《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

キスよりも早く 読者が早く飽きる 残念な展開。新キャラ祭を開催するが 後の祭り…。

キスよりも早く 5 (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
第05巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★★(6点)
 

先生と噂になった事件も無事(!?)に解決し、ホッとした尾白家に今度は金髪の美少女・メグがやって来た! 翔馬の家に滞在中のメグは熊猫高校に転校してきて…何故か先生にアプローチ!? 気が気じゃない文乃は、メグが先生にキスしようとしている現場に居合わせてしまい!?

簡潔完結感想文

  • 巻末は新キャラ登場予告。新キャラがマンネリを打破してくれると考えている?
  • 心の準備が不足で キスはずっとお預け。その分、男女ともに肌の露出だけは増やす。
  • 姉弟は天涯孤独じゃなかった⁉ 衝撃の事実に衝撃の結末。物語の不自然さが増す。

品内での既視感が生まれ始める。それをネタ切れという 5巻。

先生と生徒でありながら、夫と妻である一馬(かずま)と文乃(ふみの)の2人。

彼らの仲は深まるところまで深まったので、
縦軸ではなく横軸に物語を拡げるために新キャラを続々と投入する模様。

当初の設定にはいなかったであろう親族たちが生まれるベビーラッシュ到来。

流石に先生の弟・翔馬(しょうま)は当初から考案されていただろうが、
誰もいないと思われていた文乃側の親族がボコボコと出てくる。

親戚中をたらい回しにされていた文乃たちなのに、
祖父と叔父、意外に親等の近いところにいるという完全 後出し設定。

もっともらしい言い訳を考案しているが不自然さは否めない。
この作品、色々な部分で長編作品としての耐久性に限界がきている気がする。


『4巻』から巻末は次回予告と化す。

『4巻』のラストで登場したマーガレット・ダントン(愛称・メグ)。
メグは翔馬のアメリカ留学時代にお世話になったホストファミリー。

でも留学生として高校に編入したクラスは翔馬ではなく文乃と同じ。

そして彼女の特徴は文乃と先生の関係を元から秘密を知っているという点。

ホテル王の令嬢だからネットワークがあるらしい。なんじゃそりゃ。
ってか、政治家の息子(翔馬)もホテル王の令嬢も、
こんな治安の悪い学校に来てもメリットはないだろう。

翔馬は先生がいるから、メグは翔馬がいるからという
しょうもない理由で普通の教育を受けるのは 彼らのためにならない。


結婚の事実を脅迫材料に やりたい放題のメグは、
からかい半分、先生にキスを要求するメグだが、
文乃が止める前に、割って入ったのは翔馬。

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兄よりも早くキスをする翔馬。身を挺して彼が守りたかったのは兄の唇の純潔(笑)

もしかして本書で初のキスシーンかな?
翔馬が「兄よりも早く」キスしましたね。

この翔馬のキス、兄の名誉(もしくは唇の純潔)を守るためか。
もしくはアメリカ帰りだから出来る芸当なのか(偏見)?

翔馬は気軽にキスが出来る度胸と経験があるんですね。

にしても翔馬はメグの気持ちを知っているんでしょうか。
知っていて兄の名誉のためだけに女性にキスしてるなら罪作りな人ですね。
兄が 大好きすぎて 他者への心配りを忘れたか。

そして この場面で初めて気づいたが、
文乃はもちろん、先生にもキスをさせることは ご法度なのか。
もしキスなど朝飯前の大人の女性のライバルが現れたりしたら大変だ。

本書におけるキスはそれほど大事なシグナルだから、
もしかして 先生を守るためのキスが翔馬の最終的な運命を決めたのかもしれない。


メグの役割は文乃の秘密を知る友人、だろうか。
文乃はクラス内に友人が出来ているが、秘密は暴露していない(なかばバレているが)。

そして『4巻』のテストでの英語の赤点以降、文乃の周囲に英語シフトが組まれている気がする。

あとは完読すると分かるが、メグの幼少期からの育てられ方は、
先生のそれに類似している(発想の貧困さが生んだ一致か、それとも狙ったのかが分からないが)。

わがまま放題の先生か。
翔馬 寄りになると考えればいいのかな…?


ンネリ気味の展開から読者を食いつかすための温泉回。

先生とお風呂に入って赤面するのは、翔馬。
男性教諭との禁断の恋をするのは男子生徒、って路線で売りましょ。


相変わらずキスはしないけど、それを補うかのように肌の露出やスキンシップは多い。
下品になり過ぎないぐらいに収めて欲しいが、これ以上の展開はあるだろうか。

浴衣のままお風呂で転んでびしょ濡れになった文乃を着替えさせたのは先生。
いよいよ裸まで見てるんですね、先生。
でも何のために同性のメグを配置したのか分からない。


文乃は大胆な言葉や決意を胸にしているけど、
肝心なところで「震えて泣くほど ビビってる」。

文乃の恐怖心に理由があるならいいけど、単に初めてのことでの恐怖なら同じことの繰り返しだ。
気持ちもこれ以上近づけないところまで近づいちゃったし、ネタ切れの危機。


リスマスを前に先生へのプレゼント選び。

先月 誕生日プレゼントをあげたばかりなのに、
イベントとしても被ってるし、出費もバカにならないだろう。

ワガママ放題のメグへの復讐のため、
彼女が本当に好きな翔馬と買い物をする場面を見せつける計画を立てる文乃。
少女漫画の主人公にあるまじき腹黒さだ。

そして翔馬と過ごす時間が少なければ後半の展開は無かったかもしれないなぁ…。


文乃に メグを好きかと問われ 「妹」って感じ、と答える翔馬。

それに対する、
「あーわかる! 手のかかる末っ子みたいな」って、
文乃の台詞、酷いと思った。

メグの恋心を知っていて、彼女が聞いている可能性が高いこと知っていて、
彼女の恋路を、わずかな可能性を消去している。

仕返しが目的なのでフォローする義理はないと思うが、
傷口に塩を塗るような発言には疑問を感じる。


この時点では翔馬と、親の決めた婚約者のいるメグの一筋縄ではいかない恋物語なんですよね。
これで良かったのに、なんで後半の展開は、ああなってしまったのか。
それもこれも先生が無敵すぎるのが悪い。


どうしても作品の継続のためにライバルを立てなきゃならないのなら、
ここまで お世話になりっぱなしの隣人・龍(りゅう)に参戦して欲しかったな。

先生へのプレゼントのために再びアルバイトに精を出す文乃は
また龍に鉄兵を押し付けているのだろうか。
そういう他人に迷惑をかけてまで貰うプレゼント、先生も嬉しくないと思うのだが。


リスマス当日は、文乃の風邪回。

風邪多くないか?
3巻連続 誰かしら風邪を引いているぞ。

そして、話が全体的に先生の誕生回と似通ってないか…?

玄関先での翔馬との口論で再び熱が出て倒れる寸前の文乃を抱きかかえる先生。
どうやら1ページ丸ごと使って、先生が文乃を救出するのが本書のお約束らしいが、
毎度毎度、一体どこから湧いて出てくるんだろうか…。

この場面、文乃の目の前にいたはずの翔馬が伸ばした手は彼女に触れもしない、
という構図が、今後の彼の姿を暗示しているようにも思われる。

翔馬は あと何度、大事な人に触れられない苦しみを味わうのだろうか。

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崖から落ちるタイミング、気を失うタイミング、ヒーローの先生には お見通しです。

ストは墓参り回。

驚くことに文乃たちの祖父は健在。

両親のお墓は父の実家(祖父の住まい)の近くにある。
しかし両親は かけおち同然で家を出たため折り合いが悪い。

更には葬式のとき、文乃と祖父が超大ゲンカして縁を切られたらしい。

んーーー、無理があるなあ。

20年ほど前の駆け落ちと、2年前の事故死、
それを考えられない親戚ども(悪意の集合体で顔はない)。

今回は先生が車両を移動している僅かな時間で、
親戚どもの悪口が文乃を窮地に陥れ、そして先生が助けに来てくれる。
ヒーローを活躍させる場面作りにも無理を感じる。


しかし先生って車に轢かれても、崖から落ちても軽傷で済みますよね。
喧嘩を繰り返す中で受け身を学んだのかしら。

それなのに最終回は先生が本当に大事故に巻き込まれて大怪我、
2年前の両親を思い出して文乃が大パニック、という展開だったら嫌だなぁ。


祖父と和解しても、祖父は先生に孫たちの面倒を見てもらうことを望む。

その理由が
「本来なら おれが お前らの面倒を見るべきだろうが
 (意地悪な親族)連中がいる町だ すすめられん」、だそうだ。

文乃は自分で人生を切り拓いているのに、祖父は親戚一同の言いなりである現状を維持している。

もちろん作品の核である結婚を維持するためなのは分かるが、情けない。

文乃は経済的困窮から鉄兵を守ることを第一義にしているんだぞ。
今は違うが、当初はそんな人身売買のような結婚だったのだ。

それを赤の他人に預けるだけで、金銭的な援助もしない祖父ってどうなの??
しかも この祖父、プレゼント攻勢など扶養はしないが祖父としての喜びだけ獲得してズルい。

遠くの親戚より近くの他人、で、
親を亡くした孫を思い遣れない祖父など不在と思った方が気は楽なんだろうけど。


私の偏見では、少女漫画で お墓参りをする際は、
墓前の言葉に嘘はない、言葉は守られる、横に並ぶ人と結ばれる、というお約束があると思う。

死者に対して嘘を言う人はいないからだ。
これで2人の将来も安泰だ。

場所は墓前だけど、さっさとキスして最終回にして欲しかったものだ。


だが新たな登場人物を予感させて終わる。
このぐらいしか、もう作品の引きがないんでしょうね…。

「特別編」…
鉄兵が通う保育園での一幕。
女性関係が『1巻』以降なにもない龍先生がモテる話ですね。

この話を読んでいないと番外編の13冊目『キス早 Future』の話は理解できないかも。

確かに えみり ちゃんは文乃に少し顔が似ている。
画力の問題か?