《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

3巻にて第3の男が登場。そして やっぱり三角関係が始まる(準備が整った)少女漫画の3巻。

キスよりも早く 3 (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
第03巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

文乃と尾白先生は熱々新婚生活中☆のはずが、トラブル続きで忙しい毎日。その上、文化祭当日に突如先生の弟・翔馬が現れた! ところが8年ぶりに会った兄弟なのに、なぜかよそよそしく…さらに何も知らない翔馬は尾白家までやって来て…!? 文乃、究極の大ピンチ!!!

簡潔完結感想文

  • 千客万来。文化祭準備で忙しい学校内に編入生、訪問者、闖入者が全員集合。
  • 家族の事情。温和な先生が絶対零度の表情を見せる不可侵領域。父親は禁句。
  • 三角関係。本妻 VS. ブラコン弟。一馬を巡る三角関係の方が楽しかったなぁ。

も見たことのない裸を他の男が覗き見る、痴漢に注意の 3巻。

地味な眼鏡教師である一馬(かずま)には裏の顔がある。
それが元ヤンキーで百戦錬磨の荒くれ者だった過去。

今でも担当生徒で妻となった文乃(ふみの)に手を出す者には容赦なく、
「地獄の まーくん」だった頃の顔を覗かせる。

文乃は そんな先生の裏の顔を知る数少ない人間だが、
一馬には妻・文乃にも見せない顔がまだあった。

それが家族を巡る自分の過去。
文乃を妻として迎える時も絶縁したとしか話さなかった自分の事情。

それが今回、「家族」の方から一馬に接近してきた。
少しずつ暴かれる一馬の人生の遍歴。
だが、彼には頑なに見せない部分があることに文乃は気づく…。

『3巻』から最終回付近まで物語の核となる問題が描かれ始めました。

職務に励み、家事もこなす完全無欠の夫だった一馬の少し弱い部分が出てくる。
逆に 文乃は猪突猛進で、一馬と力関係が逆転する部分も見えてきた。

完璧な人でSだった男は実は弱く、彼に振り回されてばかりの女性が実は強い、
というのは少女漫画の典型的な変化の道筋ですね。
たいがい女性主人公は後半に覚醒します。


でも、この先生の家族を巡る問題、
ここから最後まで引っ張るような問題でもないんですよね。

絶縁した家族に深入りしない方が、
2人(弟入れて3人か)だけで慎ましく幸せに暮らせた気もするし。

そして2人の心の距離も随分と早く変化していて 既に最接近していると言える。
だから『3巻』のラストは あんな お城の前で終わるのか⁉
残すは肉体的な接触のみ。


中の季節は移ろい秋へ。

秋の学校イベントといえば文化祭。

「白雪姫」の王子様を演じることになった文乃だが、
不器用な性格が災いして上手く演じられない。

弟・鉄兵(てっぺい)の保育園の迎えがあるから居残りもできないという文乃に、
先生は学校側に許可を貰って鉄兵を校内に入れることを提案する。

この場面、初めて文乃が、隣人で保育士の龍(りゅう)に遠慮した気がする。
さすがに作者も龍のプライベートを奪い過ぎたと反省したのか。

いや、今回は文化祭準備でごった返す学校内に
龍なしでも、というか龍がいない方が鉄兵を校内に迎え入れられると踏んだだけか。
また別の学校イベントには龍が駆り出されるんだろうな…。


そんな文化祭準備期間の中で衝撃的な出会いをするのは翔馬(しょうま)。

文乃が王子様を演じるために髪型を変え、
そして彼女に胸が無かったことから男性だと思い込んだ翔馬。
その思い込みが、彼に大胆な行動を取らせる…。

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文乃に蹴飛ばされた者だけが、彼女を愛する資格を持つ⁉ なら黒沢もセクハラしなきゃ!!

彼のフルネームは尾白 翔馬(おじろ しょうま)。
尾白は先生の苗字と同じ。
彼はなんと先生の弟だったのだ。
(ただし異母兄弟。父の再婚と新しい家族が先生の人生に大きく影響したらしい)

弟の存在は龍も知らなかった事実。
先生は自分のことをベラベラと喋らない秘密主義の人。

翔馬は、たれ目のイケメン。
その上、2年ほどアメリカにいた帰国子女。
経歴からも育ちの良さを感じるが、それもそのはず彼の父親は政治家。
…ということは、元ヤンの先生も 根本は お坊っちゃん

しかし、本物の痴漢退治をする時の先生は
どこから どう入ってきたのだろうか。
先生をスーパーマンにするための変な演出が気になるなぁ。
(瞬間移動しないとダメだろうという場面が多すぎる)

あと文乃は、その前に翔馬は場外に蹴飛ばせて、なぜ本物の痴漢は蹴飛ばせないのか。
あっ、先生の登場のためか…。


馬の役割は邪魔者だろう。

これまでの話は学校生活で結婚の秘密を守るというハラハラはあったが、
『2巻』まででも同じ展開ばかりが続きましたから、テコ入れでしょう。

翔馬の本来の目的は兄と、それに不釣り合いの文乃の交際を邪魔すること。
兄を監視するという実家の命令とは別に、
彼は文乃が兄を堕落させたと思い込んでいる。

だから脅迫・手切れ金などあらゆる手段を講じて文乃に退場を促す。
だが そんな手段に屈するほど文乃の想いは弱くなくて…。


翔馬が一番 邪魔できたものは何か?
それは『2巻』で一瞬の輝きを放った黒沢(くろさわ)くんの無価値化ではないか(笑)

文乃の魅力に気づいて、彼女に告白までした先生に続く第2の男だった黒沢。
だが、翔馬の登場で出番は激減。
更には後半、翔馬が あんなことになってしまい、キャラが被り 独自性まで失われていく。
優しいライバルキャラは少女漫画では使い勝手が悪いでしょうね。
更には、翔馬には性格の悪さと、先生の弟という最大のコネとブランドがある。
もはや楽しみは、この後も ちょこちょこ登場する「黒沢を探せ!」しかない…。


でも完読すると、翔馬は「別れさせ屋」の時の方が良かったと思わざるを得ない。
消去法的に先生へ対抗できる唯一の人間なのだろうけど、
後半のキャラは普通すぎて嫌だ。
ブラコンキャラを貫き通して欲しかったな。


馬に関しては、もしかして この時点では、
兄・一馬先生よりも翔馬の方が、
文乃の裸を見た割合では勝っているのではないかということ。

先生もセクハラするけど、さすがに服を脱がしたりしないからね。
翔馬にも兄に勝てる要素があったとは。
そして このラッキースケベな出来事は彼にとって良いメモリーなのだろう…。


しかし、どんな理由をつけても
翔馬が この高校に編入するのは不自然でならない。

文乃たちの通う学校は、どう考えても地元の普通の高校である。
なんなら治安が悪い部類に入るだろう。

その学校に潜入し、8年間音信不通だった長兄の監視のために、
跡取りとなる次兄の人生の進路変更をするなんて不合理な考え方だ。

アメリカに留学した後にさせることじゃないだろう。
政治の世界に進ませたいなら学ばなければならないことは多いだろう。

尾白家の跡取りじゃなくて、
適当な誰かを潜入させればそれで済む話だ。

これはちょっと不自然すぎる。
再読すると、継ぎはぎに増築した形跡が見て取れて、整合性の無さが気になる。


逆に この頃から考えていたと見て取れるのが、先生の経歴。
実母の死後、「それからほとんど ――親戚の家にお世話になってた」というのは、
後の巻に登場する あの親子のことだろう。
躊躇った後に親戚と言っているのは、話を簡略化するためだろうか。


馬が登場したことで際立つのは先生の秘密主義。
妻である文乃の問いにも「何ひとつ君の得にはならない」と言って答えない。

でも先生は結婚というものが分かっていませんね。
病める時も健やかなる時も共に生きるのが、結婚だろう。

先生がまだ独りで抱え込んでいることに
怒りと悲しみを覚える文乃は、先生を拘束して服を脱がす。

…なんで??

この巻だけで裸の先生の上に2回も跨ってますけど…。

そんな先生が顔を赤らめながら言う言葉は、

「過去の自分が どんなにひどい人間だったのか(わかってきた)
 知られたら…… 嫌われるかもしれないって――」というもの。

先生は過去に どんなひどい ことをしてきたのでしょうか。

犯罪歴? または離婚歴?
先生なら何でも ありな気がする。
離婚してて欲しいなぁ(笑)


馬の兄への熱すぎる想いを掬うのは文乃。
子は鎹ならぬ、義姉が兄弟の鎹になります。

想い合っているのに、互いの立場を考慮して、
なかなか素直になれないのは、文乃と先生の場合に通じるものがあります。

翔馬は妨害と称して文乃を何度も外に呼び出す。
(この頃は純粋に兄から手を引いて欲しかったと思われる)。

そうして起こる密室回。

体育倉庫に閉じ込められる2人。
そこで2人きりで話すことで見えてくる翔馬の本質。

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同じ年の義姉は僕の心に土足で入り込む。愛する一馬を賭けた同級生対決が始まる!

翔馬は兄大好きキャラだったんですね。
そして実は他者への気遣いが出来る人でもあることが分かる。

翔馬が一馬宅へ初訪問した際の帰り道に出てきた、
彼が方向音痴という設定、この回以外で出てきたましたっけ?
再読すると謎のキャラ付けでしたね。

でも それで起こるのが翔馬の急な発熱イベント。
一応、方向音痴の翔馬が長時間 道に迷って雨に打たれたから、という前振りになっています。

まぁ、これも翔馬が道に迷うまで歩く選択をすること自体、おかしいんですけどね。
運転手付きの車を所有していることが後々 判明しますもの。


馬のブラコンキャラ、お邪魔虫が確定した後はデート回。
既に夫婦だけど恋人からスタートする文乃たち。
一馬が文乃を妻ではなく、女性として惹かれ始めます。
正式な男女交際がスタートしたのでしょうか。

安定の先生、スーパーマン回ですね。
作者にとって ピンチ=高いところから落ちる、なのでしょうか。

『2巻』でも海に落ちる時と崖から落ちた時の先生の抱擁の構図が似ていましたが、
ワンパターンが過ぎるぞ。

そういえば このデート回の帰り道も、翔馬同様に急な雨に打たれましたね。

こうしてコブ付き(鉄兵)ではない、初めてのお泊り回に続きます…。

キスよりも早く 3 (花とゆめCOMICS)

キスよりも早く 3 (花とゆめCOMICS)

  • 作者:田中 メカ
  • 発売日: 2008/05/02
  • メディア: コミック