《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

5年の経過で ヒロインへの愛情表現は叔父がアウトからセーフに、甥がグレーゾーンに。

LOVE SO LIFE 17 (花とゆめコミックス)
こうち 楓(こうち かえで)
LOVE SO LIFE(ラブ ソー ライフ)
第17巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

双子が静岡へ引っ越す前日。松永家に初めてお泊りする詩春に、双子は大興奮♪翌日、竹川さんが迎えに来たら、本当にさよなら…。いざ静岡へ出発の時間、茜ちゃんと葵くんは…!?そして詩春と松永さんの恋の結末は…!?詩春と双子のハートフルDAYS、感動の最終巻!!

簡潔完結感想文

  • あしたも、あしたのつぎも会えなくても、私たちは紛れもなく家族だから。
  • 本書の全ては1冊の手作りノートになって、詩春から祖母へと手渡される。
  • いつだって松永に触れると涙が溢れるが、同時に彼は愛と幸福を与えてくれる。

愛は成就したが、成仏できない片想いが1つ、の 最終17巻(LIFE SO HAPPYに続く)。

思えば関係者は誰もが双子の情報を全て持っていない。双子の両親では母親は彼らを遺して事故死してしまい、父親・耕一(こういち)は それ以降2年間 失踪した。兄に代わって彼らを養育することに決めた松永(まつなが)も双子と全ての時間を一緒に生きた訳でなく、詩春(しはる)もまた濃密とは言え彼らと過ごした日々は彼らの人生の半分ほど。亡き母の両親、つまり祖父母も双子の人生に、3歳前後からしか深く関わらない。双子の人生を本当に一緒に過ごしたのは茜(あかね)と葵(あおい)の2人だけ。どれだけ愛情を注いでも誰もが双子の情報を欠落している。

でも だからこそ彼ら関係者5人は全員で双子の家族と言えるのではないか。ずっと私は この松永家の暮らしを疑似家族と呼称してきたが それは間違っているような気がする。詩春も松永もまた間違いなく家族なのだ。一時 間違えた耕一も間違いなく双子に愛情を注いでおり、この5人に愛情の差はない。母親は もういないけれど、こんなに多くの人に大きな愛情を注いでもらった双子は間違いなく幸せだと思う。

少なくとも祖父母は詩春に対して そういう感情を持っているから彼女に感謝と敬意を払い、家族の様な雰囲気で接してくれている。静岡の祖父母宅への出発の日、詩春は祖母に1冊のノートを渡す。それは彼女が双子と一緒に過ごした時間をまとめた本。つまりは本書そのものと言えよう。松永と一緒に出掛けた場所、詩春が広げた双子の世界、一緒に過ごした周囲の人々、それらを一緒に過ごすことの出来なかった祖母に手渡すことで、詩春は双子のことを祖母に引き継ぐ。詩春は このノートを作りながら何回も泣いただろうか。それとも過ぎ去った楽しい思い出しては笑顔になっただろうか。
このノートは祖母に欠落を感じて欲しくないと言う詩春の優しさと思い遣りが詰まっている本である。聡明な祖母は ちゃんと気持ちを受け取っていて、出発の車内でも大事に それを抱えてくれているのが嬉しかった。詩春と祖母の繋がりは温かい。

人が相手のことを好ましく思うエピソードが幾つも用意されていて、胸がいっぱいになる。

終巻でも こうした作者の優しさやセンスが光っていて、中でも好きだったのは『12巻』の失恋以降、一緒にいる場面すら描かれなかった詩春と直(なお)の関係が描かれていたこと。

双子との お別れの後、詩春は魂が抜けたように生きていた。食事も ろくに取らず体調面が心配された中で彼女に喝を入れたのが直だった。直は まるで昔に戻ったようにヘラヘラ笑う詩春に厳しい言葉を投げつけるのだが、これもまた彼の愛情だろう。詩春に笑って欲しいと願っていた彼だが、それは失恋により自分の役目ではなくなった。なら彼女が感情を殺さずに、そして胸を張って生きられるようにするのが直の役目となる。直に双子の話題を出されて詩春は泣く。泣くのを我慢してしまう詩春に涙を流させ、気力や感情をリセットするのが直の狙いなのだろう。松永のように触れたり、その胸で詩春を自然と泣かせたりは出来ないが、詩春の限界を見極め、強制的に泣かせるのは直にも出来る。詩春が松永と疎遠になりつつある この頃に直が詩春を泣かせることは優しさの形のように思えた。
そして こういう大事な場面まで彼らが一緒にいる場面を描かなかった作者は とても我慢強いと思う。恋愛関係にはなれなかったが、詩春を一番近くで見てきたのは直であることには変わらない、という事実が明確になったようで嬉しい。


書が約束を大切にすることは『16巻』を読めば分かる。まさか『2巻』の約束を超ロングパスで通したのには驚いた。

そして松永は当時 未成年の詩春に10年越しの約束をした。それは松永が年長者として、彼女の親に誓って、節度を持つためのブレーキであった。詩春が広い世界を見て、そこに生きて、その上で自分を選んでくれたら嬉しいというのが松永の約束。
それが松永の誠実さの証なのだが、現実的に10年は詩春に長い春を過ごさせることになるからか、その時間は大幅に短縮される。その最低経過時間が最終巻での5年後という世界線なのだろう。この5年の間に高校を卒業し、詩春は施設を出て、一人で暮らし、学業とバイトを両立させながら夢であった保育士になった。そして社会人1年目が終了しようとしているのが、この5年後である。
こうして詩春が一人で生きる力を獲得し、社会に出て松永と同じ立場になったから、2人の関係を前に進めさせることが出来たのだろう。2人は双子を通して会わない訳ではないが、その一方で何も起きないという不安と不自然さの限界ラインもまた5年という歳月なのだろう。

2人の関係に関して1つだけ不満なのが、詩春が松永に好きという言葉を言わないこと。松永からすれば、何だか状況証拠からでしか詩春の松永への想いが伝わってこない気がして残念だ。松永も それでよしと考えていたり、断りもなくキスをしたりするのは、詩春が高校生当時から松永は自分を憎からず想っているという勝算があったということなのか。高校生当時は詩春がハッキリ言わないことで、松永も生殺し状態が続いて、手を出すにも出せない膠着状態の成立になっていたが、最終回ばかりは詩春にハッキリと明言して欲しかったと思う。

そして本書には実は残された約束が1つある。もしかして作者は その約束に決着をつけるために新シーズン(?)を始めたのかと深読みしてしまう。不完全燃焼に終わった第2の当て馬、そして松永という人がありながら軽々しくプロポーズを受けた詩春の二股状態、そんな問題を解決するために、シリーズは もう少し続く。


春の双子との最後の思い出になる出発前日の お泊り回。一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って詩春は双子たちと本物の「家族」のような一日を過ごす。これは松永からの詩春へのプレゼント。松永は作中で幾つか詩春にプレゼントをしているが 対 詩春には百発百中で喜んでもらっている。

その間、松永家の男性たちは仕事に励み、祖父母たちは孫を迎える準備を整える。この家を兄一家が出て行ったら、松永もテレビ局に近い家に引っ越すことになっている。これまで仕事をセーブしてきた分、スケジュールが過密になっていくらしい。これからの この家のことは、どうやら所有者であるらしい彼らの父親が決めること。

そして別れの朝。この日は祖父母が松永家を車で訪れ、最後の荷物と兄一家を連れて一緒に帰ることになっている。
男性陣が車に荷物を運び入れている間、詩春は祖母を松永家に案内する。そして詩春は、双子が頑張ってきた お手伝いカードと、茜と葵の情報をまとめたノートを祖母に手渡す。本書の全部が詰まっているのが このノートだろう。詩春が書いたという体でファンブックとして出版してくれないだろうか。そして これは詩春が彼らと一緒の時間を過ごした証でもある。それを祖母に託して、祖母が知らない双子のことを少しでも埋めてもらおうとする心遣いが優しい。祖父母にとって詩春は娘のような孫のような存在で、両親の親族との交流がなかった詩春にとっては血縁よりも近い他人だろう。


父母の休憩がてら松永家で団欒をした後、彼らは出発する。いよいよ別れの時が迫り、詩春は自分の動揺が双子に伝わらないように精一杯 感情をコントロールしようと努める。

葵は この家から荷物が運び出され、車に積まれていることに事態の大きさを感じていったようだ。詩春は笑顔で これからも連絡することを伝え、皆と仲良くね、と別れの挨拶をする。
それに反応したのは、別れを感じ取っていた葵。彼は堪え切れずに泣き出す。そして茜も詩春が同行しないこと、そして次に彼女に会える日が自分の数えられる未来を超えていることを思い知り、座り込んで行くのを止めると言い出す。明日からは松永も詩春がいない生活が始める。それを初めて実感し、茜は地面に伏せて泣き出す。

そんな茜に どう言っていいか分からない詩春は、一緒に居られないことを何度も詫びる。我慢できなくて泣き出し、自分を責める詩春を見て、葵は茜のワガママが詩春を悲しませると察知して、茜を立ち上がらせ、そして行こうと声を掛ける。茜も詩春が泣いているのを見て、最後に彼女に抱きしめてもらおうと近づく。詩春は双子を力いっぱい抱きしめて、離れても愛情は変わらないことを告げ、最後には彼らは笑顔で別れることが出来た。

松永と並んで車が見えなくなるまで見送った後、松永と話していると詩春は また涙が溢れ、そして簡単に泣いてしまう自分がベビーシッターとして上手くやれていたか分からなくなる。感情を制御できないのはプロ失格だと詩春は思っているようだ。しかし そんな詩春に松永は、この家に必要だったのは完璧なプロではなく詩春だったと優しい言葉を掛ける。彼女が仕事の範疇を超えて、その体いっぱいで双子を愛してくれたから、この家の状況は好転し出した。松永は詩春の働きに感謝の気持ちしかない。そして だからこそ この松永家は家族になれたのである。


れから5年が経過する。この5年で詩春は高校を卒業し、幼児教育学科の大学(3年制)を経て、去年から保育士として働き出していた。

詩春は梨生(りお)とも交流が続いており、3年制の大学を一足早く卒業した詩春に続き、梨生もまた次の春で社会に出ようとしている。彼女は化粧品会社で働く予定らしい。そして健(たける)とも交際が続いているようだが、彼はバックパッカーとして世界を勝手に旅しているという関係性。彼は随分前に社会に出ている年齢だが、作者は健の自由奔放さを失わせたくなったか。

詩春は双子と別れた後、想像以上に喪失感が大きくて学校でも日常でも心に穴が開いている状態だった。食事も喉を通らない状況を施設の人々は心配する。それは直も同じで、彼は辛口ながら詩春を立ち直らせようと声を掛ける。弱っている人に更に追い打ちをかけるような言葉の連続だったが、それは詩春を目覚めさせる正論でもあった。双子が かの地で頑張っているなら、お前が頑張らなくてどうする、と詩春を元気づけ、彼女に涙を浮かべさせる。だが泣くことは詩春にとって気持ちのリセット。これまでは松永の前でしか泣かなかったが、直もまた詩春を深く想っているからこそ、彼女の感情を揺るがせることが出来たのではないか。

この直と詩春の距離感が良かった。作品は直を すぐには、詩春にとって都合よい友達や家族の位置に彼を戻さない。すぐに完全に今まで通りに接せられるほど直は器用ではなく、そして その想いは深かった。だから2人が接触するシーンは最後まで省略する。施設でバッタリ会う可能性は十分にあるが、それは読者の想像の内にとどめ、作品は2人の気まずい関係をカットする。これは双子のことに集中したいことへのノイズになってしまうからだろう。
その一方で作品は直を見捨てない。当て馬としての役目を終えたから二度と出番がないような冷淡な扱いはせず、彼が失恋を経て変化し成長したことを描けるように彼のシーンを挿入している。
そして最後の最後に、やっぱり詩春の一番 近しい存在として直を登場させ、直接的に双子、そして松永を間接的に喪失した詩春を立ち直らせる人として彼を用意した。恋人でも親友でもなく、やはり これは家族や きょうだい のような関係のように思える。

涙の後、詩春は立ち直り、明日に回そうとしていた食事を詰め込んで元気を出す。そうして精一杯生きて、双子に誇れる自分になることが彼女の目標になる。それは松永との10年後の約束にも繋がることでもある。


春は この5年間、双子に会いに祖父母宅に行ったり、あちらの一家がこちらに来たりして交流は続いている。だが松永とはタイミングが合わず、すれ違い状態。彼が あの約束を覚えているかも怪しい状況となる。

そんな時、茜から電話がかかってきて お花見に誘われる。双子は この5年で小学2年生・8歳になっている。どうやら双子は引っ越し直後は夜になると松永家に帰ると泣き出していたようだが、大人たちの協力によって少しずつ新しい家に馴染み、落ち着きを取り戻していった。5年が経過した今、一家は問題なく暮らしているらしい。
葵も茜も それぞれモテていそうな雰囲気だし、学校生活も充実しているように見える。懸念されていた父親との関係も良好だし、この家で暮らしてから母の遺影にも挨拶をするようになった様子も見られる。彼らの父親は、祖母に甘えることに遠慮のある茜をアシストしたり彼もまた ちゃんと家族の一員になっているようだ。
祖母は孫たちを溺愛しており、茜に甘えられた時の反応は詩春そっくりで笑ってしまう。

そして葵は詩春と結婚するという約束を信じていた(『10巻』)。ちなみに松永が憧れの変身ヒーローだと言う嘘(『13巻』)も最近まで思い込んでいたらしい。良く言えば一途だが、悪く言えば執念深いよ、彼は…(笑)


京でのお花見企画は梨生や健も一緒に参加する上に、松永も遅れての参加が決まった。詩春は着飾ろうと考えるが、彼がまた自分を避ける場合を考え落胆しないよう、いつもの恰好で出掛ける。

公園内で合流をする詩春と双子。彼らの心から嬉しい様子を見られるから、大人たちは連れてきたくなるのだろう。葵が積極的に詩春に触っているのが、そろそろアウトではないかと思う年齢である。どさくさに紛れてボディタッチ(セクハラ)をしていないか心配になる年齢だ。そして彼は本当に詩春に褒められたくて生きている節がある。失恋したと知ったら生き甲斐を無くすのではないだろうか…。

この日、祖父母と耕一は別行動をするという。後は若い者同士で ということらしい。そこに もう若いとは言い難い松永が来るなら、元 松永家組で楽しんで欲しいというのが彼らの願いなのだろう。それに梨生たちも参加するから気を遣ったようでもあるが。

そろそろ 葵の詩春への強すぎる想いを知っている父によるスキンシップ自重の教育が必要か。

永から合流の連絡を受けた際、今度は梨生たちが気を遣って詩春と2人きりにさせようとする。

なんと2人きりの時間は この5年以上で一度もないという。それは松永が自分を避けていると詩春は考えていて、彼を目の前にして、今度は詩春が彼から逃亡してしまう。松永から聞きたくない言葉が出るのではと怯えているのだ。

そんな詩春の様子を見た梨生は、松永に詩春の行動は松永が原因であると告げる。何かしたのではなく、何もないから詩春は不安なのだ。それを知った松永は詩春を追う。
靴も履かずに逃亡する詩春に、松永は靴を持ってきてくれて、彼女の手を支えて靴が履けるようにしてくれる。松永は自分をシンデレラにしてれる人で、そして詩春は松永の身体と、その優しさに触れると泣いてしまうのである。


の5年間、詩春は松永と会う機会が減り、いつも一緒にいる人から彼がテレビの中の人になっていった。そしてメディアで華々しく活躍する彼と自分との差が埋まらないことが辛かった。これは詩春が大人になったから分かる差でもあるだろう。
そして この5年、松永は詩春と会わないように行動しているように見えた。それは松永は詩春と会うと気まずいということの証拠で、彼の方が10年後の約束を反故にしたいと言う遠回しな要請なのではないかと詩春には思えて仕方がなかった。自分は変わらずに松永を想い続けているのに、それがイコールで結ばれていないのなら ずっと苦しいだけなのだ。

そういう溜まった不安を泣きながら吐き出す詩春に松永はキスをして応える。
不安からの反転は少女漫画の絶対的な手法。でも この手法は本書の中で一切 見られないものだから突然の展開に驚いてしまった。そのぐらい本書は一般的な少女漫画とは違うことを実感した。
松永が詩春を避けていたのは一緒にいると自制心が利かなくなるから。この5年で詩春はどんどん大人の女性になっていった。約束の10年が経過する前に彼女の自由を奪ってしまわないように、松永は物理的な距離を置いていたというのだ。だが今回 詩春の不安を解消するためにキスをしてしまったので その前倒しを松永はお願いする。

こうして詩春と松永の関係は新たな名前を手に入れる。指輪まで贈っている松永だもの、2人が本当の家族に、そして双子と詩春の間にまた違う関係性が生まれるのも遠くはないだろう。…問題は先に結婚を約束していた彼との関係性の清算か(笑)