オザキ アキラ
ハル×キヨ
第03巻評価：★★☆（5点）
総合評価：★★★（6点）
妙にグイグイ来る峯田に小春はキャパオーバー。そんなフリーズ寸前の最中に「上からメガネ」のさらに上が現る！ もうサポート終了のおしらせ!! なんやかんや付き合い始めた小春と峯田。意外に積極的な峯田にドキドキの小春ですが一方、峯田は志村の動向にヤキモキ。そんな中、イギリスに留学中の峯田兄が現れて、事態は思わぬ方向に急展開!! 【同時収録】番外編 コタ×ハル
簡潔完結感想文
- 仮想敵を早めに処理しようと開いた合コンだが、結果的に峯田の一人負け。
- 季節イベントと迷惑な親族によって連載を乗り切る白泉社方式が はじまる。
- 兄の人格と役割は この後2人の人物に分割されて、兄の存在意義は皆無に。
良くも悪くも長期連載コースに乗ったことが確認される 3巻。
この『3巻』からバレンタインデーなどの季節イベントに加えて、個性的な親族を登場させるという連載の方程式が確認される。だが この長編コース突入によって本書の個性が失われていったのも確かである。これまでは不器用な小春（こはる）と峯田（みねた）が それぞれに失敗しながらも歩み合うという甘酸っぱい青春が描かれていたが、そこに峯田の兄という「大人側」の介入があることで彼らが事件に巻き込まれるだけの展開が生まれてしまっている。
あまり読者から好意的に受け入れられていないであろう峯田の兄。その原因は何より、峯田の兄が これまで作品内で直接 揶揄されることのなかった小春・峯田の身長問題を辛辣に評するからではないか、と思う。「峯田をグレードアップさせた」ような人と評される兄だが、峯田も空気を読んだりすることはしなかったが、人を傷つけたりしなかった。でも峯田兄は自分の優位性を守るために、よく吠える。そして その吠え方も相手を下げることに集中しているから、不快感が湧き上がる。同じ空気を読めない兄弟でも、兄は作品内の雰囲気を壊す独善的な毒舌だから嫌われるのではないか。
また完読、そして再読してみると兄の役割は終盤登場の2人の人物に分割されており、兄自体の作品における存在意義は低下する。やや不発に終わった兄の役目を、終盤で もう一度 違う人物によって担わせていることが、内容の重複に感じられるようになる。連載は先が見通せないとはいえ、早めに遠距離恋愛危機を描いてしまったのは失敗ではないか。
内容を再構成できるのであれば、三角関係の一角を担う志村（しむら）の台頭と その恋心の自覚を三角関係担当の『3巻』で終わらせ、その後の三角関係が膠着状態となったところで兄が登場するのでも 良かったかもしれない。小春と峯田の交際描写を最小限で終わらせてしまっているのが惜しい。もう少し彼らの2人だけの時間を描いて欲しかった。
展開が早いことが本書のスピード感になっているが、情緒を壊すような兄の襲来だった。
初デートの終わりの峯田からの頬へのキスで浮かれまくる小春。だが峯田に惹かれれば惹かれるほど、心は狭くなっていく。峯田が浮気なんてしたら本当に校舎を半壊させるだろう。
そして その日の余波は志村にも影響が出る。おめかしした小春を小春と分からず一目惚れしてしまったのだ。その謎の女性（後ろ姿）と峯田が一緒にいる写真を撮った志村は峯田に情報を聞き出そうとする。しかし峯田にとっては それは彼女が他の男に言い寄られるも同様なので、彼に別の女性との運命を紡がせようとする。ここで何だかんだ言って小春を守っている峯田の姿が愛おしい。そして この交流を通して峯田と志村にも同士や友情が芽生えているのも面白い。
だが峯田が志村に恋人を作らせようと一緒に合コンに参加したことが小春に露見して、彼女はショックを受ける。だが状況を説明してくれたのは志村で、峯田も心からの謝罪をする。
この仲直りでイチャイチャしていた際に、小春の顔を隠している前髪が峯田の手によってオープンになり、志村が一目ぼれした相手が小春だと発覚する。志村にとって小春は、外見も内面も素敵な人だという認識が生まれる。
続いてはバレンタイン回。クリスマスも正月も峯田と会えなかったので、久々の季節イベントとなる。スキップされたクリスマス回は来年に開催されるのだろうか。
峯田は小春との交際が周知されていてもモテるらしく、下駄箱にチョコが たくさん入っている。だが自分にとって不必要な情報のため、峯田にはバレンタイン知識がない。そこで志村がつまらない入れ知恵をしてしまう。
この回から登場するのは まるちゃん に恋をする山根（やまね）くん。この後いつの間にかにグループにいるキャラだと思ったが、ここからの登場だったのか。たまちゃん は早々にカップル成立したから、最後に残った まるちゃん が これから動く恋として利用されていくのか。
小春は峯田が不在でなかなかチョコを渡せない上、過失で志村によってチョコを粉砕させられてしまう。それにショックを受けてロッカーに閉じ籠り、更には抜け出せなくなった小春に対し、これまでの色々な意地悪と そして小春からの世話に対して、志村が「オレが面倒見てやる」というのはプロポーズのような言葉を言っている。こんなこと少し前の志村なら絶対に言わなかっただろう。
その時の志村との会話で小春は峯田が多数のチョコを受け取っていることを知る。
一方、峯田はチョコを受け取ることは交際が成立してしまう事だという峯田の嘘に振り回され、チョコの返却行脚を続けていた。この話で峯田に電話をしているのは、この後に登場する兄である。
志村にネタばらしをされた峯田は ようやく この日 小春と合流する。そこで小春は志村から伝えられた男がチョコよりも喜ぶプレゼントを渡す。志村によって遠ざけられて、志村によって近づいた2人である。学園祭で物を壊したり、今回も2人に いらぬ距離感を生んだりするが、志村は ちゃんと責任を取っているだけ偉い。本当に謝れないプライドが高いのは この後 登場する兄である。
峯田の兄が学校に襲来する。
峯田をグレードアップさせたような、超上から目線な人。ちなみにイギリス留学をしているという設定で、一定期間の滞在の後は物語外に行く運命である。。
色々と煩い兄を峯田は鬱陶しく思い、遠ざけている。そして兄は小春を見て珍獣扱いする。志村からは怪物、兄からは珍獣と呼ばれるヒロインって一体…。
そして兄は小春との交際を知りショックの余り、峯田を矯正しようとする。だが小春の天然は時に峯田の兄も振り回す。そして弟も変わってしまったことを実感した兄は、弟を自分のそばに、イギリスの留学先に招こうとする。こうして2人に遠距離恋愛の危機が訪れる。早くも最終回かな、という展開だ。
この時、峯田は兄に対して キッパリと拒絶する。小春も妨害を試みるが、部外者だと 突っぱねられる。実力行使に出ようとする兄を制止したのは弟の機転だった。志村の時と同じように、格好悪い写真を撮影して、兄の威厳を全て剥奪する。写真1枚で大逆転できるのは良いことでもあり、怖いことでもあるなぁ。
だが それでも兄は諦めず、甲斐甲斐しく弟の世話を焼く。再読してみると兄の役割は この後 2人の人物に分割されて言っているような気がする。交際反対派は「出張中」だという峯田の母親に、そして愛すべき峯田のお世話係は家政夫に任される。要するに後半は兄の存在意義はないと言えるし、兄と同じことを繰り返すのが終盤の展開とも言える。読者は既に主役の2人が大好きだから連載が続行するのは嬉しいが、いかにも やることのない連載という印象もぬぐえない。
兄は小春の制服を着て、学校内で峯田のためにならない教師の授業や生徒の能力について文句を言い続け、峯田や小春に苦い思いをさせる。こうして再び兄弟は離反してしまうが、小春が気にかけるのは兄の方だった。
弟がいる上の兄姉という共通点から小春は兄の気持ちも分かる。そして対話の中で お兄さんが峯田のことを誰よりも愛し、そして その能力を認めていることも発覚する。
そして大きな愛から弟を最高の環境に置こうとする兄は留学話を進める。そこで小春は学年末テストでの成績の向上、いや1番を取ることを目標にする。平均点前後の小春にとっては大きな挑戦。
一方、兄のいる家には帰りたくない峯田は、志村たちと勉強合宿をすることで兄との接触時間を少なくする。それにショックを受けた兄は、小春の教師役を買って出る。兄弟の争いは、小春と志村による代理戦争の様相を呈するのだが…。兄よ、早く帰れ、と峯田のようなことを思った読者は少なくないだろう…（苦笑）
