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少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画での高熱はハプニング満載。そして記憶を無くす便利なリセット機能付き。

キスよりも早く 4 (花とゆめコミックス)
田中 メカ(たなか めか)
キスよりも早く(きすよりもはやく)
第04巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

皆でお出かけデートの帰り道、バイクの故障&豪雨のため、ホテルに避難した2人。先生に「僕は君が好きだよ」と言われ、初めて過ごす夜は、ドキドキがいっぱいで…。さらに次の日、学校中に2人の噂が飛び交っていて!? 校長室に呼び出された文乃と先生、またまた大ピンチ!!!

簡潔完結感想文

  • お泊り回。ラブホの料金設定から部屋の内部、流れる映像など後学のための知識満載。
  • ピンチ回。学校中に2人の仲が怪しまれ別居生活スタート。先生の言い訳が どれも苦しい。
  • 誕生会。着飾った誕生日には逆に何も起きない。心が満たされれば肉欲は消え失せる?

調変化に気づくのは その人を一番 愛している人、の 4巻。

冒頭はバイクの故障と突然の豪雨で やむなくラブホテルに避難した2人の姿から。

夫婦となった生徒・文乃(ふみの)と教師・一馬(かずま)の
生活には あまりリアリティを感じられないが、
ラブホの描写には かなりのリアリティがある。
こんなこと「ララ」で描いて怒られないかと心配になるラブホテルの内部紹介。

しかし、もちろん一夜を共にするわけでなく、
先生はバイクの修理のために、一風呂 浴びて、
その間に寝てしまった文乃を置いて部屋を出て行く。
(どうせ濡れるのにとか、湯冷めするんじゃとか思ったが…)

ラブホ編は社会科見学と、次の話の伏線を張って終わりました。


生の終夜の作業で修理は完了し、早朝にラブホテルを出た2人無事に帰宅。
だが、雨に打たれ 徹夜した先生の体調は限界だった。

この時、先生の不調に いち早く気がついたのは友人で隣人の龍(りゅう)。
文乃よりも先生のことを逐一察知しているのは なんでだろう。

少女漫画では、普通の人なら気づかない体調の変化にいち早く気づくのは、
その人を よく目で追っている人の役目ですよね。
それって、好きってことなんじゃないか??

そして先生、そんな体調でバイクを運転して事故を起こしたりしなくて良かったね。
2人まとめて怪我したら全校中に関係が知れ渡ってしまう。

もしかして尾白兄弟は雨に打たれると風邪を引く体質なのか?(『3巻』の翔馬(しょうま))

その龍が、自分の部屋で朝を迎えた翔馬に対して、
「オレお前のこと好きだわぁ~ いつでも遊びにおいで」というのは、
一馬を好きな者同士の連帯感が掛けた言葉かもしれない。


この回のメインは、
もうこれ、キスなんじゃね? というマスク越しのキス。

これまでで最高に接近し、ちゃんとドキドキした場面だけど、
これが出来るのに「本当のキス」をしないという線引きが分からないなぁ、
などと思っていたら、まさかの先生は高熱により記憶なし。
晴れてノーカウント、だそうです。

どちらかに高熱を出させて、何かを隔ててキスすれば まだまだ連載は安泰ですね…。


高熱は色々とハプニングを起こせて便利なんでしょう。
そういえば先日 感想を書いた葉鳥ビスコさん『桜蘭高校ホスト部』でも
高熱でのデコチュー事件があって、男性側には記憶がなかったな。
白泉社の漫画の様式美なのか。

しかし翔馬からの見舞い品が「すっぽんスープ」って…。
風邪の回復に滋養強壮、という目的なのだろうが
精力つけた兄が理性を保つの大変そうだ(嫌がらせか?)。


いては、2人の関係がバレそうになるピンチ回。

前話のラブホテルが文乃の在籍する高校の野球部の合宿場所が近くにあったため、
早朝にホテルから出た2人を偶然、野球部生徒が目撃してしまったのだ!

うーん、場末のラブホテルからの退出を見られる、なんてご都合主義も甚だしいな。
(高校生男子がラブホを見るだけで性を感じようとする 無駄なリアリティはあるが…)

こういうピンチ回は連載でリアルタイムで読んでいたら面白いんだろうな。
私のように完結後に全12巻+αだと分かっている読者からすると、緊張感がない。

性別や身分を偽っている人の秘密がバレそうになる中盤の お決まりの展開です。
この展開では秘密は まずバレません。

この手の話は ピンチをどう乗り越えるかという、
頭の回転や発想の面白さが肝だと思うのですが、
本書の場合の解決法は どれも微妙に思えた。

先生に裏工作は似合わないから正攻法の正面突破なのだろうが、
これで文乃や自分の2つの立場(学校と夫婦)を守れるとは思えない。


まず先生は、校長室に呼ばれた際に、
事の経緯を結婚や恋愛感情抜きで説明しているが、
「気まぐれに彼女を僕の運転するバイクに乗せていたら 大雨が…」という部分がもうダメだろう。

教職は、生徒と疑われるような行為をする時点でアウトの世界だろう。

嘘のつけない文乃に歩み寄って、
真実を多く盛り込んだのかもしれないが、それにしても納得できかねる説明だ。

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こんな説明で納得する学校側。この方面から2人の関係が露見することは まずないだろう。

いての回も、その流れでの別居生活。
学校側の処分は終わったが、教頭独自の疑いの目は続いていたため、
先生は、教頭の内偵が終わるまで別居生活を提案する。

で、どこで別居するかというと龍の部屋。
学校側には龍が親戚だという嘘設定を伝えているため、対外的な住まいはこちらなのだ。

しかし また龍の世話になってますよ、この人たちは…。

文乃も、自分たちのことを本当に献身的に支えてくれたのは、
龍だったことに気づいて、最終回に龍を選ぶ 大どんでん返し希望です。
1話目から登場しているから本命の権利は持っているはず。

先生の側も結婚=同居ではないんだから、
最初から2つの生活拠点を確保した方が良かったのでは?

まぁ新婚同居じゃないと漫画的にインパクトが弱いし、
先生にも そんな金銭的な余裕がないんだろうけど。


別居は寂しいが、新鮮な先生との学校生活。
と思っていたのは最初の日だけ。
寂しさの方が勝ってしまい、文乃は先生の部屋の前で泣きだす。

また どこからともなく現れるスーパーマン・一馬は文乃を強く抱きしめる。

この時、抱擁を教頭に見られた時の先生の

「目の前で女の子が声を殺して泣いていたんです
 黙って素通りする そんな人間に―― 『教師』としてなるわけにはいきません」

って言葉が全然、刺さらない。

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どんな事情があろうと女子生徒を抱きしめる男は教師になってはいけません。#許すなわいせつ教員

教師を自覚するなら生徒と個人的接触を持っちゃダメでしょ。
確かに道徳心や優しさは持っているかもしれないが、
あんたは教師として持つべき倫理観を持っていない。

私はどうにも先生を根本的に好きになれない気がする。
(嫌いでもないが)

そして文乃も面倒臭い女と思ってしまう。
期間限定、それも最大で5日、たったそれだけの期間で、
先生の立場をより危うくしてしまう。

これは兄の一馬を愛する弟・翔馬じゃなくてもイライラしてしまうよ。


教頭も、先生の一言と文乃の弟・鉄兵(てっぺい)の泣き出しそうな顔を見て退散してるけど、
先生は交際の疑惑を払拭できたとは言い難い。

教頭が諦めずに別の日に先生の部屋を見張っていたら、同じ部屋に出入りする2人が見られるわけでしょ?

ピンチを回避したとは決して言えない内容なんだよなぁ。
これは本書の全体に亘って言えること。
問題を有耶無耶にして終わらせることが多い気がする。
もうちょっとカタルシスを覚えるような解決場面を用意して欲しい。


教頭が退散した後に「龍と同じにおいがする 許せない…」と
文乃をシャワーに連れ込むのも、よく分からない展開。

下校時なんだから1日学校にいたでしょ?
洗剤の香りのこと?
別居解消の甘い場面なのだろうけど意味不明です。

ダメだ、『4巻』では先生への文句が止まらない。


んな先生は11月22日が誕生日。

お祝いをしたい文乃は軍資金を確保するためにバイトを始める。

弟・鉄兵の面倒は、ここでも龍に頼ります。

期間は2週間。
自分のことは5日も我慢できなかったのに、鉄兵と龍には甘えまくる。

ってか、文乃のバイトは許されるんですね。
文乃が結婚するからといって全面的に先生に依存していることに違和感があった。

彼女の性格からいって自分の身の回りの金銭は自分で用意しそうなのに、とずっと思っていた。
バイトをしないのは先生が学業と青春に専念させるため、と勝手に脳内補完していたが違いました。

そうして迎えた誕生日当日、
毎回のお出迎えコスプレのこともあるので衣装に関してはファンタジーな作品だと思うが、
先生の誕生日に文乃が来ていた服は どこから出てきたのか謎ですね。

ドレスアップして誕生日当日にお祝いする、
しかも鉄兵は熟睡しているとなると、
もう何が起こってもおかしくはないが、ここでは心情面の交流だけで終わる。

特別な日には何も起こらず、特別でない日にイチャイチャする不思議な夫婦だ。


生回の次の回で「2学期の中間試験がおわ」ったようだが、
11月22日以降に中間試験が終わるって、期末試験はいつやるんだ⁉

2学期制の学校なのかな、と思ったが、夏休み明けすぐに2学期が始まっていることから、3学期制の学校だと思われる。

これは2学期はイベントが立て込んでいて、ラブホ事件からのお話の流れがあって、
テスト回を ここでしか挿めなかったと推察される。

先生の担当教科である英語が不得意の文乃。
ここから1年ちょっと、文乃は英語に注力することになる。

しかし この学校、本当に治安が悪いですね。
普通にタバコを吸う高校生がいるなんて。

兄の知人は反社会組織だし、翔馬は本当にこの学校にいない方がいいよ。

もしかして兄弟そろって堕落させようという彼らの父の新しい嫌がらせなのか?
翔馬も実は父から愛されていなかったりして…⁉

キスよりも早く 第4巻 (花とゆめCOMICS)

キスよりも早く 第4巻 (花とゆめCOMICS)

  • 作者:田中 メカ
  • 発売日: 2008/12/05
  • メディア: コミック