《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

王女としての強さが読みたいのに、女としての弱さが続いていく無常。

黎明のアルカナ(2) (フラワーコミックス)
藤間 麗(とうま れい)
黎明のアルカナ(れいめいのアルカナ)
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

不機嫌な姫君・ナカバを思いがけず好きになってしまった王子・シーザ。政略結婚とはいえ夫婦は夫婦!ナカバに、妻であることを自覚してもらおうと(?)あの手この手で口説くも完全に不発!!へこむシーザをよそに、ナカバに仕える従者・ロキはナカバが段々シーザに惹(ひ)かれているのを察し…?ロマンスファンタジー第2巻!!

簡潔完結感想文

  • 王子が俺様ヒーローが溺愛ヒーローに転職したら、王女も すぐに ほだされる。
  • 特殊能力「刻のアルカナ」が発動し、未来の危機と その回避が物語のエンジンとなる。
  • 従者・ロキがクーデターまで企てているのに、ナカバには将来的な展望がゼロ。

カバ、貴方は女でありすぎた、の 2巻。

やっぱり どうにもスケールが小さい。本書は国家同士の争いが根幹にあるのに、どうも太平の時代の小さなバトルを描く大奥とか、資産家に嫁いだ庶民の女性の災難ぐらいにしか感じられない。そういう世界の中で、処世術を学び、逞しく生きる主人公を好きな人もいるだろうが、壮大な設定と中身が伴っていないように思う。

もちろん まだまだ作品の序章であって、まるで婚姻後に発生する三角関係のような展開は読者に分かりやすい問題から世界観に入ってもらうための方策でもあるのだろう。ヒロイン・ナカバが誰に どう惹かれていくのかに興味を持った読者たちも多くいるだろう。その反面、壮大な物語を期待していた読者は去ってしまったかもしれない。そのバランス感覚が難しく、本書は少しロマンスに重きを置きすぎているように見える。

そして『1巻』の感想でも書いたが、どうにもナカバが現代劇の女子高生のような思考でしかないのが気になる。俺様ヒーローだった隣国で敵国の王子・シーザが溺愛ヒーローに転職したら あっという間に心を許してしまうし、その反面、人生を共にしてきた従者・ロキに簡単に洗脳され苦悩する。どちらの男性の手を取ればいいのか分からない三角関係ヒロインの王道を歩むナカバで「心が千切れそう」と悲劇のヒロインを演じている。

ナカバは ずっと差別や恋愛の「被害者」の立ち位置であって、王女としての自覚は見えない。

そこが少女漫画としては面白い部分ではあるのだが、ファンタジー作品として見るとナカバの覚悟の無さが どうも腑に落ちない。彼女は その髪色で差別と迫害を受けているのに、これまでの10数年なんの考えも持って生きていないように感じられる。敵国の王子・シーザに嫁ぐことが決まっても、ただ無為に無計画に隣国に入っているように見えてしまう。初夜の拒絶も含め、彼女が何を譲り何を譲らないかという「誇り」が見えてこないまま、ただ自我を捨てきれないだけに映る。隣国の代表として嫁に来た自分を どう使うのかという部分が不明なのだ。自国を守るために犠牲になるとか、隣国を滅ぼすために王子を骨抜きにするとか展望を持たないまま、情や情報に流され自分を見失う。

ファンタジー作品と知った読者が望んでいたのはナカバの王女としての強さなのに、これでは女としての意地しか見えてこない。意地を張り、人に刃向かう事しか知らないような描写は物語を矮小化する。上述の通り、現代の女子高生が転移・転生した訳じゃないのだから、ナカバの人生観を少しは滲ませるべきだったのではないか。


『1巻』では俺様ヒーローだったはずのシーザは、その単純さからナカバへ好意を抱くと溺愛ヒーローに一変する。だが幼稚で不器用なシーザの好意は上手く伝わらず、プレゼント攻撃はナカバに2度目の平手打ちをくらう結果になってしまう。
ならばと今度は買い物に出かけナカバの欲しい物を買ってあげようとする。だがナカバは何も欲さず、険悪ムードでの帰り道で発見した負傷した鳥を連れ帰ることを望む。シーザが それを許すとナカバは笑顔になる。この一件が2人が互いを理解するための一助となる。

そしてナカバも、シーザからの贈り物は気まぐれなどではなく、ナカバに似合う色を選んだ品だということに気がつく。シーザが自分の名前を呼ぶナカバに存在を認められたと思ったように、ナカバもシーザからの贈り物に温かさを感じたようだ。

笑顔が見たいのは その人への好意から。そして自然と笑顔が出るのは敵対心が消失したから。

んな頃、ナカバの母国から彼女が幽閉状態にあった時に部屋を訪ねて来てくれた子供・リトが従者として送られてきた。母国にいた頃のような気持ちになったナカバだが、シーザの食事に毒を盛られていたことが判明し、ここは権謀術数が渦巻く敵国内だということを思い出す。

優れた嗅覚で食事から異臭を感じ取ったロキが毒の存在を実証するために食事に口をつけ 血を吐く。その血に誘発されたのか、ナカバは その夜、再び母が死んだ時の過去を視る。そしてロキから それが「刻(とき)のアルカナ」という能力だと知らされる。それはナカバの父親の一族が持っていた能力だという。

それを知ってナカバは、その前に見たシーザの部屋で刃物を振りかざす者がいる場面が「未来」であることを知る。ここから、何度もナカバの能力が発動し、ナカバが未来視で見る顔のない人物や犯人が誰なのか、また未来視を回避できるか、未来を改変できるかなど短中期的な展開が用意されて、読者を飽きさせないような構成になっている。
そしてナカバの未来視も一から十まで物事が見える訳ではないから、意外な犯人の上に意外な真相があったりする。


シーザに刃を向けたのはロキ。だが それはシーザの部屋の毒蛇を退治するためだった。しかし妻の従者とはいえ身分違いの者が簡単に出入りできる王子の部屋というのは いかがなものか。そして その前にロキは どうやってシーザの部屋に入ったのかが謎だ。この辺は ご都合主義のように思える。

今回、シーザを暗殺から救ったのも彼の信頼を得るためだった。シーザの命を助けたいという気持ちはロキの中には一切ない。そしてロキの最終的な目的は亜人たちを集結してクーデターであることが明かされる。彼が隣国に嫁ぐナカバに従者として同行したのは隣国に入る口実でもあったのだろう。従者は狂犬であった。

そんなロキにシーザに心を許すなと言われナカバはシーザに冷たくしてしまう。ただ その一方で それに罪悪感を覚えつつある自分がいる。シーザの善性を認め、そして それを愛おしく思い始めている。


カバが毒殺と毒蛇の犯人だと王の御前で尋問を受ける。それを庇うのが夫であるシーザだった。妻の気質をよく知っているため毒殺などという間接的な手段は選ばないというのが彼の言い分。守られた形になったナカバだが、シーザからの信頼は いつか彼を裏切る自分の痛みになって反射する。

迷いのあるナカバにシーザは愛を確かめようと、嫌っていないなら夜の逢引を申し出る。暗殺の絶好の機会であるとロキに言われるが、ナカバは もう彼に刃向かうことが出来ない自分を自覚している。

その夜、アルカナが発動したナカバはシーザの危機を察知し、その阻止に向かうが、彼女も またシーザが落ちた古井戸に落とされる。そこでシーザから暗殺の絶好の機会だと言われるが、ナカバには出来ず、2人は互いに浅からぬ情を持っていることを確かめ合うことになる…。


国力に差がある隣国。だがシーザの国はナカバの国を壊滅させたりしない。今回の休戦、そして その象徴のナカバとシーザの結婚には何か裏があるらしい。早々に惹かれ合う次世代の王族たちが、この真相を暴くのあろうか。