《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

何も考えずに読める少女漫画だけれど、何かを考え始めたら こちらの頭が痛くなる。

三神先生の愛し方(2) (別冊フレンドコミックス)
相川 ヒロ(あいかわ ヒロ)
三神先生の愛し方(みかみせんせいのあいしかた)
第02巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

一途すぎてピントはずれな三神(みかみ)先生のことが、本当に「すき」だと気づいたなつめ。2人はナイショでおつきあい中! ところが、三神先生の弟・響くんがアメリカから突然の帰国!! なつめをめぐる大人げない兄弟ゲンカがはじまっちゃって!? 別冊フレンドで大人気☆ 兄から、弟から…溺愛2倍の第2巻!!

簡潔完結感想文

  • 記憶喪失からの幼児退行。『1巻』の惣介の要望「保育士と児童プレイ」が実現!?
  • 惣介の弟・響が登場し、無自覚ヒロインを巡る決闘が始まる。わぁ 夢みたい(棒)
  • 性行為を覚悟するはずが未遂、帰国したはずが来日、読者人気でエンドレス虚無。

『三神先生の愛し方』の読み方を読者が学ぶことになる 2巻。

3回の短期連載が延長して定期連載として続いていく本書。
このパターンは少女漫画には よく見られる方式で、主人公たち2人の背景や過去を用意したり、新キャラが登場したりと物語に厚みを持たせる試みが行われる頃である。…が、作者は新キャラこそ登場させるものの、物語に新たな方向性などは全く用意しない。現状維持のラブコメに身内キャラを追加していくだけとなった。

三神家の血は1人の女性にしか反応しない。全8巻の主題は それだろう。それだけだろう…。

これは作者が会社員と漫画家という兼業をしていることも影響しているのだろうか。通常の専業作家なら定期連載に本腰を入れるためにプロットを練り、新設定や新展開を用意するところだろう。だがフルタイムで働いているであろう作者には仕事時間が決まっており、そして それは漫画作業に割ける時間が変わらないことを意味する。なので定期連載化しても、作業量の多くなるようなことは出来ず、当初の路線の継続が最優先されたのではないだろうか。

この手法は一長一短であろう。まずメリットとしては読者の人気を得た基本路線を変更しないことは、読者の望む物語を提供し続けることと ほぼ同義であろう。定期連載になって変に気張ってしまうよりは、どこまでも作品が安定する。初めて連載や定期連載に臨む新人作家さんで、ドラマを作ろうと必死になり何もかもを盛り込み過ぎて、結果 誰も得をしない暗い物語になったりする実例を何回か見てきている。その時点での実力と分不相応な物語への野望は、作家人生の将来まで奪いかねないので、重すぎる過去やトラウマを用意しなかった点は読者として安心できた。

ただ定期連載になっても、路線変更しないままだと登場人物に厚みが出ないのは短所だろう。特に本書は既にヒロインたちが両想いになっているので、することがない。物語の「縦軸」となるものがないまま、ダラダラと新キャラを増やして遠浅な物語が続いていくだけで、やがて読者も飽きていく。

早くも主人公・なつめ は、少女漫画のヒロインという概念なのかな、というほど個性を失っていく。感情のコントロールや察知能力は小学生並なのに、性行為への欲求は年相応というアンバランスさで、萌えアニメロリコンキャラのような気持ち悪さと わざとらしさ がある。

せめて定期連載化した直後は なつめ と惣介(そうすけ)の2人の人物像を深掘りするようなエピソードが読みたかった。『2巻』からは女性キャラも母親も一切排除した逆ハーレム漫画に特化していって、物語にストレスはないが、記憶に残る場面も無くなる。この虚無が『8巻』まで続くというのだから恐ろしい。


5話。学校内で迫って来る惣介を拒絶した時に、彼が頭を打ち記憶喪失になる。5歳児となった惣介との日々が始まる。『1巻』で惣介が「保育士と園児プレイ」を所望していたが、それが実現された形となった。
そして5歳児は1人で お風呂に入れないから なつめ が身体を洗ってあげる。しかし中身は子供でも、見た目は大人なので なつめ の方が緊張してしまう。読者を喜ばすための無意味なエロシーンが挿まれて、風呂上りに2人は一緒に なつめ の成長アルバムを見る。この際に出てくるのが、惣介の4歳年下の弟・響(きょう)。先生には弟いたんかい!と思うが、これは三神家の最初の刺客である。最初の敵は最弱、というのは物語の お約束である。

4話は惣介の1日高校生、5話は1日5歳児。定期連載になってから一層 ネタに特化している。

いつもは惣介の過剰な愛情に辟易している振りをしている なつめ だが、惣介が自分を愛してくれないと それはそれで寂しいという面倒臭さを発動する。記憶が消去された惣介が別の女性を愛する可能性に気づき、彼を独占したいと願う(他の女性との前で)。
その女性を強制排除した後、2人きりになり、彼にキスをし、誰よりも好きだと惣介に伝える なつめ。お姫様のキスで王子の記憶が戻る、のではなく、ここで惣介のネタばらしがある。まぁ、あんなセクハラ5歳児はしないよね…。
そしてラストには響が登場。長期連載となったからこそ可能な次回への引きである。


6話。エリートの三神一家の響は22歳にしてアメリカの一流大学を飛び級で卒業した会社社長という とんでも設定(もちろんイケメン)。今回は視察ということで なつめ の高校に来たらしい。

女性に冷淡な響だが なつめ だけは特別のようだ。そして今回は響というライバルが出現して惣介が なつめ を独占しようとする。スパイスとの対比で糖度が高く感じられる効果を狙ったのだろう。

響の日本での住処は実家、ではなく なつめ の家。この辺りから当たり前のように なつめ の両親は存在が抹消されている。こんなに風な無理が生じるぐらいなら、いっそ白泉社方式で両親を不慮の事故で亡くした設定の方が まだ現実感と読者のヒロインへの同情が湧くだろう。そして惣介と響は、なつめ を巡るライバルということもあり、昔から仲が悪く ひとつ屋根の下で2人きりでいたくないから3人での共同生活が始まる。アメリカ帰りの親族との共同生活って、「別冊フレンド」の先輩・渡辺あゆ さん『L♥DK』かよっ!

それにしても響は いつからアメリカに行っている設定なのだろうか。なぜ響だけアメリカに行ったのかなどは絶対に説明されない。なぜなら全ては後付けの設定であり、作者は そんな小難しい設定は本書に必要ないと思っているからだ(邪推)。

響も当たり前のように響も なつめ を溺愛していることが発覚し、なつめ の知らない所で兄弟の決闘が始まる夢物語が開幕する。


7話。なつめ の誕生回。惣介と響の それぞれがデートプランを立て、その優劣を なつめ が決める。この勝敗が なつめ の交際相手の決定となる。

学校でもアホな争いを繰り広げるが、響の服のボタンに なつめ の髪が引っ掛かり、そこで2人が急接近。それを見た惣介が嫉妬によって暴走。なつめ の無防備を責め、そして響も邪な気持ちを持っていることを指摘する。更には惣介kが、なつめ は響のスキンシップを簡単に受け入れる尻軽女のような発言をしたため なつめ は反発。

こうして誕生日は響と過ごすことにする。『1巻』の惣介の誕生回でも、嫉妬から間違った選択をしてましたよね。早くもデジャヴである。

響は なつめ のために自炊をしようとするが失敗。結局、お金に物を言わせて豪華クルーズディナーとなる。昔からずっと惣介のことを想う なつめ に対し、響は2人でのアメリカ行きを打診する。だが そこに怪盗が現れ…。

響は それで気持ち的には諦めるのだが、なつめ は無自覚に3人で誕生回をしようとする。天真爛漫という名のバカが はびこるのが少女漫画ヒロインである。


8話。惣介に敗北したことも関係して、響はアメリカに帰国するという。だが その前に なつめ と1日デートを試みる響。

しかし行く先々で妨害に遭う。もちろん犯人は惣介。この妨害の いざこざ で惣介と響がキスをしてしまい、響のファーストキスが奪われる。お金持ち設定に続いて純潔設定が出てくる。人の嘘を信じたり色々とピュアなのが響なのだろうけど、22歳の男性とは思えない。少女漫画というよりオタクがオタク向けに描いた作品を読ませられている気分になる。

こうしてデートが終わり響はアメリカに帰国。久しぶりに2人きりの時間が戻り、なつめ も惣介に身体を預ける覚悟をするが、惣介が爆睡。デートの妨害のために徹夜で仕事を片付けたことが原因らしい。性行為の完遂がいつになるかという問題をエサにして作品は まだまだ続く。

そして なつめ の「いつでも帰ってきてね」という言葉を鵜呑みにし、響が また来日。なつめ の学校の臨時教師をするという。兄弟間の決闘も まだまだ決着しないようだ。『1巻』よりも対象年齢が下がったと思うような現実離れした展開の連続である。