《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

同じ時間を長く過ごすことによって、ヒロインも作者も双子の中に個性を見つける。

LOVE SO LIFE 2 (花とゆめコミックス)
こうち 楓(こうち かえで)
LOVE SO LIFE(ラブ ソー ライフ)
第02巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

保育士志望の女子高生・詩春は、バイト先の保育所に通う天使のように可愛い双子・葵&茜のベビーシッターを始め、忙しくも楽しい毎日☆ 双子の叔父で人気アナウンサー・松永政二は、施設暮らしの詩春に対し、いつも家族のように接してくれ、松永家は詩春にとって大切な場所に…。

簡潔完結感想文

  • 1話の構成は ずっと季節イベント + 母との思い出 + 松永のヒーローショー。
  • 連載化したが読切状態なので毎度 冒頭に不幸が語られて、暗澹たる気持ち。
  • 詩春は2歳児を火の前に立たせたり、手を繋がずに歩いたり、色々と危ない。

ビーシッターというよりも専業主婦を強いられる 2巻。

『2巻』から これまでの読切での発表ではなく、3回の短期連載が何回か続く連載形式となる。といっても連載にはなったが、定期連載とは違うので、毎回のように詩春の境遇が語られるし、話も単発で成立するものになっている。また白泉社の連載に よく見られるように連載が安定するまでは物語に縦軸が取り入れられず、その代わりに雑誌掲載時の季節に合わせた季節イベントで お話を作っている。この『2巻』ではバレンタイン回、こどもの日、梅雨など1年の前半が描かれる。途中に年度替わりの4月があるため、ヒロインの詩春(しはる)の学年が変わっているのだが、そこには触れず物語は進む。この辺は一種の「サザエさん時空」が発生しており、作者も後に お詫びと訂正を述べている。まぁ 白泉社読者は その辺 慣れっこであろう。

連載が重なると、当初は単なるヒロインのアクセサリでしかなかった双子に個性が宿ってきたようで嬉しくなる。双子だけど男女で性格の違う彼らの様子が きめ細かく描かれるようになっているのが分かり、作者の双子に注がれる愛情を確かに感じた。子供の描き方が上手くなっているのも、連載を通じて作者の成長した部分だろう。そして最初は連載にいっぱいいっぱいだった作者が、物語に何が出来るかを常に悩み、そして良い意味で距離を取ったことが私は本当に嬉しい。そういう意味で本当に愛に溢れた作品だと思う。


だし上述の通り、毎回 冒頭で詩春の半生を描くために母の死が登場して、詩春や作品が それに引っ張られるため、物語のトーンが暗くなりがち。詩春の母との思い出を彼女が双子にも与えて あげようと奮闘する姿が見られ、詩春が母としたこと、または母と経験できなかったことを体験することで、詩春は この新しい疑似家族との思い出を増やしていく。
この追体験や新体験が詩春にとってカウンセリングの役目を果たしていれば良いと思う。新しい幸福を得ることで、不幸に囚われてしまいがちな自分を克服して、新しい日々を過ごせるようになることを願う。悪いが、そうじゃないと物語が しみったれるばかりである。ある意味で序盤は詩春が母と正しく お別れして、トラウマを克服する部分なのかな、と思う。そのせいなのか序盤は詩春のために世界が存在し、彼女の周辺以外の世界の住人は幸福だけど何かが欠落しているように描かれるのが あまり好きではない。

しかし薄々気づいていたが、詩春がベビーシッターの範疇を越えて、松永(まつなが)家の全てを管理を任されているような気がする。バイト代は倍を出すと言っていた松永だが、ベビーシッターとして雇った詩春に自分の生活環境まで整えてもらうのは契約違反だったりしないのだろうか。その意味では松永は公私の区別が甘いように思われる。

自分の経験を双子にも与えたい詩春だが、彼女は若く 相手は2人。事故発生まったなし。

私の区別が甘いのは詩春も同じ。詩春は自分の味わえなかった普通の家庭での幸福や経験を、この疑似家族で叶えようとしている節がある。その辺はまだまだ子供というか、公私の境界が曖昧で、松永家のバイトの中に自分の私欲が宿ることを あまり悪いこととは思っていないように見える。

そして2歳児(しかも双子)と火を使う料理に挑戦するのは完全に自他の能力を超えており、当然のように失敗する。作中では1回も詩春が責任を負うような怪我は描かれていないが、現実的には無資格の高校生に双子を任せていたら、間もなく重大事故が発生するだろう。作品として詩春が双子の面倒を見る中で母との思い出を重ねるという二重の構造は物語に厚みを与えると思うが、やはり詩春の公私混同のようにも見えてしまう。


いてはバレンタイン回。詩春はイベントを大事にする友達に促されて、松永にチョコを贈ることにする。これは『1巻』のクリスマス回で松永からマフラーをプレゼントされたことの お返しの意味も含まれている。自分の私生活を捧げて兄の子を育て上げようと努める松永は、詩春にとって母と重なる部分がある。そこを尊敬し、だからこそ支えたい。幼すぎて力にはなれなかった母の時とは違う自分を見せたいという気持ちもあるだろう。これも公私混同か。

バレンタインデー当日、松永が早めに帰宅できるため、詩春は松永家でのバイトは お休み。この早めの帰宅は松永が色恋てゃ無縁である証拠でもあるのだろう。
そのため詩春は松永が迎えに来た時しかチョコを渡す機会がない。だが松永が乗車してきたタクシーに大量のチョコの山を発見してしまい、急に自分の手作りチョコが みすぼらしく思えた。渡すのを躊躇する詩春だったが、双子の姉・茜(あかね)が持ち前の食い意地で詩春が隠し持つチョコを発見し、それで詩春は観念して松永にチョコを渡すことが出来た。彼の笑顔を見て、詩春は渡せたことに安堵する。いつでも松永は詩春の不安を吹き飛ばしてくれる精神的なヒーローなのである。


いては4人での2回目の お出掛け回となる動物園での お話。この頃から双子の個性の違いも少しずつ描かれるようになってきて、双子がヒロインを輝かせる道具ではなく、彼らもまた作品の重要な登場人物として描かれていくような気がした。読者も双子という単位ではなく、茜・葵(あおい)の個人に対する愛着がわいてくる。

この回も詩春が味わえなった幸福のリベンジなのか、トラウマの払拭になっていて、双子や松永家が利用されている気分が否定できないが。

楽しい時間を過ごしていたが途中で天気が悪くなり、雨が降り出してしまい、4人は1本の傘で身を寄せ合い相合傘状態になる。そして雨のために双子たちが楽しみにしていたライオンが見られなくなってしまい、子供たちは駄々をこねる。ただ今回は松永が彼らの機嫌を直し、また来ることを約束する。その中に自分も入れてくれたことが詩春は嬉しい。少々ネタバレになるが、この約束は終盤で大きな意味を持つ。

まさか この約束が超々ロングパスになるとは この時点では作者も思わなかっただろう。

容を雑誌掲載の時期に合わせているので「こどもの日」。この回では松永家の ご近所さんである健(たける)に詩春への恋愛フラグが立ったように見えたが、松永や直(なお)もいるからか、健は静かに撤退していく。彼の単純さから言ってライトなものだと勝手に思えるのでフラグの撤回も不自然ではない。
どうでもいいが、詩春は松永家のデジカメを使って写真を撮って、その日のうちに現像したのか? 詩春は松永家に関することは お金を使うことに躊躇がないように見える。

次の話も お出掛け回でデパートの屋上にヒーローショーを見に行くの巻。だが双子の姉・茜は変身前のイケメン俳優推しで、変身後の姿しか登場しないヒーローショーに興味がない。一方、葵は好きな事への執着が凄いので絶対に見逃したくない。そこで4人は男女で2組に分かれることになる。ここにも双子の個性が出ている。

この回は詩春たちが善意で迷子の子供を助けようとするが、自分のことしか考えられない その子の母親に善意を踏みにじられる。例え両親が健在でも血のつながった親子でも不幸になるという実例を出して、その後に この疑似家族の温かさとの対比を見せる。何か他者を下げて、自分の側を上げている感じが苦手だ。少女漫画ではイケメンとモブ男性の間でよく見られる手法でもある。

ちなみに この回で松永は詩春に夢で告白されるという都合の良い願望を抱いている。白泉社らしく鈍感ヒロインが いつ恋心に気づくのか、という構造が早くも完成している。一方、松永は未成年者の詩春を完全に恋愛対象で見ているのが なかなか怖い。9歳年下のJKから告白される都合の良い夢(願望)を見るあたり、恋愛偏差値は高そうにない。せめて告白する夢ならいいが、詩春が少しも好意を抱かない内から、本来なら思い止まらなければいけない松永は早くもGOサインを出している。


後は梅雨回。
家で退屈する双子のために外に出た詩春。小さい発見や大きな虹を見たり雨の日ならではの楽しみ方をしていたが、水たまりに侵入したトラックの水しぶきを浴びてしまい、詩春は びしょ濡れになる。

先に家に帰っていた松永から風呂を勧められ、詩春は初めて松永家のお風呂を使う。どうでも いいが、松永は秒で帰宅したのか、という謎の描写である。実家に戻ったため会社から遠いという設定なのに、会社の場面があったのに、彼らの散歩途中で家に帰っている。そして毎日 不規則な生活なのだろうが、日のある内に帰って来ることも多い。これらは詩春を風呂に入れたいがための展開なのだろうが、謎の松永のスケジュールである。

今回も母との思い出を思い出す、詩春の小さなミスを松永が救う、というテンプレ展開で終わる。早く この期間が終わって欲しいが、白泉社の1年目は季節イベントで消化されるのが お約束である。