タアモ
あつもりくんのお嫁さん(←未定)(あつもりくんのおよめさん(←みてい))
第01巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
田舎で暮らす中学生の錦は、勉強が大好き。でもじつは、親が決めた許婚がいて地元での生活にちょっと息苦しさを感じている。そんなある日、東京からやってきた高校生の敦盛と出会う。独特の価値観を持つ敦盛は、地元から逃げ出す方法としてまさかの結婚を提案! 敦盛に強く惹かれていく錦は、猛勉強の末、彼を追いかけて東京の高校に進学するけど…!? 「たいようのいえ」のタアモ最新作。
簡潔完結感想文
- 殿様 × ツンデレ × それでいて溺愛。動じていないようで動揺している敦盛の反応が見もの。
- 御曹司への恋は一つのキッカケ。最初から全てを自分の手で切り拓いているヒロインが◎。
- 許婚や親の紹介を蹴って自分の選んだ人と人生を歩もうとするからゴールが最初から結婚。
根拠のない自信の俺様ヒーローは嫌いだけど、殿様なら仕方ない、の 1巻。
タアモ作品の特徴と言えばヒロインの独特な言動だろう。自分に自信があっても無くても妙な発言をしてしまうのがタアモ作品のヒロインで、彼女たちの一風変わった思考が そのまま発言に表れ、作品に おかしみをプラスしていた。
本書のヒロイン久保田 錦(くぼた にしき)も そんなヒロインの一人。地元にいても新天地に来ても悩みは尽きないが、ポジティブ思考で やれることをやってみる性格で とにかく清々しい。彼女の人生を変える一言をくれた敦盛(あつもり)に対しての好意を隠さないのも彼女の可愛さに変換される。
そして これまで私が読んできた3作品の中で一番 努力を怠らないヒロインでもある。地元や親の しがらみが多い錦は、自分の人生を切り拓くために勉学に勤しんでいる。時に挫折しそうになっても やれることからやって、自分の力を蓄え続ける。
今回は相手役が御曹司ということもあり、女性が理想的なハイスペック男性に会って人生を変えてもらう というシンデレラストーリーにも読めるが、物語の根幹は錦の自立である。彼女は敦盛に助言を求めたり、早々に彼との結婚を目標にしたりするが、彼に自分の人生を委ねようとはしていない。飽くまでも対等に並び立てるような存在になることが錦の目標なのが現代的な設定である。
そして その相手役の敦盛が本書独自の大きな特徴となる。初登場から どこか偉そうな敦盛は不遜であるとか俺様ヒーローだとか誤解されそうだが、彼を形容するのは「殿様ヒーロー」という言葉がピッタシだと思う。その2つのヒーローの違いは、物事や世界を大局的に見ているか という部分ではないかと思う。敦盛は世間の厳しさを熟知しているから、自分のなりたい自分になれるまで彼は努力を続けている。そして15年以上続けた たゆまぬ努力が彼を形作り、その揺るぎない意志が横柄にも取られかねない発言に繋がっている。
どこから その自信が湧いてくるのか分からないような俺様ヒーローは嫌いだが、敦盛は自信を持つだけの努力が ちゃんと描かれている。そして彼は俺様ではなく殿様だと思えば納得がいく。私のイメージとしては織田信長が この時代に御曹司として転生してきたら こんな感じなのではないか、と思う。人を寄せ付けない雰囲気があるが、一度 自分が気に入った者には手厚いフォローをするのが殿様の生き様のように見える。時に不遜に感じられる発言も そこに嘘がない。彼自身は とても素直であることも感じ取れる。
そんな唯我独尊の彼が、時に錦の言動で少しペースを乱しているのが本書の面白さとなる。独特ヒロイン × 独特ヒーローの相乗効果が面白さとなる。序盤の錦は自分のことで頭がいっぱいで敦盛のことを よく観察できていないが、『1巻』だけでも敦盛の目の下が赤くなる表現が何回も見られた。互いの正直な言動が、相手の心に刺さっている(無自覚)というシチュエーションが本当に良い。媚びない彼らの関係が 作品のキレとなっている。
変わらないヒロイン像だが、作品を重ねるごとに個性的な絵になっていくように思う。特に本書は、話が進むほど鋭角的な線が多くなっていった印象だ。特に男性陣の顔は どれも似通って見えて、もう少しバリエーションはないものかと思う。私は あまり絵には こだわらない方だが、もう少し分かりやすい柔らかさがあると もっと万人に受けるのではないかと強くなっていく絵の癖を危惧する。
ただ絵は気になる部分が出てくるが、絵に癖を感じる頃には癖の強いキャラに馴染んでいて愛着が湧いてきている。再読するとブレない敦盛の言動は初登場時から格好よく見えるから不思議だ。表層的な俺様のキャラ付けほど無理矢理な設定でもないし、敦盛は いきなりキスをするなど意味不明な言動を取らない。殿様の御心を下々の者が理解するタイムラグはあるが、殿とご一緒していると どんどん彼を好きになるカリスマ性を感じた。
中学2年生のヒロイン・錦には年上の許婚がいる。許婚という旧態依然とした婚姻制度、そして これが家父長制による女性の不自由な生き方の象徴となる。
錦は恋愛よりも勉強が好き。大学に進学したいのだが、経済的問題というよりも父親の制約が彼女の人生を限定していく。そして その許婚の男性・宝(たから)は友人・かのか(通称・かの)の幼馴染みであり、かの の好きな人という難しい立場である。錦は勉強ばかりの自分にも優しくしてくれた かの を悲しませたくない。だから錦は何とか許婚との関係を解消したい。
宝の亡くなった父親が、錦の父親と友人関係で、どうやら宝の家は地元では由緒正しい家系のようだ。だからこそ父は、就職が決まり将来安泰の宝と錦をすぐにでも結婚させたい。結婚は高校卒業直後というのが父親の夢で子供も3人と夢想する。そして宝は その夢を否定しない。宝が錦を憎く思ってはいない、というのが錦を さらに悩ませる。
ある日、秋田の錦の家に東京から祖父と祖父の友達2人が泊まりに来る。予想と違い祖父の友達は祖父とは50歳近く離れた男性であった。その男性の1人は前日に錦が甘味処で会った人だった。その彼を色恋にあまり興味がない錦が一目で顔が好きと判断していたのは運命なのか。だが再会した彼は錦のことをイタチと呼び、横柄な態度を取る。
敦盛と呼ばれる この青年は錦より2学年上の高校1年生。どうやら お坊ちゃんらしい。そして自信家であることが言動から読み取れる。もう1人は西条(さいじょう)という男性で、高校1年生の敦盛を「さん」付けしている所から、お坊ちゃんに仕える立場だと推測される。
到着早々、敦盛は勉強を始める。その光景を見た錦は共感を覚えるが、どうやら東京の彼の学校では普通の光景らしい。錦にとって東京は憧れの地だが、そんな東京から彼が来訪したのは この地の祭りを観るためだった。
その祭りに敦盛は西条を置いて錦と2人で向かう。その中で錦は、敦盛が医者の家庭に育ったこと、将来が生まれた時から決まっていたことを知る。どうやら敦盛は錦が想像もつかないほどの厳しい道を進んでいるらしい。
そして祭りの参加者の中に かの と宝を発見した錦は自分が邪魔者であることを再確認し、消えたい気持ちを覚える。そんな錦の事情を知った敦盛は、逃げることを提案する。そして自分と駆け落ちする度胸があるか錦に問う。錦がするなら敦盛も厳しい家から逃げてもいいと言うのだ。
一度は冗談にする敦盛だったが、再度 彼女に東京に来る選択肢を提案する。地元を離れれば軋轢はないし、声も届かない。東京で自分の人生を見つければ親から自由になれると敦盛は言う。年齢差や環境差もあり、大きな視点で物事を見つめるのが敦盛という人間の長所に思える。
だが錦がその提案を呑んだことで、敦盛は疎外感を覚えたようにも見えた。どうやら錦への提案で かえって自分の どうにもならない自分の人生に敷かれたレールを思い出したようだ。
錦は祭りのメインイベントである空に浮かぶ 幾つもの紙風船を見て、自分の人生の自由を目指す。そして敦盛に東京に行き彼氏ができなかったら責任を取って結婚してもらう約束を迫る。ここは錦のポジティブさと中学2年生ならではの視野の狭さ(または一途さ)が見える。そんな錦の性格を気に入った殿様の敦盛は、その提案を承諾する。
敦盛は東京に帰っていくが、錦は自分の運命を変えてくれる助言をした敦盛に恋をしていた。彼を知りたいという欲求のあまりSNSで彼の名前を検索すると、敦盛の友人らしきインスタのアカウントを発見し、錦はフォローすることで敦盛と間接的に繋がる。なかなかストーカーチックだが、錦にとって敦盛だけが東京への架け橋に思えるのだろう。そして錦は東京に住んでいる祖父に根回しにした後、父親に東京行きを懇願する。父の拒絶にも錦は引かず、無理を押し通し、高校の3年間の猶予を貰う。息が詰まる この地の生活と別れ、東京への道は開かれた。
そこから1年間 錦は勉強を重ねる。初登場で錦が中学2年生だったのは丸々1年間を勉強に捧げるためだろう。敦盛が来訪したのが冬だから中学3年生設定では絶対に間に合わなかったのだろう。こうして錦は東京の高校に進学する。そしてインスタで見た敦盛が よく行くカフェで早速 彼を発見する。だが再会した彼は錦を認識しなかった…。
憧れの人を追って中学生ヒロインが進路を変えるというのは少女漫画あるあるだ。ヒロインは どんなに おバカでもヒーローが在籍する難関校に合格してしまうが、本書の場合は ちゃんと勉強好きという下地があるし、勉強に打ち込む期間も長いから納得できる。そして錦は恋に生きるために進学するのではなく、自分の人生を自分の足で歩くために進学先を選んだという理由が大きい。本書は現実と恋愛のバランスが非常に良い。
自分のことを覚えていなかった敦盛に、錦はデートや結婚話を彼に告げ思い出してもらおうとする。だが その話に興味を持ったのは敦盛と一緒にいた伏見 蓮人(ふしみ れんと)だった。敦盛は錦の話を聞かず退店してしまうが、蓮人は錦と話を続ける。どうやら彼も御曹司で、実家は有名な和菓子屋だという。
錦は自分の身の上話を蓮人に話すことを躊躇するが、そんな錦の戸惑いを悟った蓮人はスマートに主導権を握り、錦と敦盛の間にあったこと聞き出す。さすが都会の御曹司といったところか。そして錦は蓮人の送迎付きの お坊ちゃんぶりを目の当たりにして、敦盛とも次元が違うことを理解し始める。ちなみに蓮人は錦のアカウント=ニキが彼のインスタを熱心にフォローしてくれていることを知っているが、錦が加工写真で登録しているためニキが錦だとは知らない。この設定は どこかで伏線になるのだろうか。
ちなみに付属中学もある この学校で、敦盛と蓮人は女子生徒から ずっと人気が高いらしい。
祖父の営む喫茶店に帰った錦は、敦盛と一緒に秋田に来た西条と再会する。西城は錦を覚えており、錦は彼との思い出や約束が夢でないことを再確認する。ちなみに祖父は妻に先立たれて ずっと一人で東京に暮らしているという。錦の母が祖父の娘である。
敦盛を頼って入学してきたような錦だったが、クラスメイトたちから錦の中の「標準語」が訛っていると言われて泣き面に蜂状態。そして得意であるはずの勉学でも学校のテストが全然わからなかった。家への下校の道順もあやふやで困っているピンチのヒロインだったが、校門前で会った敦盛は助けを求める錦の声を無視する。
東京に来たが孤独で、しかし地元に帰る訳にいかない錦。公園でブランコに揺られながら涙する錦に敦盛が声をかけ、そして自分の車に乗せる。その車の運転手は西条であった。
敦盛は一度学校に戻り、帰宅ルートを通って帰り、錦に その道順をメモさせる。用が済むと敦盛は好きなはずの錦の祖父のケーキの誘いも断り、厳しい態度に戻る。だが その際、錦を「イタチ」と呼んだことで、敦盛が錦のことを覚えていたというシッポを出してしまう。
どうやら敦盛は自分の提案した結婚という話が錦の人生を大きく変えたことを知り、自分が錦を知らないふりをすることで錦の記憶から敦盛のことを忘れてもらおうとしたらしい。
敦盛自身は結婚に興味がないし、するにしても自分に その選択権もない様子。よって錦の面倒見られないから、彼は錦と距離を取ったのだろう。自分勝手とも言えるし誠実とも言える。それに錦を騙したことに対しては誠実に謝罪している。自分から謝れないプライドだけが高い人間とは種類が違うようだ。
そして記憶が復活した敦盛は、約束通り錦を東京の夜景デートに誘う。
その車中で西条から、敦盛と西条が2人で暮らすマンションに いつでも遊びに来てと言われる。どうやら敦盛は他の家族とは別居中らしい。ヒーローの家庭に問題があるのは少女漫画の定石だが、敦盛 曰く関係が悪いわけではないらしい。
敦盛が連れてきてくれたのはスカイツリー。だが高所恐怖症の錦は窓に近づけない。そんな彼女を面白がる敦盛だったが、彼女の手を引いて窓に歩き出す。そうすると錦から恐怖心が消えていく。
低い展望デッキに移動したため敦盛から手を離されガッカリする錦だったが、敦盛という心の支えが無くなり腰が抜けてしまう。そんな錦を敦盛は立たせ、そして お姫様抱っこをする。周囲の目を気にせず、自分の一番合理的な行動をするのが敦盛という人なのだろう。
その後、祖父の喫茶店で敦盛と一緒に夕食を済ます。敦盛の一挙手一投足が愛おしい錦は、敦盛に自分の料理を食べて貰いたいという欲望がふつふつと脇がある。
この時点では錦は敦盛に勉強についていけない不安を言えないが、地元の かの には その不安を伝える。かの は錦が相談してくれたことが嬉しい。錦にとって かの が自分よりも優れているところばかりと思うように、かの は錦の努力家の所を尊敬している。宝という存在がいなければ2人は地元で ずっと仲良く学校生活を楽しんでいたのだろう。そんな かの に助言と勇気をもらって錦は立ち直る。
物理的に腰を抜かせば敦盛が、精神的に東京の生活に腰が引ければ かの がいることが分かるエピソードだ。
そんな2人のサポートがあるから錦は公私共に頑張る。早速、祖父に習いながら敦盛に お弁当を作る。だが敦盛がいる3年生の教室では、彼と蓮人に お弁当を作ってきた女子生徒が多数いて、錦は すごすごと引き返す。クラス内ではお金持ちのチャラい男子生徒は声をかけてくるが、錦は そういう存在を望んでいる訳ではない。敦盛と かの、2人に支えられているが、クラスでは独りなのだ。
錦は敦盛のお陰で1人で帰宅することも出来るようになった。敦盛は そんな錦の下校を車中から見守っていた。それに気づいた錦は声をかけると たまたま通ったと敦盛は誤魔化す。この殿様は どうやら情に厚い様子。
だが錦は敦盛の誤魔化しを気にせず そのご褒美に通りかかった敦盛と お弁当を食べたいと所望する(作ってから随分 時間が経っているが大丈夫なのか)。
そして2人は公園に向かう。敦盛は昼食は摂らないという。それは父親が そうしていたから模倣しているだけらしい。彼自身というものは あるようでないのが敦盛なのだろう。そして どうやら敦盛の父親は一代で数多くの病院を経営するほどの才覚を持っているらしい。錦は敦盛の家の事情を聞くほど、彼を遠く感じる。
ここで錦は初めて敦盛に自分の勉強事情について相談する。すると敦盛は学校の特性を教え、参考書を買いに行こうかと提案してくれる。更には錦は気づかなかったが、敦盛は彼女に悪い虫がつかないように、わざと野暮ったく見えるように指南するの。いや、初めて出会った時から敦盛は錦の結んだ髪が好きなのかも(否定してるが)。
そして敦盛は錦との会話の中だけは楽しいという感情を素直に出せている。錦は自分を異性として意識して欲しいと欲張るが、ちゃんと敦盛にとって特別であることが読者には分かる。
微妙な出来栄えだった お弁当を完食してくれた敦盛は寝てしまい、錦は その彼にキスを試みる。が、掌底で撃退される。殿は自分の寝込みを襲うような真似を敦盛は許さないようだ。その行動の理由を臣下に問う。錦は彼に好きだと思ってもらいたいと素直に伝える。その返答に敦盛は動揺を見せるが、それを見せないよう承知している振りをする。威圧的にも感じられ近寄りがたい敦盛に これだけ自分の感情を伝える人は珍しいのだろう。
敦盛に言われた通り、学校内では髪を結んで勉学に励む錦。基礎学習など自分で出来る範囲は要点を絞って自分で済ませ、それでも分からない所は敦盛に聞くというスタイルを確立する。自分のペースを獲得したようだ。それに錦は自分の好意を敦盛に認識してもらった。それが更に前向きなパワーを生む。
そして敦盛と一緒に大型書店で参考書を選ぶ。そこで敦盛が医学部志望だと知り、錦は自分も医者を目指す。ここで扶養家族になるとか看護師を目指すのではなく、医師という同じ立場に立とうとするのが錦らしいところ。女性が夫をサポートする立場というのは 少々古いし、本書には似合わないのだろう。
敦盛が ここまで錦の面倒を見るのは、彼女の上京の状況に責任を感じているから。殿もまた責任感が強い。
その後、勉強のため図書館に移動する際、雨に降られた2人。そこで敦盛は濡れた錦を見かねて彼女を自宅に連れていく。マンションが豪邸であることに唖然としている内に風呂に連れていかれる錦。彼も入っている風呂に入っている自分に陶然とする気持ち悪い錦(笑)
そして入れ替わりに敦盛が入浴している間、彼の部屋で参考書を見てもいいと許可された。自室は心を許した者しか入れない領域。この時点で敦盛は錦をかなり受け入れている。部屋で参考書ではなくエロ本探しに熱中する錦。そこで勉学とは関係のない昆虫の本を見つけたり子供の頃の写真を見たりと錦は満たされる。
風呂に入って温まったからか錦は寝てしまう。意識が自由になったからか、夢では これまでの錦の本心が語られる。
実は錦は宝のことを初対面から かっこいい お兄さんとして認識した。彼への好意も少なからずあったが、まだ宝が錦の許婚だと知らない友人の かの の気持ちを伝えてきたため、錦も そして かの も自分の気持ちを隠して友人を優先した。だが宝自身は かの ではなく錦への好意を隠さない。それを振り切るためにも錦は気持ちを殺し、敦盛の上京の提案を受け入れた。
友情も愛情も家庭も壊れてしまいかねない袋小路で敦盛が 一つの出口を示してくれた。
これまで宝からの連絡を避けていた錦だったが、敦盛の前で宝に連絡し、彼に結婚は出来ないことを伝えることにした。これは錦にとって いつも前へ進むことを教えてくれたのが敦盛だからだろう。そして敦盛への一途さを示すためだろう。東京で錦に会いたいという宝に対し、錦は自分の道を進むこと、そして好きな人がいることを伝える。錦の精一杯の拒絶も宝は受け入れない。平行線のまま話は終わり、錦は涙を流す。
女性の涙に弱いという設定のある敦盛は、錦を精一杯 慰める。彼女の頭を撫で、自分の方に彼女の頭を寄せ、胸を貸す。が、そんな場面を敦盛の母に見られてしまう。どうやら敦盛は その日 母からの連絡を無視し、彼女が望むような縁談を間接的に断っていたらしい。そして敦盛は、錦こそが嫁候補であることを公表するが…。1話、そして1巻の完成度が高く、先が気になるばかりである。