オザキ アキラ
ハル×キヨ
第02巻評価：★★★☆（7点）
総合評価：★★★（6点）
小春と峯田の凸凹コンビに進展!? そして嫉妬の炎に身を焦がす親友がカップルハンターとなって襲いかかる!? 峯田くんの部屋に行ったり、イジメのトラウマから救われたり。なんだかんだ仲良し（？）の2人。学園祭の空気に飲まれて、小春が峯田くんに電撃告白!? 大爆笑＆ちょびっと胸キュン！ 必見の第2巻！
簡潔完結感想文
- 学園祭でリーダーになりクラスに馴染もうとした峯田だがワンマン過ぎて皆が離反!?
- 言葉の文脈を理解できない優等生だが人間関係初心者の峯田。でも あっという間に交際。
- 交際によって被害を被るのは峯田!? 彼女の友達や家族からウザ絡みを強いられて大変だ。
あっという間に交際に至るのは2度目です、の 2巻。
疾走感のある展開の速さが面白かったが、これでいいのか、と思う部分もある。なぜなら彼ら、小春（こはる）と峯田（みねた）は明確な恋心を持たないまま、相手にちゃんと好きだと伝えないまま交際を始めるからだ。
でも結果的に これでよかったのではないか、と思っている。少女漫画としては いかに その恋愛感情が特別で正しいものかを演出して欲しかった所もあるが、そんなことをしていたら本書の持ち味でもある、小さい峯田の中の男らしさが見えなくなってしまうのではないか。それなら効率重視、結果が正義の峯田が、勘違いから相手の好意をスパッと受け入れて、一番 良い関係性を成立させようとするのも彼らしいと思う。
しかも考えてみれば、峯田という男は これまでの数々の女性からの告白を一顧だにしない男なのである。相手の感情なんて お構いなしに切り捨てていく峯田が、交際を提案すること自体が異常事態なのだ。その前例との比較を考えれば、そこには ちゃんと愛があると考えられる。それを読者側が読み取らなければならないだろう。
それに彼らが一度 恋心に悩み出したら答えが出るまで延々と時間がかかるような気がしてならない。新しい展開が見られないまま無為にページを消費するぐらいなら この先の2人を描いた方が楽しいだろう。
これは想像に過ぎないが、作家生活10年目で初めて原作なしでの複数巻の長編を描けた作者にとっては、交際編は未知の世界なのではないか。これまでの作品を1作も読んでないので分からないが、こんなにも じっくりとカップルのことを描けるのは初めてだろう。それなら知らない世界を悔いなく描いてみたいと思うのも自然ではないか。
更には小春には前科がある。『1巻』では日直を1日 一緒にやっただけの学校の王子様・氷川（ひかわ）に惚れて、そして彼に言われるがままに交際までしているのだ。だから氷川とは疑問を持たなかった交際に、峯田だけ躊躇するのは整合性が取れないとも言える。
『1巻』の感想でも書いたが、互いに失恋の場面を見られている2人は、一番 格好悪い所を見られており、そんな自分でも好きだとか つきあおうとか言ってくれる人がいたら嬉しいだろう。ましてや彼らは1学期の間で互いの良い部分を知っていっている。憎からず思っている人なら交際してみようと未知の世界に飛び込もうという勇気や心境の変化があった彼らが まず交際から始めて見るのも自然なような気がする。
2学期と言えば学園祭である。
だが何事にも手を抜けない峯田の性格が、学園祭の準備を遅らせ、そしてクラスメイトとの不協和音を発する。こうして準備作業をするのは峯田と小春の2人だけになってしまった。彼が音頭を取るのは峯田がリーダーに自分から立候補したからであった。この彼の心境の変化は何から来るものなのか。
しかしクラスメイト達のボイコットは続き、本番2日前でも準備に終わりが見えない。峯田は この学校の生徒としての自覚から馴染んでみようとした。だから積極的に人と関わるのだが、それが軋轢を生んでしまう。どうやら彼なりに人間関係で悩んでいるらしい。そんな峯田を小春は かわいい人だと思うのであった。
2人での作業が進み、あとは設置を残すのみ。自分たちの作業に峯田は満足して笑顔を見せる。そんな笑顔にやられて小春は峯田のことが（人間的に）好きだと尊敬する。だが それは峯田に恋愛的に好きだと誤解され、彼から交際を提案される。
突然の展開に驚いている小春の横をサッカーボールが通過する。志村（しむら）が校内で遊んでいたボールは、小春たちの これまでの準備をすべて破壊する。これには峯田も目を丸くしているのが笑える（状況は笑えないけど）。
2人の作業を見守っていたクラスメイト達は この事態には峯田の味方になり、志村を こらしめる。共通悪が存在することでクラスが団結したと言え、ある意味では志村のグッジョブなプレーとも言えなくもない。
だが破壊によって準備の完了は絶望的で、たった1人を除いては諦観が漂う。諦めないのは峯田だけ。絶望を口にする生徒に対し、これまで通りの口調でムダ口をたたくなら帰れ、といい、味方がまた離れていきそうになる。だが彼らは峯田の指示のもと、準備を続けることを選んだ。
この回では峯田 VS クラスメイトという構図をハッキリさせるために、本来なら小春の味方ではあるはずの友達2人（まるちゃん と たまちゃん）は作業班が別だという理由で ほぼ登場しない。これによって峯田が独力で奮闘することがクローズアップされている。
こうして本番を迎える学園祭。小春たちのクラスは学校の王子で、小春の元カレである氷川との写真撮影を餌に売上を伸ばしていく。峯田・小春・志村の3人は、その宣伝で黄門様御一行として校内を練り歩く。
模擬店の準備は間に合ったが、小春は峯田に告白と受け取られ、交際を提案されたことに戸惑い続ける。
だが小春からグイグイ告白したような形にはなっているが、峯田も志村に対して嫉妬心や対抗心を見せたりしているので彼の方に小春への好意があることは読者には明らかになる。それに好意がなきゃ、あの峯田から交際を提案したりはしないだろ。
どうやら勉強一辺倒だった峯田にとって、小春との交流は人生で初めての人との関係性で、一緒にいて苦じゃないから、もっと知りたくなったようだ。だから一緒にいたい。じゃあ『1巻』で登場した中学時代に好きだった女性は どういうポジションなのか、と聞きたくはなるが…。でも小春とは色々なことに格差がありすぎて対抗心や敵対心が生まれないのは初めてなのだろう。
そして氷川が過労で倒れた後には峯田が女性集客の餌になる。渋る彼を動かすのは小春の交換条件。これを達成したら彼女になるという。こうして2人の交際は始まる。上述の通り、いささか不完全燃焼とも思えるが、全力ダッシュで読者の人気を維持するつもりなのだろう。
だが1話の氷川の時と同じく、友人たちは小春に春が到来したことを喜ばないことが予想される。小春は峯田の「彼女」として お昼ご飯を一緒に食べたり、一緒に帰ったりすることを思いつくが、それが友情の裏切りになるので出来ない。
けれど峯田に口裏を合わせてもらうことが間に合わず、志村に小春をディスられたことに怒った峯田が小春との交際を話してしまい、クラス内で噂になる。間接的に小春の裏切りを知った親友の まるちゃん と たまちゃん は無言で小春の席を蹴り続けるばかり。ここには笑った。
小春は一生懸命説明するが、裏切り者の言葉は彼女たちに響かない。
そうして彼女たちは小姑のようにネチネチと峯田を いびる。なぜ この2人には峯田の謎のフェロモンが効かないのだろうか。この設定の謎は どこかで解き明かしてもらいたかった。
彼女の友達たちの陰湿さに嫌気が差した峯田は放課後、小春を 掻っ攫う。それを志村たちを動員して追う まるちゃん。2グループによる邪魔される運命だった彼らを救ったのは意外な展開だった。
それが志村の友人の1人と たまちゃん の電撃的交際だった。こうしてバランス感覚が難しい仲良し3人組の女性グループで、これはでは（彼氏持ち）1対2（彼氏なし）だった3人の構図が、2対1になり大逆転する。この展開も笑った。2次元が繋いだ絆とはいえ、呆気なく3次元男に陥落する たまちゃん。そして まるちゃん も たまちゃん の豹変に呆れて、小春への敵意も消失し、反対勢力はいなくなった。これからは幸せな日々が待っている。
続いては初デート回。
初めてのデートに悩む小春だったが、容姿は出掛ける前に母がチェックして、いつもとは違う出来上がりになる。
それを見た峯田は当然 驚くが、その前に小春の変化を見ていたのが志村だった。彼は街中で見かけた その女性が小春だとは知らずに一目惚れする。志村が その幻の女性＝小春を追っていることを知った峯田は、街中でのデートを中断し、お家デートに切り替える。学園祭から、もしくは幼稚園が一緒という幼なじみ設定から峯田は志村の動きをかなり警戒しているように見える。そう言えば峯田自身が、幼なじみの男女は一気に男女の関係になりやすい、と教訓を持っていたなぁ。最大の仮想敵なのだろうか。
志村から逃げるように向かった先は小春の家。小春の家族は巨人族。家族構成は両親と小春、弟・小太郎（こたろう・小6）の計4人。家に上がって、少し家族と歓談した後、2人は小春の部屋に入る。これで互いの部屋を見たことになりますね。
自室という話題から『1巻』での熱中症で倒れた際の、峯田の部屋で見た卒業アルバムと、その中に入っていた好意を寄せていた女性の写真の話となる。小春は自分が彼女だが好きだと言われていない不安もあって、峯田の心がまだその女性にあるのではと思ってしまう。
そこで小春は峯田と距離を取り、その間は峯田の相手は小6の弟となる。それを知った強引な母親によって峯田は夕食を食べることになり、それまでに2人で犬の散歩をしに行き、そこで会話が再開される。もしかしたら娘の窮状を知った母親の気遣いかもしれない。
小春は写真を持っていられるのも嫌だけど、簡単に捨てられるのも、その峯田の執着のなさが やがて自分にもブーメランとなって返ってきそうで怖い。食事の際も そんなワガママな小春は落ち込むが、峯田は小春の家族に対して、彼女が自分の世界を広げてくれて感謝していることを述べる。こうして家族からの信頼を得て、峯田は帰っていく。
まだ残る気まずさを消そうと小春は峯田に駆け寄る。すると峯田は写真の存在を忘れることを選択していた。大事にしないが、捨てもしない。それが峯田の選んだ道。これなら小春も納得できるだろう。
そして最後にヘアアクセサリーを小春にプレゼントし、彼女を引き寄せ頬にキスをする。彼なりに初デートで果たすべき目標が あったのかもしれない。ポーカーフェイスで分かりにくいが、峯田も緊張していると思うと やっぱり一層 可愛く見える。
