値を見い出し…。