《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

このクッションが お気に入りなのは、このモフモフ感が今は会えない あの人を思い出すから。

ラブ・ミー・ぽんぽこ!【電子限定おまけ付き】 5 (花とゆめコミックス)
赤瓦 もどむ(あかがわら もどむ)
ラブ・ミー・ぽんぽこ!
第05巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

種の生き残りを懸けて、人間の雄との婚活に励む化け狸・ぽんこ。貂の化獣・てんとの一件で新たな心境に。「私自身は番に何をしてあげられるんだろう」人間にも不確かな、恋や愛・結婚について、ぽんこつ化け狸が無い頭をフル回転!!一・真とのそれぞれの関係に思わぬ変化が…!?「優しいんだ。初めて会った時から――」「それなら…それなら俺は――」サバイバル婚活ラブコメ、心揺さぶる最終巻!

簡潔完結感想文

  • ぽんこ は怪我や病気の者に優しい。双子による重病・重症対決が始まる予感。
  • 全員が1人2役状態の本書にはアリバイトリックがいっぱい。次はミステリで。
  • 数十年後に また会おうね。イヌ科の仲間たちだけに、ワンチャンあるんで。

撃の結末を見逃すな!の 最終5巻。

オワタ。終わってしまった。
まぁ、終わることで作品も ぽんこ も永遠の命を持った、とも言えるけどさ…。

作者は虎視眈々と たんたんたぬき の婚活物語の続編を狙っている。
「ワンチャン続編が作れそうな終わり方にしておいたので数十年後の連載再開 狙ってます!」だそうだ。
本書の面白さを布教していけば、数十年を十年、いや数年に縮ませることも可能だろう。
だから私は、このネットの片隅で本書への愛を語ろうと思う。
たぬき に化かされた者は救われます。

でも こうやって読者が熱烈なラブコールを「頑張れ」ば、
やがてその要望を出版社が「吸い込んで」、本当に続編という「実がなるようにする!」ことも可能だろう。
そのために まだ明かされていない秘密も残されたままだし、
何より ぽんこ の婚活に決着だってついていない。

これ少年漫画だったら、ヒーローが まだ自分の秘められし力に気づいていないという段階です。
この後に自分の力を知り、覚醒して、強くなる伸びしろは まだまだ残っている。

ミステリだったら1人2役の二重生活のアリバイがまだ崩されていない段階です。
ぽんこつ たぬき が探偵役のヒーローにジワジワと追い詰められるシーンなんて最高のクライマックスだ。

今回の丸投げは、数十年後の未来への遠投である。
それを ちゃんとキャッチするためにも、作者も読者も健康に気を付けないといけない。
パンケーキにクリームやメープル、蜂蜜をマシマシにしてる場合ではないんだよ!

とりあえずアニメ化。話はそれからだ。

民的人気「男性」アイドルTENが、いたち山 十(てん)という女生徒して学園に転入してきた。
十は自分の反省から他者と関わる生き方をすることにした。
誰かと協力しあう、という十の生き方から、
ぽんこ は自分が番(つがい)に何がしてあげられるのかを考え始める。

十が本格的に活躍する前に物語が終わってしまった。
双子や根須(ねず)などとは絡みが一切ないのが至極 残念。

十の生き方を知り、これまで家族の安全のためだけに、
番に扶養してもらうことを最優先にしていた ぽんこ が、
夫婦としてどう労わり合うかを考え始めたと言える。
彼女の中で結婚観がガラリと変わっていった。
必要に迫られた結婚から、自由恋愛への移行となる。

この回で、担任教師や学年主任までも化獣(ばけもの)であることが発覚する。
これによってモブ顔以外は化獣という本書のルールが徹底されたと言える。
この10匹余りの化獣たちの てんやわんやの毎日をもっと見たかった。
まだまだ余力はあるし、秘めたアイデアもあったと思うのに。

この教師2人は近々 結婚するという。
化獣同士、それも異種族同士である教師たちの結婚の事例は、
ぽんこ に「人間」との結婚ではなく、化獣との結婚を視野に入れることになるのだろうか。

ぽんこ にとって結婚の選択肢が広くなり、
双子の二ノ宮(にのみや)兄弟との恋愛が始まりそうな基盤は整った。
ここからの三角関係こそ恋愛漫画の真骨頂と言えるのに…。


ぬ沢=ぽんこ はドアが老朽化した旧図書室に本を返しに行く。
当然そこで起きるのは閉じ込めである。
中にいた双子の弟・真(まこと)に驚いた拍子にドアを閉めてしまう。

真はそんな たぬ沢のぽんこつ具合を怒ることなく溜息一つで終わらす。
双子はそれぞれに ぽんこ=たぬ沢への態度を軟化させている。

だが2人きりで閉じ込められている際に空腹でたぬ沢状態を解除してしまう。
「お腹がへって力が出ない…」って、アンパンマンみたいな台詞である(笑)
こうして真に正体がバレる危機が訪れる。

こういう危機は本書で初めてですね。
危機の乗り切り方は本当に これが最善なのかは疑問だが、
空腹のことや「たくの紐」のことなどこれまでの経緯を踏まえた内容。
そして この「たくの紐」が次の(正確には前の)エピソードに繋がっているという構成も素晴らしい。
本書は単純な笑いだけじゃなくて、話の運びが実に卓越している。

危機回避のために頭突きをしたお陰で、真の気遣いが見られた。
真はデコの痛みに耐えて泣く たぬ沢に ぽんこ の姿を無意識に重ねていた。


れた おでこを真の手で冷やしてもらう たぬ沢。
ここから真の独白が始まり、彼との交流となる。
この時の場所が旧図書室というのが、この後の一(はじめ)のエピソードと相似するところで、
相手の肌に触れることで、その人の優しい心根が伝わっていく。

真の答えは、ぽんこ を誠心誠意守り抜く。
そこに兄への劣等感や自己卑下はいらない。

たぬ沢への これまでの非礼を詫び、それが自分の未熟さだと反省する真。
そんな真のコンプレックスを、ぽんこ は1話同様に消失させる。

「いつも…不器用だけど真っ先に助けに来てくれるのは まこと君だったよ」
と、ぽんこ目線を中心に彼への感謝を述べてしまう。

そして そういう ぽんこ の聖女っぷりは、真にまで たぬ沢への恋心を生ませてしまう。
毎度毎度、恋愛の舞台が整ってきた感じを出してくる。
が、その舞台の幕は開かなかった…。

真の手は天敵やピンチから ずっと ぽんこ を守ってくれた手。触れ合いが心を通わせる。

真は、たぬ沢への想いが生まれつつあり、
兄の一と同じラインに立って初めて、一がどれだけ彼女を好きかを思い知ることになる。

その差を感じ取り、自分の気持ちに蓋をしようとする真だが、
この時、怪我には目ざとい ぽんこが、真の怪我に気づいてくれたことで、
自分を見てくれる人がいる、という実感となった。
ここも1話の ぽんこ と同じことである。
怪我や病気・コンプレックスは ちゃんと治療してくれるのが ぽんこ なのである。


ノ宮兄弟と一緒に来た秋の味覚フェスで、
ぽんこ は先輩たぬき の「拓(たく)」を見つけて、2人と別れて、話しかけに行く。

フェス内では たく は人間姿なので ぽんこ もたぬ沢の姿となって並んで歩く。

その2人の男女を見た一は激しく動揺する。
そういえば一は、拓の人間姿を見てないのかな。
(読み返したら、双子が家出ぽんこを見つけるシーンの最初は人間姿だった。認識してなさそうだけど)。

拓が『3巻』から双子の前に現れてから ずっと たぬき姿だったことは、こういう誤解の伏線だったのか。
これは もっと話が続いていれば、大きなネタとして扱われた気がするなぁ。
一の嫉妬回だけで何話でも作れるだろう。
(追記:このシーンは別に拓の人間姿うんぬんに意味があるのではなくて、
    一が、たぬ沢が誰だか分からない男と並んで歩いているのを見たという事実が大事なのか)

ほぼ全員が1人2役状態なので、段々と誰が誰の姿を知っている/知らないかが複雑化してきましたね。
だから こうやって誤解が生まれたり、記憶違いが生まれることになり。

続編があれば、この設定を使ってミステリ仕立ての物語を描いて欲しいな。
今回の一は拓の人間姿を知らない、みたいな意外な盲点が結構ある気がするから、
アリバイトリックなどにはうってつけではないか。

この拓の人間姿と化獣姿の話には一つ矛盾がある。
最終回では、双子は目の前の人間姿の拓に何の疑問も持たずに受け入れているのである。
ここの拓は たぬき姿でも良かったのではないか。
最終回は全員が人間姿での登場みたいだから、縛りがあったのかなぁ。

拓といえば、その後の回想にも登場する。
この回想の中の拓は和装で、それはそれで格好いいのだが、
ここで気になるのは拓の年齢。
双子の祖父・理事長も若干若い気がするし、旧図書室が使われているから、
この回想はかなりの前なのではないか(下手すりゃ10年?)。

拓は人間年齢で言うと28歳ぐらいの若手研究家のイメージでいたけど、
本当はベテランで40歳ぐらいの中年なのか?
女子高生と本気で結婚したがる40代男性と思うと、なんか この関係はナシな気がしてきた。


連れで歩くたぬ沢の姿に動揺した一は、ぽんこ を置いて一人でたぬ沢探しをしようとする。

その背中にぽんこは声を掛ける。
「お祭り一緒に回るって約束は⁉」
なぜ目の前の自分ではなくて、たぬ沢に固執するのか、ぽんこ は憤った。
それは嫉妬とも言える感情ではないか。
最大のライバルは自分⁉
この葛藤も描いて…(略)

私という者が目の前に居るのに、どうして貴方は あの女性を追うの⁉ どっちも私ですが。

そんな中、一が体調不良で倒れる。
ぽんこ は一のことを気遣えずに自分勝手に怒りをぶつけていたことを謝罪する。
一とは家出の時もそうだったが、ちょっと衝突してから仲を深めていっている。
謝る ぽんこが また格別に可愛い。


の たぬ沢との出会いの話を聞きながら眠ってしまった ぽんこ。
そうして ぽんこ は夢の中で過去の出来事を思い出す。
ぽんこ の夢は過去を寸分違わず再現している。
これは『4巻』で ぽんこ が見た夢が未来視だという補強材料になるのかな。

1年前、1匹で人間社会に入っていった ぽんこだが、
彼女は上手く人間関係を構築できずに、学校を辞める寸前だった。

廊下でぶつかった男性が体調が悪そうだったから心配して声を掛けたが、彼は冷淡な反応を見せる。
まるで かつての真みたいだが、これは一の話。
彼は、周囲の人間が自分に話しかけるのは、
自分が二ノ宮家の長男だからでしかない、と思い込んでいた頃。
これに月一の不調が重なり、彼は鉄壁を築いていたのである。

そんな一に理事長が渡したのは「たくの紐」だった。
それによって一は半ば強制的に身体を獣に変化させていく…。

彼が 辿り着いのは旧図書室。
真と閉じ込められた旧図書室に「たくの紐」が本棚の下に落ちていたのは、このためだった。


図書室に入っていく一を見かけた たぬ沢=ぽんこ は、やはり病気や怪我を放っておけない。
その中で見つけたのは、一匹の狼。

これが一である。
二ノ宮兄弟の狼姿は初ですね。

苦しそうな表情を見せる狼(ぽんこ はシベリアンハスキーだと認定する)を膝枕してあげる ぽんこ。
一時、気がついた一は上手く意識をコントロールできずに、たぬ沢に牙を向ける。
この時、自分が狼になっていることも気がつかない。

それでも ぽんこ は看病に専念し、獣の毛並みを優しく撫でる。
こうして2人は、互いに誰かがいる温もりを感じ合うのだった。

この体験が一に たぬ沢への強烈な愛を生み、ぽんこ に婚活の意欲を復活させることになる。

こうして夢の中で、ぽんこ は一との出会いを思い出した。
というか、あの時の狼と一が初めて結びついた(はじめだけに…)。

これも一種の入れ替えトリックですよね。
一が鮮明に覚えている たぬ沢の記憶が ぽんこ に無かったのは認識の相違があったからだった。

一にとって たぬ沢は一番苦しい時に支えてくれた人。
そりゃ天使にも聖女にも思えて当然と言えよう。

これによって、ぽんこ のピンチを最初に助けてくれたのは真だが、
ぽんこ と最初に因縁が生まれたのは 一の方という状況が生まれた。
これで勝負は五分五分。
これからどうなる⁉
なんだか最終回付近では一寄りのエピソードが多いが、
ワンチャンのためにも作者はどちらにも転ぶように状況を整理したと考えるのが妥当か。


終回は、全員集合。
それぞれに見せ場が作られている。

学校の面々は相変わらず。
十は もうちょっと活躍の場面が欲しかったところ。
きんじろーの怪我も治り、ぎん とは幸せな様子。
彼らにも もう1回は個人回が欲しかった。

拓は また旅に出てしまうらしい。
もっと双子との恋愛バトルが見たかった。
成長するために東京に来たのに、また地方を放浪してしまうらしい。

最後は双子のマンションのシーン。
ぽんこ は一が新しく買ったらしいクッションを気に入っているが、
これは狼の毛並みに似ているからだろう。
忘れられない過去の男の感触を いつまでも追い続けている女性といったところか。

さて、最終回付近では一エンドの雰囲気が濃くなってきたが、
だが1話目の読切短編を読む限りは真エンドであった。
(一は ぽんこ に全く興味がない状態である)

続編では1話の結末を覆すのか、それともそのままか、
数十年後の続編で完結する未来を今から楽しみにしましょう!